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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

オルセー美術館展

神戸でオルセー美術館展を見る。
この十年間に三度その展覧会があり、今回は<三部作の有終の美を飾る>と意気込んでいる。
既にクリスマス休暇に入り、1/2から再開し、1/8まで神戸で展覧後、東京へ移動する。
神戸では松の内の間はお年玉として、オルセー福袋やオルセーおみくじもあるそうな。
欲しいけど、時間の都合がつかないので天皇誕生日に出かけた。

並んではいないが、中は繁盛している。
100円で簡単な見どころガイドのリーフレットも販売しているが、本を買う気になっているのでスルーして、会場に入った。

オルセー美術館は’86開館だが、世界中からお客さんが大勢来る大人気スポットだ。一度、朝はルーブル・夜はオルセーというめちゃくちゃな回り方をしたことがある。あげくお金がなくなりタクシーに友人を人質におこうとして、いまだにそのことを恨まれている。

五つの部門に分かれての展示だが、それは以下のとおり。
1.親密な時間
2.特別な場所
3.彼方へ
4.芸術家の生活―アトリエ・モデル・友人
5.幻想の世界へ

長い感想はこの後に。(マクラも長いやん)
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1. 親密な時間。

画家とモデルとの関係はとても深いものがある。
最近ではジャコメッティと矢内原伊作との関係がクローズアップされていた。
「美しき諍い女」という映画もあった。
ここでは身近な人への温かな視線が感じられる作品が揃っていた。

エドガー・ドガ(1834-1917)テレーズ・ドガ
ドガの妹の婚約時代の姿。この時代のファッションだから仕方ないが、りぼんなどのおかげで顔がとても大きく見える。まじめそうな女の人。ドガの女の人でこんなにまじめそうな人は、他にいないように思う。

ジェームズ・ホイッスラー(1834-1903)灰色と黒のアレンジメント第1番、画家の母の肖像
丁度先日sekisindhoさんがホイッスラーを取り上げておられ、そのタイトルのセンスについて千露さんが素敵なコメントを書かれていた。なんとなくエリック・サティ同様タイトルにこだわりがあるのを感じる。
当然ながら母上はご年配なのだが、きちんとした女の人だと言うのが感じられる。
横向きに座る姿といい、壁にかけられた額縁の位置、紫のカーテンといった構図の巧みさに感心した。

ベルト・モリゾ(1841-1895)ゆりかご
1872年のこの作品は、以前から何度も日本に来ている。女の横顔。ゆりかごを眺めている。女のあごから頬のラインがとてもきれいだ。赤ん坊はすやすや眠る。笑顔のない母と子だが、深い慈しみをそこに見出す。彼女の眼差しに包まれて、赤ん坊は静かに眠り続ける。

クロード・モネ(1840-1926)アパルトマンの一隅
実は展覧会に来るまでこの絵がモネだとは思っていなかった。絵葉書も持っているくせにモネだと意識していなかったのだ。モネだと気づいてからは、これまでとは違う視線が絵をなめる。
奥にいるのは多分カミーユだとか、そういったことだ。
わたしはこの室内に憧れていたのだ。床模様、壷の観葉植物、幼い男の子・・・
好きなものばかりがそこにある。

ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)ジュリー・マネ(あるいは猫を抱く子ども)
この絵は以前から好きだ。猫の幸せそうな顔。それだけで嬉しい。早くにこの展覧会を楽しまれた千露さんも(多分)この絵が見たくて海を渡られたように思う。
少女と言うより幼女と言う方が正しいジュリーもうっとりしたように座っている。大好きなにゃんこさんをだっこ出来て、嬉しい。そんな顔をしている。
ルノワールには「猫と少年」と言うときめくような作品もあるが、幸せ度はこちらが高い。わたしも好きな猫と一緒にいるときこんな顔をしているのかもしれない。

エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)3つのランプのあるサロン、サン=フロランタン通り
1899年と言えばわたしにとっては最愛の石川淳の生誕の年だという感覚がある。その年に30代に入ったばかりのヴュイヤールが描いたパリ。
以前から好きな作品にこうした付加価値までついてきた。わたしの内部でだが。
わたしは田園風景より都会の情景や室内に関心がある。ここで何をしているかは別として、ヴュイヤールの描く室内には、「さっきまでわたしもいたのよ」と思うような親しみが、ある。
もっと言うと、「ここにいたいのよ」と言うのが正しいのかもしれない。
巨大な観葉植物(しかも羊歯の親戚)明るい壁紙、グランドピアノ、タピストリー・・・わくわくする。日本家屋の<間>とは無縁な世界だが、和むものを感じるのだった。

フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)ボール
いつだったか、ブリヂストンで回顧展があった。白と黒の画面で、登場人物はみんなスラップスティックな動きを見せていた。この作品もそうだとは言わないが、そこはかとなくにじみ出るものがある。絵を見るだけでなんだかトボケているような。日本でなら河目悌二にそんなムードがあった。
これはグワッシュである。
小さい女の子がボールで遊ぶ。緑濃い公園の中か、木陰も深い。とても楽しそうに見えた。
普段のヴァロットンとは違うイメージがあるが、わるくない。

アルベール・バルトロメ(1848-1928)温室の中で
婦人が温室にいる。こちらを向いている。いろいろな花がある温室だから蘭類が多いのかもしれない。花も綺麗だが、彼女がまた花のようでもある。絵葉書または額版を買って飾れば、彼女のいる空間にわたしたちも入ってゆけそうな気がする。
わたしは植物の名前に疎い。だからこれが何の花かとは答えられない。絵の中の彼女に尋ねれば教えてもらえるかもしれない。

エドガー・ドガ ルネ・ドガ
二十歳少しのドガがまだ十代の弟を描いている。素描。ルネは少し口を開いている。そして目を閉じている。静謐さを感じる素描。また、やや横向きの顔もある。こちらは目を開け、口を閉じている。
全く別人のような気がした。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(1833-1898)女性の横顔 《運命の輪》の習作と、目を伏せた女性の顔 《運命の輪》の習作
同じ年に描かれている。静かできれいな女。ご年配のお客さんが話している。「こんな横顔、日本人には生まれへんね」確かにそう思う。唇とあごのかたち。ふと、くちづけたくなった。

アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)自画像
1860年だから、24歳の青年の自画像。花の絵ばかりしか知らなかった。まっすぐにこちらを見ている。眼光炯炯というわけではない。しかし視線がそらせなくなる。少し小さな顔。賢そうな目をしていた。

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2. 特別な場所。

作家とその地との切り離せない関係。旅をして、その地を描く人は旅した地が特別な場所になるのだろうが、そうでない人も多い。場所ということを考える。画家の手によって価値を見出される場所もあるのだった。

エドゥアール・マネ(1832-1883)ブーローニュ港の月光
藍色の夜に白い月が昇っている。船が沢山停留している。なんとなく楽しいような気がする。
ここにいる人たちがどんな人たちなのかはわからないのだが。

エドゥアール・マネ アンリ・ロシュフォールの逃亡
このアンリ・ロシュフォールの逸話も何も知らないのがつらい。解説を読もう。
とにかくボートを漕いでいる。向こうに小さな船影が見える。
ところでこれで思い出したが「漕げよマイケル」の歌。あれもなんとなくrunawayする歌のような気が勝手にしている。どこへか。乳と蜜の溢れ滴る地へか。
ロシュフォールはどこへ行くのか・・・

クロード・モネ ベリールの岩、打ちつける波
波のざわめき・雲の動き・岩の厳しさ。それらを感じている。
岩は水で削られたのか、鋭い形をしている。轟く海鳴りまで聞こえてきそうだった。

クロード・モネ ルーアン大聖堂
とてもきれいだった。会場の二階に上がった途端にそこにある。
青い空、白い建物。クリスマスを不意に意識した。ちょっと拝みに行こう。そんな気持ちが湧いてくる。空が青いからか、この聖堂に明るい気分で入ってゆけそうだ。

ギュスターヴ・ル・グレイ(1820-1884)セートの大波
写真。セピア色の海。黒と銀色の雲。わたしはこんな写真が好きだ。自分で撮りたいのはこの色調なのである。

フレデリック・エヴァンス(1853-1943)エリ大聖堂、ノルマン人の記憶
三本の柱と向こうの建物の柱が写っている。建築に関心が深いわたしは、この写真を見て、建物全体の構造が知りたい、と思っている。

ロベール・ドマシー(1859-1936)ブルターニュにて
ゴーギャンの描くブルターニュの女たちのような広い襟の服を着ている。ほぼ百年前の写真なのに、服装のためかもっと昔に見える。対岸にはセメントの防波堤もあると言うのに。

