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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

エコール・ド・パリ 素朴と郷愁

兵庫県立美術館まで『エコール・ド・パリ 素朴と郷愁』を見に行った。
もう閉幕したのだが、ギリギリまでいけなかった。この時期だからこの後神戸まで出ればルミナリエも楽しめたろうが、用事があり、あきらめた。
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エコール・ド・パリの芸術家たちがいた頃は、大戦前後の狂乱と鬱屈と享楽と憂愁に満ちた空気があちこちに漂っていたようだ。
展覧会の構成にも、その時代の写真を集めたコーナーがあるくらいだった。
カフェがある。モンパルナスの風景がある。『洗濯船』それからそれから・・・
わたしはこの時代のゼラチン・シルバープリントがとても好きなのだ。

プティ・パレやパリ市立近代美術館からの出品も多いので、懐かしいなと再会する作品も多かった。
例えばキスリング『イングリッドの肖像』img583.jpg

これは以前にも見ていたから「お久しぶりね」とそっと話しかけたくなった。彼女は北欧の人らしい金髪に、透き通るような青い目をしている。手の持つチューリップは、黒い服をおびやかすことなく、そっとそこにある。

そういえば、‘91から四、五年くらいの間よくエコール・ド・パリの画家たちの展覧会が開催されていた。
その前後が生誕百年という人が多かったのだろうか。

いま国内のアンリ・ルソーの作品を集めた展覧会が開催されているが、ここにあるのはパリから来たものだった。
『ライオンを狩る人』 二頭のライオンの目つきが太陽のようにギラギラしている。
ハンターはそれぞれの獲物に銃を向けているが、成功したのかどうかはわからない。
夕焼けの中、葉も黄色く日に染まる。
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観念と妄想と空想が、こんな空間を生み出したのだ。
壁にかける気にはならないが(万一絵の中に呼び込まれたらどうするのだ)じぃっとみつめていたい作品だった。

『猫』より『犬の肖像』がよかった。
わたしは犬の種類には疎いから、犬種がわからない。しかしなんとなく賢そうな犬に見える。この作品は可愛いからか、美術館のあちこちにシールくらいの大きさになってぺたぺた貼られていた。
なんとなく、楽しい。img586.jpg

アンドレ・ドランが随分多かった。
『浴女たち』 キュビズムぽさがある肉体は、なんとなく部位がよくわかる、という感じがする。そう、ニクの部位。しかしこの絵はわるくはない。
『画家の姪』もよかった。ただし雰囲気的にバルテュス的な静かな恐怖と狂気が潜んでいるような気がした。
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アレグザンダー・アーキペンコ『猫と女』 彫刻家だが知らない人だった。猫がトボケた顔で可愛かった。私もこんな感じで猫ダッコしているのかもしれない。

モディリアーニ『新聞紙のカリアティド』 これはフランスの新聞の上に青とオークルの色鉛筆で影と輪郭を描いている。しかし読めない字の新聞だから素敵なのかもしれない。
日本の新聞の上に描かれたら台無しだ、なんとなく。

ザッキンも何点かあった。『ヴァイオリンを持つ女』がよかった。ちゃんと楽器を持っているのがわかる。しかしながら木目込み人形のような感じがする。

スーチンも赤の目立つ絵を描いていた。やはり’92頃回顧展で見て以来、わたしは彼のファンだ。今回は人物画ばかりだが、かれの絵ではカーニュ風景が一番好きなのだ。

フジタの『女ともだち』は白い頃の絵で、クールベやロートレックの描く女友達同様、秘めやかな愉しみにふける女たちのようだ。
とてもフランス的で・・・いいと思う。img585-3.jpg


わたしはパスキンの絵を見るたび、少女への嗜好を隠さない画家だなと感じたりするのだが、この『小さな踊り子』には余りそれは感じなかった。
賢そうな目許口許。髪型、チュチュ・・・とても気に入った。
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はっきり言うと、今回の展覧会ではこれとルソーのライオンに目を惹かれてしまい、他の作品にちょっと距離を置いてしまったような気がする。

坂東敏雄は知らない。『達磨で遊ぶ少女』 日本の起き上がり達磨をツンツンと突く女の子。
楽しそうな表情が可愛い。知らない画家の経歴を読むことも出来なかった。
どんな人で、ほかにどんな作品を生んでいたのだろうか。

