FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

中国陶磁 美を鑑るこころ

大阪に生まれたということは、他の地の人より多く器を見る機会に恵まれている、ということかもしれない。

既に消滅に近い状態になったが、夏にはせともの市が坐摩神社境内で開催されていた。そこへぶらぶら行くのが楽しみだった。
多くは有田・伊万里の磁器で、子供の頃からそればかりを使っていた。
また私の子供の頃、世界的に名高い安宅コレクションが住友の全面的な協力を受けて、東洋陶磁美術館に収蔵され、今も展覧され続けている。

私は圧倒的に磁器が好きである。
薄い手触り、釉薬、繊細な絵柄。
見るだけなら陶器もいいが、触ること・使うことを考えるとやはり薄い磁器に惹かれる。
ただし大きな瓶や壷なら伊賀や丹波も好きだ。

さて、泉屋分館で10日まで中国陶磁の展覧会が開催されている。
地の利がいいというだけでなく、住友の美術館だというだけでひいきしたくなる。

主な展示は以下のとおり。
灰釉加彩官人俑 北魏 個人
重要美術品 三彩貼花文鳳首水注 唐 個人
青白地牡丹唐草文瓶 北宋 個人
青磁鳳凰唐草文枕 耀州窯 北宋 静嘉堂文庫美術館
青磁盤 汝官窯 北宋 個人
重要文化財 青磁輪花鉢 南宋官窯 南宋 東京国立博物館
釉裏紅牡丹文盤 明・洪武 松岡美術館
青花双魚文盤 明・永楽 大和文華館
青花龍濤文盤 明・宣徳(在銘) 個人
重要美術品 法花蓮池水禽文瓶 明 イセ文化基金
五彩魚藻文盤 明・嘉靖(在銘) 大阪市立東洋陶磁美術館
重要美術品 五彩龍鳳唐草文合子 明・万暦(在銘) 個人
五彩龍鳳文六角瓶 明・万暦(在銘)

個人の所有品はともかく、ほかは大体見せてもらっている。

わたしは中国陶磁より韓国陶磁、就中、高麗青磁と李朝白磁を愛している。
しかし今回の展示は主に明代の優品が多く、なかなか楽しいものだった。

灰釉加彩官人俑は女官像で、北魏のものらしいスマートさがあった。
わたしは北魏の白く細い造型がニガテで、唐代のそれの方が好ましいが、この女官は艶かしくそこにあった。
口許に不可思議な微笑を湛えている。
個人所蔵ということは、普段は誰か一人の手元に隠されているのだ。
蔵すことで、美は散じないのかもしれない。
夜半に一人この像と対峙する。…想像するだけで震えが来るようだ。
なんとも深い魅力がある像だった。

泉屋の陳列棚はやや低すぎて私には見づらいのだが、二つの展示室のうちの一つに、珠玉の掌品を集めている。
ここには画像を出しても実感の伴わない名品が揃っていた。
小さな可愛らしい器たち。

細部に神は寄りたもう。
日本人はミクロコスモスへの偏愛に生きている。
作られたのは中国だが、それらを偏愛したのは日本人なのだった。

私を招んだのは大和文華館所蔵の小さな壷だった。赤絵が胴に入り、口も広い。小さいくせにナマイキにも安定している。
なんと可愛らしいのか。
わたしも小さいものは大好きだ。特に掌で愛玩するようなものが大好きだ。
だから香合などにも愛着が深い。
大きなのサイズのものから見れば、これなどはグリコのおまけも同然だろうが、わたしはグリコなめながらオマケで熱心に遊ぶ子供だった。
こんな可愛いものを愛さずにはいられない。

イセ文化財団の法花蓮池水禽文瓶は、東洋陶磁美術館にも似たものがあるから兄弟なのかもしれない。この瑠璃色。好き嫌いを通り越して派手でいいなあ。
去年マカオに行ったとき、目についたのはこの瑠璃釉だった。
中国と南欧の文化を併せ持つマカオには、沈没船から引き上げられた中国の陶磁器がたくさん所蔵されている。

青磁鳳凰唐草文枕 耀州窯。陶器の枕は私も持っている。
邯鄲一炊の夢。中国の物語には好きなものが多い。
黍が炊き上がる(一炊)の間に見た転寝(一睡)の夢。

唐代の頃に作られたやや色の茶色い水差しと瓶がある。どちらも人物像を貼り付けている。笛を吹く楽人と布袋と。
二つの間に二世紀の時間の流れがある。技能は進化したかもしれないが、発想は変わらない。多分、好きなのだろう。

ポーラ美術館所蔵の白磁魚藻文碗は、見込みに魚を陰刻している。魚や藻の揺らぐ様が伝わってくる。
白磁だから白いのは当然だが、北宋の<白>はちょっと独特だと思う。白大理石を模したシーツ、とでも言うのが一番近い気がする。