ベール・ドマシー(1859-1936)クリシーのセーヌ河
1900年頃のパリの風景。ときめく。ただただときめく。’98の丁度今頃渋谷の松涛美術館で大正の都市生活者の写真展が開催されていた。資生堂の福原氏、記念公園もある大田黒氏らの大正時代の写真の展覧会だった。パリも’20年代の日本の都市も、どうしてこんなにも魅力的なのだろう・・・

エドワード・スタイケン(1879-1973)田園、月光・月光、池・谷への道、月光
三部作らしい。セピアが二枚と青灰色が一枚。随分長生きしたカメラマンなのだな。
月光の静かな美と言うものを味わわせてもらった。

ポール・ビュルティー・アヴィラン(1880-1950)ニューヨーク、夜
1912-1913年頃のNY。大恐慌もまだだし、戦火もない。禁酒法の時代だったっけ。
こんな景色、もう決して見ることは出来ない。

アルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)スタート地点へ
競馬です。有馬記念のディープインパクトは本当にパカランパカランと飛んでいた。
この写真の馬たちはちょっと違うみたい。

アルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)希望の都市
1910年のNY。これを見ると、「海の上のピアニスト」を思い出す。希望の地は新大陸にあった。摩天楼の並ぶ地へ。欧州航路。船から見る最初の景色はNYなのだ。

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3. はるか彼方へ。

これは妄想の世界ではなく、ツアーでGO!の方なのだ。
タヒチに行く男もいれば、エジプトへゆく男もいる。ヨーロッパから遠く離れて。

ピエール・ボナール (1867-1947)水の戯れ、旅
水遊びする女たち。手前の足をもう少し開いてみたくなった。頭の中でドビュッシーのその曲が流れている。まるで舞台のようにも見えるし、額縁ショーにも見える。そしてその枠には色んなポーズをとるサルたちが描かれている。そして船が行く。しかし女たちはセイレーンではない。
向こうには香港のような半島も見える。不思議な世界だった。

フィンセント・ファン・ゴッホ (1853-1890)アルルのゴッホの寝室
1889年、死の前年。これはひまわりと共によくメモ帳に選ばれたりしている。会場ではワークショップでこの絵をペーパークラフトか何かで再現する、というのがある。
ドールハウスのような感じなのかな。
壁にかかる絵を一つ一つ見て回りたい。ここに入ればどうなるのか。そんなことを考える。

ポール・ゴーガン (1848-1903)額
1901-1903年頃、写真は1919年頃。何かと言えば、ポリネシア独特の刺青を全身に施した男性の肖像写真なのである。そしてそれを飾る額はゴーギャンによるレリーフが施されている。
モノクロなので刺青の色はわからない。しかし青または黒のような気がする。

エミール・ベルナール (1868-1941)日傘を持つブルターニュの女たち
ブルターニュは不思議なお国柄を持つというが、ここの民俗を調べるのも面白い。日傘というよりきのこのような傘に見えた。そのへんな傘をさして座る女たち。

エミール・ベルナール (1868-1941)ボワ・ダムール(愛の森)のマドレーヌ
森の中、向こうには池がある。細い木々の林立。そして横たわる女。
手の大きい女の人だった。なんとなくその手の大きさが不思議なくらいだった。

マクシム・デュ・カン (1822-1894)カイロの外国人居留区の家と庭(オリエントの服装のギュスターヴ・フローベール)、ヌビア、イブサンブール、(アブ・シンベル神殿)スペオス・ド・フレの西側の巨像
この写真展は伊丹で見た。三鷹に巡回したそうだが、忘れられない展覧会だった。個人的感慨はおくとして、150年前のエジプトツアーはこんな感じだったのか。実際にエジプトに行った事がないのでどんなものかわからない。
しかし150年前の風景と三千年前と現在とはすべて違うのだ。それを思うと、なぜか遠い気持ちになる。ファラオの顔の巨大さ。この写真がチラシだった。

フェリックス・テニャール (1817-1892)セブア、神殿、道の左側の巨像とスフィンクス
このスフィンクスはよく知られている<あの>スフィンクスではなさそうだ。
わたしはエジプトに詳しくないのでよくわからないが、スフィンクスはあちこちにころころ建てられているのか、という疑問がある。
エジプトのスフィンクスは顔が人で胴体は獅子で尻尾は蛇だったか。キメイラ。それを実感する。胴体と手足は本当にライオンだった。にゃあとしている。
百五十年前にすでにここまで崩れているのだから、今はないのかもしれない。