ロシア革命から逃げてきたのは白系ロシア人だった。そのことについて色々考える。
パリに留まる人、アメリカに進む人、日本に移る人・・・
祖国から遠く離れてパリで生きた芸術家がエコール・ド・パリを形成したのだった。
たとえフランス人であったとしても、そこに加わる人もいる。
時代の趨勢と芸術との関わりを深く感じるのがこの人々だと、わたしは思う。


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コメント
このキスリングいいですねぇ。
萩尾望都のマンガの主人公のよう。
やはり絵の表面は陶器のようにつるつるなんでしょうね。

ルソーのライオン。さてこのあと、どうなったのでしょうか?と
期待を持たせる紙芝居のような絵。
横尾さんだったら、狩人はたべられちゃうか。いや、きっともうひとひねり
あるでしょうね。

東京に巡回するのでしょうか。
2006/12/18(月) 07:21 | URL | 一村雨 #mQop/nM.[ 編集]
僕はねえモンパルナスのキキをめぐる芸術家の集まりを展示した小田急、横浜そごうの展覧会が忘れられないのですよ。
1/6から埼玉県立近代美術館で「エコール・ド・パリと日本の画家」とか言う展覧会が始まりますが、全国巡回ですので遊行さんもうごらんになったかな?

近代美術館工芸館の松田権六のチケットが手に入っています。
また封筒を送っていただければ郵送しますよ。
2006/12/18(月) 12:17 | URL | oki #-[ 編集]
☆一村雨さん こんにちは
東京から巡回したものだと思い込んでいたので、今のコメントで「え゛っ」でした。どうもリール美術館のと勘違いしていたようです。
キスリングは花ですと厚塗りが多いけれど、人物はこうした透明な感じの美少女が多いようにも思います。
今回はキキ自身の作品もありました。

ライオンがんばれーなキモチです。


★okiさん こんにちは
キキをめぐる芸術家たち
その展覧会はわたしも見ました。
せつなくなる展覧会でした。作品はともかくとして、そこにあった<時間>と<時代>と<空気>とを感じて。

埼玉のは見てません。今年後半から来年はその時代の展覧会が多そうですね。
2006/12/18(月) 12:44 | URL | 遊行 #-[ 編集]
キキの描いた作品は1997年に開催された「パリの女性画家とその仲間たち」展で見ました。決して技術的には優れた作品とはいえませんが、気取りのない素直な作品だったと思います。
彼女は「モンパルナスの恋人」と呼ばれながら、晩年は寂しいものだったようですね。まさにモンパルナスの街と共に生きた女という気がします。
2006/12/19(火) 23:30 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
千露さん こんにちは

>まさにモンパルナスの街と共に生きた女という気がします。
わたしもそう思います。
その時代を象徴する女として、実生活は零落しようとも、記憶は伝説化され、いつまでも輝くように思います。

江戸の女は八百屋お七、昭和初期の女は阿部定、昭和中期の女はサザエさんだというのを読んで、納得したことがあります。
キキは街と時代を象徴する女だった。
なんだかそれだけでも応援したくなりました。
2006/12/20(水) 09:46 | URL | 遊行 #-[ 編集]
今回の「エコールド・パリ展」は面白かったです。これまで、こんなきちんとした形でのエコールド・パリ展を観たのは初めてでしたので。

あんなに有名なルソーの「ライオンを狩る人」が思ったより小さく、気のせいかこころもち他の作品から浮いていたように思えました。

絵画も面白かったけれど、彫刻も沢山の傑作が見られたと思います。
2006/12/20(水) 17:35 | URL | red_pepper #-[ 編集]
red_pepper さん こんばんは
なかなかのラインナップでしたね。
ルソーは元々この派ではないのですが、言わばオジキ分のような感じですね。ご本人も晩年あちこちに呼んで貰い褒められて幸せだったのではないでしょうか。
彫刻はザッキンのいいのを沢山見れて嬉しかったですね。この展覧会はこれから巡回するようですが、多くの人に見てもらいたいと思いました。
2006/12/20(水) 22:20 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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