水滸伝の時代、つまり北宋から金へ変わる頃に生まれた黒釉金彩蝶牡丹文碗は、剥がしたような黒で花を描いている。
これは北宋の文化の爛熟からの趣向ではなく、異民族の金の好みではないか、と思った。

東博からの青磁管耳瓶は貫入のすばらしさにときめいた。こんな貫入が見たいのだ。なんという美しさか。個人所蔵の同じような作品もまた貫入が見事だった。

個人の所有に帰したものの中には、思いもかけぬようなものがある。
米色青磁。こんな色、あるのか。驚いてしまった。

それにしても本当によいものを見せてもらった。数も丁度いい感じ。
胸がドキドキする。


わたしは唐代、北宋、明代のような漢民族による文化の爛熟期が大好きだ。
明日になれば異民族に侵略されてしまう。
言えばそんな時代だからこそ、すばらしい芸術品が世に顕れたのだ。
ひとつの時代の終わる前の豊饒な美…

それは世紀末なのだった。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
僕も「ぐるっとパス」で観てきました。
ただちょっとねえ、目つきの悪い明らかに私服警備員と思われる人物がいてそれがちょっと興をそぐことおびただしい。
住友は大阪の本館は今休館中なんですよね、東京独自の企画でしかもよその美術館から借り物がいろいろあるのはうれしいですね。
住友が「ぐるっとパス」で無料になるのだから、対抗する三井記念美術館も無料にしてほしいなあ。
三井は展示会場へ上がるエレベーターからして豪華ですね。
2006/12/04(月) 11:43 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんばんは
>三井は展示会場へ上がるエレベーターからして豪華
三井本館ですから、近代建築好きな者からすれば憧れの地なのです♪アーカンサスを乗っけた柱にすりすりしたり色々と、ね・・・
でも三信ビルの取り壊しの件には腹が立ってきます。

住友は明治の早い時期から今で言うメセナ活動してまして、大阪の中之島一帯に文化ゾーンの基礎を作ってくれましてね。
大阪市立図書館も住友の寄付で荘重な様相を今に残しています。
冒頭にも書いた安宅コレクションが散逸せず、東洋陶磁美術館で今日眺められるのも、住友が全て寄贈してくれたおかげです。
(建物含めて)
住友営繕局出身の優秀な建築家も多いです。

住友百年の文化事業に、三井も何とか伍してほしいですよね。
ぐるパスに入ってほしいけれど、場所柄デパート帰りの奥様方をターゲットにしている以上、あのシステムには入らないような気がしますね、残念。

2006/12/04(月) 22:49 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。
明日、六本木の泉屋博古館に友達と行くことになりました。
チケットが手に入ったから~。
東洋陶磁は、奈良にいた時、ふらっと行けたのが最高に嬉しかったです。あんな陶磁器を持っているところは他にありませんね。
本当に東洋陶磁の世界を舐め回した安宅さんという人に、目眩を覚えます。
台湾の故宮博物館も飛び抜けていました。
青磁の玉のような色に垂涎という言葉通り。
「就中、高麗青磁、李朝白磁を愛している」遊行さま、
大陸の抜けてる芸を愛でてきます!
2006/12/04(月) 23:17 | URL | あべまつ #-[ 編集]
あべまつさん こんばんは
今回は数も並べ方もたいへんよかったのです。
わたしは中国陶磁なら曜変天目か油滴天目などの窯変ものが好きなのですが、こうした並びを見ますと、「萬暦もええなー」とか「砧青磁もわるくはないな」などと呟いたりします。

台北の故宮は明清がメインでしたね。
わたしは4階の大きなティールームが大好きです。
庭園の蓮もきれいだったなぁ。

ところで六本木一丁目からその界隈はお茶のいい場所があまりありません。オークラくらいかしら・・・神谷町か虎ノ門まで降りればなんだかんだとあるようですが・・・
楽しんできてくださいねー
2006/12/05(火) 00:10 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
今年は静嘉堂文庫と泉屋博古で2回もいい中国陶磁を観る機会に恵まれました。こうなると、台北の故宮博物院の名品をまた見たくなります。来年、行くことになるかもしれません。
2006/12/09(土) 11:47 | URL | いづつや #RK0OJ0uw[ 編集]
いづつやさん こんにちは
台北は大好きです。
故宮もいいですが台北博物館にもいいのが色々あります。
わたしは台湾とマカオが大好きです♪

中国陶磁の名品にはやはり惹きつけられますね。
特に景徳鎮や萬暦が楽しいです
2006/12/10(日) 11:11 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

特別展 中国陶磁 美を鑑るこころ @泉屋博古館分館

「鑑賞陶器」の展覧会の訪問記。優品ばかり。絶対にお薦め。
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア