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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

四季の眺め

二ヶ月前、『応挙と芦雪』を見て以来の奈良県立美術館で、『四季の眺め』を楽しむ。
四季の眺めと言っても無論現実の季節は温いとはいえ暖冬なので、やっぱり日本画・洋画・版画で楽しむのだ。
展覧会のコンセプトは以下のとおり。
春夏秋冬の変化に富む日本の四季は、日本絵画において様々な形で表現されてきました。
鮮やかな表情を見せる自然風景や暦にもとづく年中行事はもとより、物語の一場面や何気ない日常の情景に彩りを添え、人々の内面や人生、生命の象徴として描き出されます。このような豊かな季節観は、私たちの生活が四季の移ろいとともに営まれ、季節を慈しむ独特の文化を育んできた表れともいえるでしょう。
 本展覧会では、奈良県立美術館の所蔵品、花鳥画・静物画、人物画、山水画・風景画の三つのテーマに分類し、四季の多様な表現や変容を見て取るとともに、その根底に息づく日本人の美意識を探ります。

早朝の一番客なのでじっくり見た。

小野竹喬『松風』 嵐山の渡月橋を行くのは大原女だろうか。
柴をかついでいる。
松風の音色。img719-4.jpg

最早二度と帰らぬ風景。

宮崎玉緒『山桜図』 二色の山桜の花枝が交差している。白と薄紅と。わたしは染井吉野より山桜・里桜に好きな種が多い。この画家が誰かは知らないし、他の作も知らないが、心に残るよい絵だった。

橋本雅邦『烏鷺図』 六曲一双の金屏風に墨絵の鳥たちの世界がある。
描線がそのまま色目にもなる烏のケンカを、描線の内側で白を示す鷺が見ている。
烏のケンカは寝技で、リングサイドに鷺が二羽ほどがいて、桟敷席にも数羽いる。なんだか面白いような情景で、もしかするとこの屏風は実はAQUOSか何かで、実況生中継を私たちに見せているのかもしれない。

平福百穂『老松図』 先日うねるような須田の『老松図』を見たが、こちらは墨と朱色とが滲みあい混ざり合って出来た幹なのである。正直言うと、鐡斎かと思ったほどの作品だった。

山口蓬春『晴好』 栗の実が見える。イガがはじけている。ルリカケスか何かの小鳥がそれを見ている。
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しかしそんな細い嘴で栗が啄ばめるだろうか。

松本楓湖『後三年合戦』 歴史画家・楓湖らしい作品だった。飛ぶ雁の列の乱れに埋伏の兵を知る。双幅でそれぞれを描いているが、歴史画というものは、一体いつから消滅したのだろう・・・・・・・

尾形月耕『源氏物語 夕顔図』 夕顔を女が渡す情景。先日西宮大谷で龍子の『夕顔』を見たが、この夕顔はたよりない、寄る辺のなさを表したような花だった。

森川曾文『祇園祭礼長刀鉾図』 古式床しい祇園祭礼図だと思った。作者は知らぬ人だしいつの時代に描かれたのかもわからない。しかしこの絵を見ると、他の祭礼図も見たくなるような<曳き>がある。
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珍しい作品を見た。幕末から明治の浮世絵師・橋本周延『月夜往来図』『春夜往来図』。
肉筆で殆ど墨一色に近い絵。往来、つまり道路・通りを描いている。
月夜には飛ぶ鳥の姿が見え、その下には新内流しの二人組がいる。鶴八鶴次郎とはいかないが、コンビを組んで長そうな感じもする。ソバの屋台も出ていた。
春夜は料亭か何かの店の外に佇む女がいる。その家の二階では静かに飲んでいるのかもしれない。芸者の姿が影絵に映るが、三味線の音も聞こえない。塀からは梅がこぼれている。
外の女は何かを手にしているが、それは三味線にも見えるし杖にも見える。ちょっとわからない。お客さんなのか研究家なのかわからない人がその絵の前で連れに説明しているので問いかけると、やはりわからないと言う。しかしその人の説によると、これは春と秋の景だから夏と冬もあるのかもしれない・・・そうだ。
あったとしたらどんな絵だろう。夏はもしかすると夜鷹と客かもしれないし、冬は火の用心の絵かもしれない。

北野恒富『舞妓』 いかにも恒富な女の顔。赤い襟が愛らしい。ちょっと面長な舞妓で、画面からは見えない桜を見上げる目は、ハマグリの形をしていた。

鏑木清方『涼風』 初見。水彩がさらさらとぼかされながら紙に残る。舟遊びのところへぱらぱら小雨が降ってきて、女が慌てて傘を差そうとする。小品だが実に良い作品だった。
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岡本神草『沐浴美人図』 雪岱かと思うような作品だった。たぶん大正頃の作品ではないか。表装も言えばレトロモダンな感じ。
春信風な女が盥で行水している。紅絹で膚を洗っているが、静かな艶かしさがある。
ふと思ったが、春信とルーカス・クラナッハの女は似ている気がする。

竹久夢二『雪中子抱き美人』 御高祖頭巾の女が赤ん坊を抱いている。あやしているのか違うのかもわからない。物語があるようにも思え、情景にも見える。
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川合玉堂『小雨の軒』 旅人が雨宿りをする農家の軒先。馬も飼葉を与えられ、食べる様子をこの家の子守たちが眺めている。家には茶色くなった杉玉がある。