フェリックス・テニャールは他にもエジプト界隈を多く撮影している。
ダッカ、プセルシス村とナイルの河岸。デール、岩の中に刻まれた遺跡、左側の柱と彫刻。フィラエ、第1の柱頭、東側の開口部の上に彫られたフランス語の碑文。アブキールの断崖、急流と花崗岩質の小島。などなど。
英仏にエジプトブームがあったことがよくわかる。そしてその背景に何があったかも、また。
アジアとアラブと。東と西の対立がそろそろ見え始めている。

今回の展覧会で感心したのは、実に多くの写真が来ていることだった。
わたしは絵画も好きだが、こうした古写真も好ましいので、とても楽しく見て回ったのだった。
しかしその一方で、今回現れた陶器類・工芸品にはあまり関心が向かなかった。

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4. 芸術家の生活。

王政崩壊後、<市民>主権の世になり、芸術家も自分が描きたいものを描けるようになった。
仲間内をモデルにしたり色々と実験もしたり。なんだかそれだけでも近代はよいなとわたしは思ってしまう。

エドゥアール・マネ すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ
今回のチラシにもなり、紅白で言えば大トリのような立場の絵である。
実はこの展覧会の少し前に兵庫県美術館で全く同じ主題の作品を見た。ただし向こうは油彩ではなく、版画だった。黒衣の女・モリゾ。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 絵筆を持つクロード・モネ
まだ若かったからか、ルノワールもハンサムな青年を描いている。モネとは仲良しさんだったんですね。同じ構図で全く違う絵も競作していたし。
モネの手には絵筆とパレットがある。どんな絵を描いていたのだろう。もしかして、自分を描くルノワールを描いていたのかも・・・。

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5. 幻想の世界へ。

子供の頃から幻想、或いは空想・妄想とは親しかった。
だからか、絵画作品にもそうした味わいのあるものが好きだ。
その意味で最近はルネサンス以前の作品にも関心が向いている。
ここでは神秘的な作品が多く集められている。

ギュスターヴ・モロー(1826-1898)ガラテア
ガラテアの白い肌はまるで陶器のようだと思った。触るとひんやり冷たい。しかし中に水を注げば忽ちのうちにしっとりする。そんなイメージがある。
海の中の植物は一つ一つを見るとグロテスクだが、全体の中では調和している。
このガラテアは三つ目の巨人に自分の裸身を晒しながらも、相手の存在を周りに生える海草やウミユリくらいにしか見ていないようだった。
男の絶望はただただ、深い。

ヴィテスラフ・カルル・マチェック(1865-1927)預言者リブザ
描かれた人物が誰なのか・いつの人物なのかはわからない。わかることはこの人物が何をしたかということだけだ。預言。神との契約で、その口からこぼれる言葉はすべてが事象として世に起こる。善きことも悪しきことも。預言者として日常の人々の生活の輪から外れた存在。妖しいまなざし。あまり見ればこちらが囚われてしまう。
画家の名前から考えるとチェコの人だと思う。チェコの歴史はあまり知らない。ミュシャがムハとしてチェコに帰り民族の歴史を連作として世に送り出したのを見たがそれを見ただけなのだ。
このリブザが男なのか女なのかもわからない。装飾も服も女のようだが、そうではないのかもしれない。預言者は巫女とは別なものだ。女装しているのかもしれないと思うほどの顔だった。

オディロン・ルドン(1840-1916)キャリバンの眠り
『テンペスト』に現れるキャリバンが眠っているのは、野の中である。そばに不気味なものたちが飛んでいる。生首虫。キャリバンは夢を見るのか。見るならどんな夢なのか。幸せな夢?不幸な夢?ご馳走を食べる夢かもしれないし、悪事が成功する夢かもしれない。
グリーナウェイの映画でキャリバンを演じたのはピーター・ガブリエルだったように思う。このキャリバンはむしろ指輪物語のゴラムに近いイキモノに見えた。

オディロン・ルドン 2つの球体の間に座る男
これは多分、罠だ。これは久世光彦の見た・岸田今日子の見た<男>だ。日常の隙間に潜む禍々しい何か。不気味な存在の正体は誰にもわからない。
今年鬼籍に入った二人が生前に見た厭なもの、それが今こうしてここにある。この厭なものの存在に気づいた者が、今度から二人に代わって脅かされるのかもしれない。

レオン・スピリアールト(1881-1946)月光と灯火
いつか忘れたが回顧展があったはずだ。チラシがあるが、今は取り出せない。
月は高く遠い。橋に連なる灯火。人の世にある景色なのだろうか。

