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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

明治大阪の錦絵新聞と明治の女たち

伊丹市立美術館で開催していたのは『明治大阪の錦絵新聞』だった。
明治になり浮世絵師は新聞挿絵を描いた。挿絵というより、絵がメインの挿文かな。
何年か前、毎日新聞でもこの新聞シリーズが日曜版で取り上げられていたが、なかなか面白かった。
今回は二百点以上の新聞の展示がある。ただし前後期入れ替えがあり、出ているのは大体2/3くらいか。
絵で興味を惹かせ、文でずっこけさせる。それがゴシップ誌である滑稽新聞の真髄らしい。絵師は東京では大蘇を名乗るようになった芳年、そのライバル芳幾、大阪では長谷川貞信らが描いた。
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クリックしてください。
チラシを見ただけでは話の筋はわからない。活版でないくねくねした文字(だいぶ読みやすいが)を読むと、ついつい笑ってしまう。
笑う話も多い反面、「え゛―――っ」とか「うわっ」とかも多い。
ゴシップとわけのわからん美談などが多いが、やらせもあったとしても、『事実は小説よりも奇なり』な話が大変おおかった。
大いに変な人々。

あまりに多いのでいちいち紹介は出来ないから、チラチラと書こう。
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上の画像は『親に地球儀を教える子』なるほど文明開化の世の中じゃわいなぁ。

・大力の赤ん坊。 この子は生後間もないのにえらく力が強いらしく、凄いことしている。チラシにもなったが、ホンマカイナ。
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・今いる嫁さんを捨てて別の女と一緒になろうとする男に、その嫁さんは二人の祝言の支度を取り仕切る。 まるで円地文子の『女坂』みたいな話だが、この文のオチがいい。「男も女も恥もなく、この婦人の世話を受けた」 これくらいしか書けないにしても、痛烈な皮肉ではある。なお、実名報道。

・天ぷら油に落ちる下女。 壷か瓶に落ちる女の絵を見た限りでは何かよくわからぬにしても、気の毒に女は大やけどで死んでいる。「気をつけよう」と教訓めいたオチがついていた。

・ちょっと品が悪いので書くのもどうかなと思いつつ、爆笑してしまったのが一枚。 宿屋の下女に惚れた男が夜中に忍んで来るが、目印のかんざしを探す。かんざしはどういうわけか、宿の主人の頭に刺さっていた。それで・・・ 挿絵がまた笑える。美人の下女が開いたふすまの奥をのぞくと、なにやらキモチよさげなオジサンの顔が・・・

・川に投げ込まれた娘を巡査が救助 ・丑の刻参りする女 ・自殺を思いとどまらせた力士 などなど絵と文が見ただけで合致する話も多い中、たいへん怖い話があった。

・女中に手をつけた夫に腹を立てた妻が、夫の不在時に女を殺し、切り取ったものを刺身として夫に出す。夫は「これはまた変わった味だの」「くれた人は向こうの部屋にいますよ」夫が礼を述べに隣室へ行くと・・・妻はその間に自害した。二人の女の屍骸を前に、この男はいったいどんな心持でいたろうか。
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かなりとんでもない話が多かった。ゴシップは度を越すとグロテスクな様相を呈してくる。めでたい話や啓蒙の話もあるが(何しろ世は文明開化の時代だ)人間のやることはあまり進歩がないような気がする。特にこの明治の新聞と現在の状況はなんとなく似ている。
本を買う根性はなかった。

地下の常設室に行くと、ジョルジュ・ビゴーの描く『明治の女たち』のシリーズがあった。
ビゴーは日本人妻と正式に婚姻し息子をあげているが、後年離婚して息子を連れてフランスへ帰っている。
日本の風俗・人々を描いた作品は多く、皮肉な目でみつめるものもあれば、暖かい視線のものもある。だから版画集のタイトルも『TOBAE』鳥羽絵なのである。
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江戸時代までは女も比較的機嫌よく暮らしていたが、明治になって首班がすげ変わったことで、女の暮らしは面白くなくなった。
だからここに現れる女たちも気の毒な背景を背負ったものが多い。
女郎の日々、芸者の暮らし、おかみさんの生活・・・
見ながらなぜかテオ・アンゲロプロスの『旅芸人の記録』を思い出した。
しかしたまには機嫌よく遊ぶ絵もある。羽根突きや納涼などである。
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普段はまじめに働いている。働きすぎていることもある。
なかなか美人な描き方もしている。
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ここの美術館にはオノレ・ドーミエやこのビゴーのように風刺画を描いた画家の作品が多く所蔵されている。
これら二つの展覧会は共通するところも多いような気がした。
なかなか面白い展覧会だった。
伊丹市立美術館では、ときどきこんな<そそられる>展覧会が行われているのだった。
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