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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

日本画の風情

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西宮大谷記念美術館で12日まで『日本画の風情』展が開催されている。
毎年初めは館蔵日本画の展覧会なので、挨拶もかねて見学に出る。

入るといきなり縹渺たる世界がそこに広がっていた。
山下摩起の屏風『雪』 遠くからでは白と薄茶色な色目だけが広がっていて、それが何かはわからない。わからないが、吸い寄せられる力がある。
ああ、そうか。笹が雪にまみれてその重みにたわんでいる。
ふと息を吹きかければ、それだけで雪が地面に落ちるような、そんな絵だった。
‘33のどこかの風景。今年は暖冬だからこんな景色、見られないのかもしれない。

鐡斎『山水図(水石間図・仙境図) 金地に墨絵で描かれた山・山・山。その山の集まりはまるでプディング・カップのようで、隙間から水が溢れている。水はどこへ行くか。山から池へ注ぎ込み、池からどこかへ流れ出て行くのだった。
丁度百年前の作品。鐡斎は実際に見たわけではなく、観念の仙境図を描いたのだ。
百年前と言うより、描かれた景色は千年も昔のように感じる・・・

『迦哩迦尊者図』 無論私は迦哩迦尊者の故事など知らない。衝立の裏面に描かれたオジサンが虎の背に乗るのを見るだけだ。その子なのか仔虎の背には一輪挿しの花瓶が花ごと結わえ付けられている。虎は虎らしくない顔でにゃあとしていた。

面白い表具仕立てを見た。
関雪『後赤壁図』 詩人を乗せた船が赤壁を望む。何百年か前の英雄たちの死闘を偲んでやってきた、有閑詩人たち。その絵を仕立てた屏風の布地を見ると、全部<関雪>の印章で構成されている。一種類のではなく、この世に知られている限りの全てで。
遠目にはただの灰色の布にこんな面白い仕掛けがあったのだ。

先日小杉放菴の『黄初平』を見たが、ここにもいた。山元春挙のはまだ仙道修行中の少年だった。『叱石成羊』という話によると、40年修行した初平くんは鞭をふるって石に「羊になれ」と言ったところメエメエと羊が湧き出したそうな。
まだここにいる初平くんはそんな域に到達どころか、誤って自分の白い指を打ちそうに見えた。

少し時期ハズレだが、風情と言えばこれほど風情のある情景は少ない。
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松園『蛍』 髪の上げ方もとてもステキだ。実は今日のわたしは髪をまとめてオダンゴにして頭頂で止めているから、この髪型の親戚なのだった。
しかし寒いからか、蛍はこのようには出てこなかった。(それだけか??)

木島桜谷『新鵑』 深山幽谷。高い高い杉が並ぶ。道に杣がいる。何人か、山仕事へ行く。彼らの知らないずっと高い空で杜鵑が、飛んで行く。
声が耳に響くような作品だった。

春挙『雪渓遊鹿図』 これも先にあげたのと同じような精神性のある作品だと思う。
吹雪の止むことを知らぬような雪山が聳え立つ。目を開けるのがつらいほどの、雪。
そのずっとずっと下、左下の端に鹿の群れが走っている。絵の外へ出るようにして。

これら二作を見ていると、精神が深く沈潜するのを感じる。

濱田観『白木蓮』 水色の地に白木蓮がいくつも咲いている。去年姫路でこの人の花菖蒲を見て感嘆した。今日、この白木蓮にため息をついた。
描かれた年はいつかわからない。しかし、とてもモダンな作品だった。
ああ春が来たのだ、と感じるような白木蓮と空の色だった。

島成園『弥生』 少女がこちらへ顔を向けている。身を反らしつつ。赤い着物は少し大きめに見える。着物に隠された腕も胸もまだまだ細くて、時を待っている。そんな気がした。

池田蕉園『古代美人』 古代とは言え明治の人の意識では江戸時代も古・代なのだった。
いにしえの世の美人。髪型は松浦屏風に現れるような頭頂でクイクイッと束ねたもの・着物は大胆な芭蕉柄。慶長美人なのだろう。苦界が苦界になる前の、公界だった頃にいたのかもしれない。帯は紐だった。元禄と言うことはないようにも思う。

青邨『薔薇』 赤い薔薇の中にぽつぽつと黄色い薔薇が混じっている。それらを活けるのは青い壷。薔薇の香がこちらにも届いてくるようだ。先日の梅とは全く違う薔薇。
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摩起『椿』 椿の中に白梅が少し混じり、その枝や花の真ん中にそっと鳩がいた。
さっきわたしは夙川の土手を歩いていたが、春まで花を持たない木の枝が妙に賑やかだと思った。丸いようなふくらみがいくつもあった。
植物に疎いから何の木かよくわからないので、近づいてみると、鳩の木だった。
ネコヤナギは知っていたが、ハトドマリノ木というのも案外メジャーなのかもしれない。

深水『吹雪』 二枚出ていた。
一枚は一番上に上げた画像。いちばんバージョンの多い作品。もう一枚は違う方向に傘を向ける美人だった。

龍子『夕顔』 宵闇に薄い白が開いている。夕顔の白い花。少し大きい花だった。
光源氏でなくとも、心惹かれてしまう。この花の主は・・・・・・・

わたしは杉山寧の描く動物たちには、感情がないような気がしていた。
しかしここにある『雉山百合図』の雉を見て、それは違うと悟った。
雉がうずくまりながら、なにかを見上げている。ふっくらした頬。小さい目を見開いて、何かを見ている。山百合を見ているわけではなさそうだが、雉は確かに何かをみつめ、何かを考えている。