ジュリアン・アドルフ・デュヴォセル(1873-1961)目の飛び出した頭蓋骨
去年の今頃から宗旨替えをして、ミイラよりホネが好きになった。
とはいえ、この飛び出す目玉の骸骨はやっぱり不気味だ。しかし、妙に可愛い。
こんにちは??なガイコッツ(勝手に名前を付けてはいけない)。

ルネ・ピオ(1866-1934)《ニンフの香り》(ジイド邸の壁画)の習作
1908年だからと言うわけでもなかろうが、この装飾的な作品を見て、バレエ・リュッスを想った。色彩感覚がそんな感じに見えるのだ。習作と言うことだが、ジイド邸は完成して、この壁画はそこに飾られたのだろうか・・・

ガストン・ルドン(1853-1921)はオディロン・ルドンの弟で、ここに展示されているのは墓地・葬式関係の設計図でもある。
パリ、モンパルナスの墓地のセザール・フランクの墓廟の習作 頭蓋骨を頂く葬儀のための建築物・葬儀のための建築物・山に囲まれた葬儀のための建築物
などである。今年の二月、北欧の建築家グンナール・アスプルンドの展覧会を見たが、そのとき彼の最初の仕事が火葬場の設計だったと知った。
あちらは昼の葬列のようだったが、こちらは真夜中の埋葬のように思えた。

ジュリア・マーガレット・キャメロン(1815-1879)モード、テニソン『王の田園詩』の挿図
絵画では表現しない何かがこの写真にはある。
写真の構図や装飾性はラファエル前派の作品のように見えた。静謐な中に、ひずみの激しい音楽が流れてくるようなイメージがある。アルビノーニのアダージョもいいかもしれない。

フェルナン・クノップフ(1858-1921)扮装して座るマルグリット・クノップフ
1901年頃15,5 x 11 cm
クノップフが妹をモデルにした写真。連作らしく二枚並んでいるが、孔雀のカーテンといい、布を巻きつけた女といい、掛けられた仮面といい、絵画がそのまま映像としてそこに生じたような作品である。
不思議な味わいがそこにあった。

アルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)ジョージア・オキーフ
1918年のオキーフのポートレート。意思的な顔。目元のしわでさえ、厳しい。こんな意思的な顔でいられるか。そのことを考えさせられる写真だった。

エドワード・スタイケン(1879-1973)思い出
顔を隠した裸婦がそこにいる。どんな<思い出>がそこにあるのだろうか。
百年前の写真は答えてはくれない。

ジョージ・シーリー(1880-1955)ローマの炎上
二人の女が寄り添っている。古代のローマなのだろう。女たちはまるでロトの娘のように見えた。

他にもまだまだ作品は多いが、とりあえずここで力尽きた。
関西の人は松の内に行かれる事をお勧めする。そしてオルセーおみくじ・オルセー福袋を買われたら、どうかわたしにその内容を教えてください。
展覧会はこの後来月末から東京都美術館に巡回する。
今年の展覧会はこれでお終い。いい一年でした。
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コメント
遊行さんこんばんは。
衣替えしましたね☆素敵です。

オルセー美術館展は来年一番楽しみにしている展覧会です。
関西では一足先に観られたわけですね!羨ましいかぎりです。

ゴッホの寝室とモローのガラテアが見たくてしかたありません。
本を読むときに「あとがき」から読むのも結構好きな私としては、遊行さんの感想が来年の展覧会への楽しみを一層大きくしてくれました。

来年も素敵な記事をたくさん読ませてください。
今年はどうもありがとうございました。
2006/12/26(火) 02:24 | URL | marimo #-[ 編集]
marimoさん こんにちは
ちょっとレースなテンプレにしました。
ブルターニュ風?

素敵な展覧会でした。
たぶんそちらでも大人気になると思います。
これまで来ていなかった作品もたくさんありました。やっぱり実物は凄くよいです。
わたしもあとがきから読むことあります。
わりと楽しい気分で。