池田遙邨『けふもいちにち風をあるいてきた』 山頭火シリーズ。風の強さがススキの穂に表れている。まるで嵐みたいに見える。
その中を行く山頭火。img719-2.jpg

正直言うと行乞放浪と言うのが理解出来ない。しかし遙邨の描くその姿には惹かれる。
それは遙邨の叙情性とペーソスによるものなのか・・・

中沢弘光『闘花』 桜の枝で打ち合う女たち。ワンピースやスカート姿の女もいるから、描かれた’52当時の風俗なのだが、なにかギリシャ神話の時代のようにも見える。
彼女らの輪から少し外れてこちらに真正面を向いて立つ女。気軽な着物の着こなしにヴェールをつけてこちらを見る女。神託を待つ巫女のようにも見える。桜の下には椿もポトリポトリと落ちている。

杉本健吉『東大寺二月堂修二会(お水取り)』 来月いよいよ春を告げるお水取りの時期を迎える。その練行衆の姿を連作で描いている。二月堂近景、室内、回廊、祈願、そしてお松明を持つ・・・
今年、久しぶりに最前列に立とうか。炎に熱狂して髪や皮膚を軽く焦がしてみたいような気がしてきた。

牧野虎雄『薔薇の園』綺麗な緑。生い茂るのではなく、丁寧に調えられた薔薇園。わたしは雑木林が好きだが、こんな庭園にも憧れている。
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太田喜二郎『吉野山』 ‘39当時の吉野山の桜満開の風景。山伏さんも芸者さんも家族連れも、みんな桜の満開の下をゆく。宴会は見えない。桜がピンクの塊に見える。上千本・中千本・下千本・・・桜はまるでピンクの雲のように画面のそこここに広がっていた。

梅原龍三郎『春一日』連作 解説を読む。「ギリシャ神話・仏教説話・西洋文学などを基にして、天女が鬼神へ変貌する悪夢とも幻想ともつかぬ作品」
タイトルは『天女散華』『花下裸婦』『落日』『夢三題』。’45の水彩作品。
平和な空を天女が花を撒く。ついで花の下で二人の裸婦が横たわりくつろいでいる。落日は水の滲むような夕日がある。そして変容が始まる。
二人の天女が飛ぶ下には、森にも炎の中にも都市にも見える景色がある。
天女の数が増え、眼下の景色が炎上する都市だとわかる。町を焼く煙は群青色で、焼ける建物は幹の色をしている。
やがて飛ぶ天女たちの膚の色が、まるで地獄の獄卒のような青や緑に変じてゆく・・・
これは梅原の見た戦災風景なのだろうか。
何か音楽が聞こえてくる。わたしの頭の中ではラヴェルの『水の戯れ』が流れていた。
http://homepage3.nifty.com/principe_de_plaisir/midifile/MR_JDEAU.MID
クリックすると音楽が流れます。

満谷国四郎『豊熟』 豊穣の具現化。丸々肥えた幼児たち。たわわに実った葡萄も柘榴も取り放題で、子供らは満足そうに笑っている。多産の象徴。たいへん豊かなものを感じた。
満谷の回顧展を開催してくれないだろうか・・・
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小杉放庵も『秋果童子』を描いていた。こちらに背を向け、葡萄をもぐ少年の幸せそうな顔。小杉の物語性の高い作品がとても好きだ。


他にも多くの作品を見た。来週までの会期だが、これは静かに楽しめる良い展覧会だった。行ける方には、行くことを勧めたい。

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コメント
私は、午後の3時くらいだったと思いますが、早朝の一番客でなくても、四捨五入すると、独り占めでした。
空いてますなぁ。
でも、空いている美術館は、好き勝手な距離から見る事ができるので好きです。
それに、ここは対向面の距離がかなりあるし。

松柏美術館で購入した徳岡神泉のポスターが邪魔だったので、荷物をコインロッカーに入れたら、帰りは、一度、外に出て再入場して、取り出しになってしまいました。前は中から回れたような気がするが・・・
ここでは、1年半ほど前、杉本健吉展を見ました。この時も、前日に、松柏美術館で上村松園展を見ました。
2007/02/04(日) 21:22 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
鼎さん こんばんは
あ、今回通路鎖されてましたね。私も思いました。そういう意味であの建物は失敗じゃないかと常々思っております。

杉本健吉よかったですね、わたしは摩耶夫人像を見学する人々を写生する絵に惹かれました。東大寺が可愛い・・・
2007/02/04(日) 22:19 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さんこんにちは。
美術館や博物館などになかなか足を運べない私ですが
遊行さんのすてきなエッセイのおかげで少しだけ
「鑑賞できたな気分」を味わえます。楽しいなぁv
そして↓の節分のお話。
とってもユーモラスな感じが織り込まれていて、
行事を大切にされているさらりとした表現が
すてきなのです。
>「今日は夜遊びに出たらアカン」とネコ共に言い聞かせ、
全部戸締り。
この一文がとっても好き。
優しさとなんともいえない可愛さとユーモアが!!
「アカン」がいいですねーとても人肌を感じるのです。
2007/02/05(月) 10:09 | URL | ろこ #-[ 編集]
ろこさん こんにちは
ちょっとでも喜んでいただけたらわたしも嬉しいです。
うちのわがままなネコ共は結局一匹外に出たので、締め切りました。翌朝自業自得のくせにえらいフクレてましたよ。
2007/02/05(月) 10:57 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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