最後に深水『舞妓』 img716.jpg

とても可愛い。

他にもすばらしい作品が多かったが、こればかりは実際に訪れないと、見ることも感じることも出来ないのが残念だ。
庭園には蝋梅が満開になって、いい匂いを撒いている。水琴窟もキィンと金属的な響きを聞かせてくれる。
二月初めの小さな喜びだった。
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コメント
2月も、アートに充実した日々で始まって素敵ですね。(^^)
西宮の美術館には行ったことがないのですが、かなり作品が豊富な感じがしますね。行ってみたくなりました。
日本画も大好きです♪
こちらは雪がかなり積もっていて、今もけっこう降っています。
冒頭の、深水さんの絵にぴったりな状況です。(笑)
松園さんの絵の女性を見て、遊行さんをイメージすることにします♪(^^)
2007/02/02(金) 09:14 | URL | tanuki #s.Y3apRk[ 編集]
笹乃雪
京都は雪が降ったそうで、なんとも羨ましいです。 
笹に雪の風情たまりません。そこに白狐がいたらそりゃあもう・・・
笹葉の雪が溶け落ちた反動でしなった竹がゆすらっと跳ね上がる
瞬間もゾワゾワします。

そうそう根岸には笹乃雪という豆冨料理の店があります。
○○尽くし、アレは苦手ですが・・・あれ、食べ物の話になってる^^;

着物の色合わせって、これが洋服だったら絶対にチグハグなもの
でもしっくりと合ってしまうのですよね。
(深水の舞妓はんを見て)はぁ・・・薄紅色の似合う女に生まれたかった。
2007/02/02(金) 14:16 | URL | 山桜 #-[ 編集]
☆tanukiさん こんばんは
嬉しいことをおっしゃる。キモチだけでも松園さんの絵に近づきたいものです♪
滋賀は真っ白でしたね。信楽のぽんぽこさんたちも笠に雪が積もってるでしょうね。工房などでは寄り集まっているから寒さにも耐えれるかな?
西宮大谷は庭園も素晴らしいんです。着物で散策されると気持ちよい空間ですよ。


☆山桜さん こんばんは
金閣の屋根が真っ白でした。大阪も少しだけ。すぐに解けて跡形もないけれど。
静寂の中で雪の立てる音・・・ときめきますね。
一度笹乃雪に行きたいんです。彰義隊をかばったときの資料もあるそうです。江戸の心意気。
薄紅・・・薄い、と言う色合いに既に見放されている私です。
2007/02/02(金) 21:27 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
椿の絵、気に入っています。我が家の庭に、椿があるので咲くのが楽しみです。今見たら、椿は咲いていませんが、赤いバラがつぼみをふくらませています。果たして咲くのでしょうか。寒波が襲来しないことを祈りたいです。
2007/02/03(土) 14:56 | URL | yuyu-museum #-[ 編集]
yuyu-museumさん こんばんは
どうも椿は来月のようです。その頃には椿特集を組みます。
花は季節を忘れずに咲いてくれると思います。
遅い早いの違いはあっても、きっと。
2007/02/03(土) 23:00 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
re:日本画の風情
遊行さんのブログをみて、大谷に行ってきました。
見学者がほかに誰もいなくて、係りの人だけというのはちょっと緊張します。係りの人も、ちょっと意識しているみたいでした(笑)

それにしても、絵を見ながら何か思いついたことをメモでもしているのでしょうか。
図録があればそれを頼りにするのですが・・


トラバが出来ないので、本文中でこちらへのリンクをさせて頂きました。不都合があればお知らせ下さい。
2007/02/04(日) 19:14 | URL | Hokurajin #6eBNGMlg[ 編集]
Hokurajinさん こんばんは
わたしのときもお客さんが少なかったです。で、わざと不審人物を装う←何もしなくても常に不審人物ですが(笑)
人が少ないのでカキカキしやすかったです。

ところでHokurajinさんはもしや谷崎も住んでいた、あの梅の名所からのお名前でしょうか。
2007/02/04(日) 22:14 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
保久良
やはりメモっていたのですか。頼りない海馬に頼っているだけなので、今ひとつ突っ込んだことが書けないですね。

少年時代の懐かしいところです。今も岡本にはよく行きます。確か阪急の岡本駅に鎖瀾閣の看板があったような。
去年、境内でたまたま見かけたイノシシを写真に撮りました。
2007/02/05(月) 19:57 | URL | Hokurajin #6eBNGMlg[ 編集]
Hokurajinさん こんばんは
>頼りない海馬
わたしの海馬はスッカリ波にさらわれました・・・

>鎖瀾閣の看板
今もありますよ。武庫川か甲南の先生が復元運動されてます。

岡本六甲界隈には野良イノシシがたむってますね。

メモを取ることで、後日記事を書くときに色んなことが思い出されてきます。そこからまた別な記憶と繋げてネツゾー文をあげてます。
2007/02/05(月) 22:25 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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