来年もよろしくお願いします♪
2006/12/26(火) 08:48 | URL | 遊行 #-[ 編集]
充実した観想をじっくりと読ませていただきました。
細かなところに目配りの行き届いた感想はさすが遊行様だと思います。
>オルセー福袋・オルセーおみくじ
大変興味あります。これはぜひ松の内に行かれた方の感想をお聞きしたいですね。
>ジュリー・マネ(あるいは猫を抱く子ども)
あの猫の表情からは「幸せ」がにじみ出ているようです。まさにこの表情と『ガラテア』を見るために海を渡ったようなものです。
『猫と少年』の猫もいい表情をしていますね。
今回の展覧会は写真展示が充実していましたね。
ジュリア・マーガレット・キャメロンの写真は一度見てみたい以前から思っていました。彼女の撮影した写真はまさに「生きたラファエル前派芸術」という感じがします。
私の住む街の損保ジャパンの支店には「オルセー美術館展」のポスターが貼ってあるのですが、それは「東京展」の宣伝ポスターです。こちらからは神戸のほうが近いのになぜ東京のほうになっているのかが疑問です。
2006/12/26(火) 10:34 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
遊行さん一年間お疲れ様、僕も遊行さんと知り合えてうれしかったです。
で、オルセーの展覧会の全体的な評価はどうなのでしょうか。
東京都美術館に巡回するわけですが、ここでは「大エルミタージュ」をやっていてなにが「大」七日と散々な評価でしたね。
僕は「偉大なる」エルミタージュとネットの知人に教わりました。

さて僕はまだデパートの展覧会が残っています。
2006/12/26(火) 10:53 | URL | oki #-[ 編集]
★千露さん こんにちは
イメージ的に千露さんが口をつぐみ、目を見開いて、風に吹かれながら海を渡る姿を勝手に想像してました。
喜びの地には喜びの源がある。
いい展覧会でしたよね。洋画関係ではピカッと光ってました。
'96・'99と三回とも見たのですが、今回のが一番よい展覧会だと思います。

損保さんは東京展のみのスポンサーかもしれませんね。どうもそんな気が。


☆okiさん こんにちは
これは楽しめる展覧会でした。ハッタリもスカシもなく、正当な展覧会。そんな感じです。有名作品のほかに知られざる名画や写真を、よくぞこんなにもたくさん・・・というキモチで「ありがとう、オルセー美術館」と呟きそうです。
エルミタージュで一番ウケたのは鼎さんの『誇大エルミタージュ』でした。それは春から京都です。

権六などありがとうございました。ワクワクしてます。
2006/12/26(火) 12:48 | URL | 遊行 #-[ 編集]
おさらいをさせて頂きました。克明に記されていることに先ず驚きました。私が見落としていたものも沢山あったみたいです。写真でも、ラファエロ前派を表現しようとした人もいたのですね。
私とは少し違った、遊行さんの独特の世界を改めて見せていただきました。
2006/12/28(木) 18:09 | URL | red_pepper #-[ 編集]
red_pepper さん こんばんは
かなり以前に行かれてるから、懐かしい?のでは、と思ったりしてます。
いい展覧会でしたね。
今度京都に来るエルミタがネット上ではどこが『大』なんだと不評みたいですが、こちらのオルセーは看板に偽りナシでしたね。
こういうのが本当に嬉しい展覧会です。
2006/12/28(木) 21:17 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さん、こんにちは。
都美術館のオルセー、招待券職場に送ってきましたので、
職権で、さっそくゲットしました。
このブログを読んでいて、ますます楽しみになりましたが、
混雑必死でしょうね。

石川淳とくれば、「六道遊行」でしょうか?
遊行さんのブログで知的好奇心を大いに刺激させていただき、
ありがとうございました。
よいお年をお迎えくださいませ。
2006/12/29(金) 10:20 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
一村雨さん こんにちは
おお~~チケット・ゲット!めでたい。年末から早々とめでたいです。楽しんで下さい。
都美は今年一年大人気(だいにんき、でもオオひとけでもいいかもしれませんね)のミュゼでしたが、どうかがんばってください。

実は『六道遊行』へのオマージュも込めての名乗りをあげているわたしです。えへへ。
2006/12/29(金) 12:59 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは、最近入手したオルセー美展のチラシで出品される絵のことがわかってきました。期待値以上の名作がやってくるようなので、ワクワクしてます。
2006/12/30(土) 17:59 | URL | いづつや #RK0OJ0uw[ 編集]
いづつやさん こんばんは
これは本当に期待大ですよ。絵画もよかったけれど、写真コレクションもすばらしかっただけでなく、「印象派のオルセー」という正面の他に「幻想絵画のオルセー」という側面まで見せてもらえました。
ぜひ愉しまれてください。
2006/12/31(日) 03:29 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
はじめまして
最終日近くに見に行きました。混雑しているので、じっくり見られませんでした。遊行さんの記事を読みながら覚えている作品を思い出そうとしています。
恥ずかしながら、2千円の「福袋」買いました。中身はポストカード、お菓子、マグカップ他、約4,500円のグッズが入ってました。
2007/01/10(水) 01:22 | URL | mag-vievie #SFo5/nok[ 編集]
はじめまして
mag-vievieさん こんにちは
福袋買われましたか!
うらやましいです!
ありがとうございます、どうしても内容が知りたかったので、嬉しいです。
うわ、お得ですね。
特に福袋は神戸限定なので、ますますホクホクですよ。
本当によい展覧会でしたね。
また見たいです・・・
2007/01/10(水) 09:35 | URL | 遊行 #-[ 編集]
オルセー美術館展@東京
ヤット東京に来たので、初日に行ってきました。
私も三部作の中では今回がもっと良かったと思います。
とくに象徴派作品群が充実してましたね。
オルセーの写真や陶磁器など発見の多い展覧会でした。
2007/01/28(日) 19:45 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
とらさん こんばんは
わたしもとらさんに同意同意です♪ねぇ!!
印象派とそれ以降がオルセーの特色だという意識が覆るほどでした。写真が特にわたしは興味深かったです。
久しぶりによい洋画の展覧会を見たなーという満足感が大きいです。
2007/01/28(日) 22:26 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
やっと
東京へ巡回してきました!
混雑必至なので
珍しく計画立てて早めに観てきました。
2007/02/05(月) 23:00 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんばんは
ははは、メッチャナイスタイミングです。
わたし今の今までTakさんところで記事を読んで一番に足跡残してきましたよ。オーホホホホホ、こういうこともあるんですね。
2007/02/05(月) 23:13 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
このルノワール
遊行さん
こんばんは

> ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)ジュリー・
> マネ(あるいは猫を抱く子ども)この絵は以前から好きだ。猫
> の幸せそうな顔。それだけで嬉しい。
この絵は本当に幸せな感じですよね...
先日、美術好きの飲み会に行ったら、この時代のルノワールの作品
があまり評価されていなくて、ちょっとがっかりしていました。
遊行さんの記事を読んで、我が意を得たり!という気がしました...
2007/02/09(金) 04:18 | URL | lysander #f8kCkkcg[ 編集]
lysanderさん こんにちは
ルノワールは藝術新潮でも以前に『好悪を超えたルノワール』という特集が組まれるほどですからねえ。
わたしはルノワール大好きです。
この時代の作品には、個別に好きなものが多く、生涯にわたって(総体として)とても好きな画家です。
だからこそ、オルセーもこの絵を選んだのでしょう。確信。
2007/02/09(金) 08:58 | URL | 遊行 #-[ 編集]
マネがいい
今日の都美は超激混みでした。
出遅れて、10時20分着。9時開館だと、やはり遅いか。
私が、滑り込んだところで、入場制限がかかりました。
シメシメと、思って、中に入ったら、挨拶板の所まで、人が溢れていました。こんな激混みの美術館は東博の北斎展、東近美のゴッホ展(ただし、3回目に行った時)以来です。

ゴッホ好きの私ではありますが、今回はマネがいい。
ブーローニュ港の月光、残念ながら図録の月の光は今一。
アンリ・ロシュフォールの逃亡、隣にあった?モネの波よりずーっといい。
すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ、黒がきれい。

もう一度、行きたい。今度はゆっくり見たい。1時間半ほど居たが、人が多すぎて、落ち着いて見れなかった。

逆行したら、凄い人で、回るのは諦めました。入口には列が出来ていて、15分待ちの標識が。

出たら、広場で中国雑技団の公演があった。
壷をつかった曲芸、人間業とは思えない超柔軟な女性、車高2mの一輪車、椅子を積み重ねた上での曲芸。一輪車のオネーチャンが可愛い。
30分ほどの公演が終わったら、アルミのボールが回って、千円と言っていたが、オルセーが1時間半で1500円なので、500円にしておいた。1000円入れた人も結構居た。劇場で見れば3万5千円とか言っていたが。最前列でスリル満点でしたけどね。
曲芸といっても、見せ場では、一瞬、笑顔から真顔に変ります。白い肌の女性の耳が真っ赤になっていたのが印象的でした。

このあと、江戸東京博物館に「江戸城」を見に行ったのですが、ここも激込みでした。1階の企画展示室は狭すぎ。迷路の中での展示。帰りに図録を見ていたら、見落としがありました。なんてこった。

2007/02/10(土) 21:00 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
鼎さん こんばんは
うーーむーー凄いですね。これぞまさしく一極集中化か!
わたしの今までの最大の記憶はバーンズ・コレクションでした。
北斎は入るまでがしんどくて。絵巻は入ってからがしんどくて。
モリゾの肖像画が神戸のメインでしたが、あの絵の雛型のような作品が兵庫県美術館にありました。

雑技団、好きです。今はなき琵琶湖の紅葉パラダイスでみたなぁ。
上海ではあいにく見そこねてしまいました。夜の上海ハイカイしてしまって・・・

江戸城もえらい人気ですねえ・・・
>見落としがありました
ガガーンッッッ ですね、その口惜しさよーくわかります。
2007/02/10(土) 22:23 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
TBありがとうございました。
僕のあの短い記事に、このような力作をTBしていただき、恐縮しております。
鼎さんのコメントを拝見すると、とても根性無しの僕では行けないことが分かりました。(苦笑)
やはりこのなかでは「ジュリー・マネ」と「ガラテア」の2点一番好きです。
クノップフの撮った写真も面白そうですね。
2007/02/11(日) 00:30 | URL | lapis #e8.b9ePc[ 編集]
lapisさん こんばんは
わたしはlapisさんのように<居ながらにして万物を視る>目がないので、駆けずり回っているだけですよ(笑)
やっぱりガラテアとにゃんこさんがよかったです。
クノップフの写真には深い意味がこめられているようにも感じました。妹との関係の深さ・・・温めたミルクが冷えてしまったのを、それでも手のぬくもりで飲もうとするような、そんな感じがありました。
2007/02/11(日) 00:46 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さん、こんにちは
ぼちぼち復活しています。
「ガラテア」の美しさにやられましたが、それは別記事にしてしまいました。(おいしいものは後回しな心境?)
ジュリア・マーガレット・キャメロンの写真も見れたことも収穫ですね。ただ、写真の説明があまりなかったことがちと残念でしたが…
(TB送ってみましたが、上手くいかなかったみたいです。また後でトライしてみます。)
2007/02/11(日) 22:38 | URL | アイレ #-[ 編集]
アイレさん こんばんは
よかった。復活されましたか。
MOAの鍋島に始まり二度目ですかね、今年の展覧会。
写真といいモローといい、オルセーに対する認識が変わりましたよ。いい展覧会でしたね。
2007/02/11(日) 23:32 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さんこんばんは。
先日、人でごった返していた都美にて拝見してきました。凄い人気ですね。

私などこのような展覧会を見ても、
結局数点の作品だけしか印象に残らないのですが、
普く作品を見られる遊行さんには本当に感服致します。
もう一度展覧会へいくつもりで、
充実のテキストを拝見させていただきました。

思いの外写真が展示されておりました。
オルセー所蔵写真展などがあればとも思います。
2007/02/12(月) 00:33 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんにちは
>オルセー所蔵写真展などがあればとも思います
ナイス企画です!
わたしもこんなによい写真が多いとは想定外でした。嬉しい。

ほめていただき嬉しい半面、偏っているんですよ、わたし。
ニガテなものは完全にすっ飛ばしているんですから。反省。
2007/02/12(月) 14:42 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
久しぶりにコメントを付けさせていただきます。
(ウィーン美術アカデミー名品展以来かと思います)

やはり、細かいところまでよくご覧になってるなーと思うと同時に「そういう見方があるか!」と驚きます。自分と違う視点が刺激的です。

>今回現れた陶器類・工芸品にはあまり関心が向かなかった。

は僕もそうでした。
「月光と灯火」は予備知識無く出会った作品で、とても気に入りました。レオン・スピリアールトの回顧展、今あれば行きたいです。
2007/02/15(木) 02:24 | URL | COZY #f.D/6qyw[ 編集]
COZYさん こんにちは
お久しぶりです。
今回のオルセー展いいのが多かったですね。
基本的に変な回路を走るので、ちょっと違った見方をしているのかもしれません。
この展覧会で知った画家もいるので、その人たちの回顧展などみたいですね。
なんていうか、この展覧会から様々な花が芽吹きそうな気がします。その花をどんどん見て行きたいものです。
2007/02/15(木) 13:06 | URL | 遊行 #-[ 編集]
おはようございます。
今日都内のオルセー展に行きます。
早起きしてネットしていましたが、遊行さんのブログが一番参考になりました。
2007/03/09(金) 06:35 | URL | ジョー #CofySn7Q[ 編集]
ジョーさん こんにちは
ありがとうございます。
とにかく都美はモノスゴイ人出だと言いますから、がんばってください。
またご感想など教えてくださると嬉しいです。
2007/03/09(金) 06:56 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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