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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

伝説のツワモノ渋谷金王丸展

たばこと塩の博物館から渋谷文学館へ向かう。ハチ公バスで渋谷区役所から文学館前までだからとても楽。これで100円なのは助かる。
ここへは三度目。奥野健男、折口信夫、と特別展を楽しんでいる。
今回は『伝説のつわもの・渋谷金王丸』展。
向かいに國學院大學があるからか、民俗学的な内容の展覧会で、とても興味深かった。
img762.jpg


渋谷の地の豪族・渋谷氏に生まれたという伝承のある金王丸。こんのうまる、というのが正しい。
彼の名は幸若や平治物語に見えるが、稗史に出ても正史に出ない、伝説のつわものなのだった。
江戸時代にはポピュラーな人だったらしく、国芳らの浮世絵にも描かれている。
平治物語と言うことは源平合戦の前哨戦からの登場だが、幸若では『鎌田』にその名が出ている。こういう伝説のキャラは各地に足跡が残るもので、展示された資料から見ると、実にあちこちに出没している。
しかもかれは途中で変名したらしく、土佐坊昌俊がその後身だと言う物語もあるのだ。
土佐坊昌俊と言えば堀川夜討に現れる、義経襲撃の首謀者である。
その芝居の中で、義経から昔と立場が変わり云々と諭されるシーンもある。つまり土佐坊と義経は昔何らかの関わりがあるということになる。
前身・金王丸は義経の父・義朝の家臣だったらしく、常盤御前が三人の幼子を連れて山中を彷徨するのを助けたという話になっている。
幸若の『堀川夜討』でも、「実ニ此ノ者十九ノ年、未だ金王丸ト有りシとき」と過去が書かれている。
しかし乳児の牛若丸は実に物覚えがいい。
平宗清の額のほくろを覚えていたとか、色々なことを言うのだ。
(全て芝居の中でだが)
幸若『鎌田』は知らぬが、歌舞伎だと思い当たる話も多い。
ところで幸若舞曲は大学の頃学んでいたが(その成立とか)久しぶりに調べると、この金王丸と縁の深い『堀川夜討』と、去年二月のバーク・コレクションに現れた屏風絵『武文』(能)とは成立下限年が同じだと知った。
1523年、そんな頃。『武文』の感想についてはこちら。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-388.html
幸若は武人の壮絶な最期を描くものが多い。能より人気が高い頃もあったようだ。
伝説は各地に伝播してゆく。安居院の唱聞師・・・語ることが鎮魂になり、語る者は自伝のように語ることもあるので、その地で没すれば、漂泊の芸能者は己が語った物語の<その人>として葬られる。
それで各地に誰それの墓が生まれるのだった。
三弥井書店あたりの出版物にそうした研究書がたくさんある。(筆者を見ると学生の気分になる・・・)

先に平治物語に、と書いたが上記バーク・コレクションにも平治物語の断簡があり、別な断簡が大和文華館にあることにも触れているが、その大和文華館の平治物語の若武者が金王丸だそうだ。びっくり。
一人振り向く彼がそれ。img763.jpg

どこで何を見るかわかったものではないから、こうしてあちこち動かないとアカンのだ、と実感。


金王丸の守り本尊の写真があった。藤沢の善然寺の金の胎内佛がそれ。ちょっと怖いような感じがする。鈴鹿にも足跡を残し、浜松で自害したと言う説もある。
藤沢にしろ鈴鹿にしろ中世の物語の舞台に往々にして選ばれる地。
信州上田市にもまた。


ところでこちらは国芳の浮世絵。konnoumaru2.jpg

他にも國貞の『仏御前扇軍』の芝居絵に金王丸は渋谷土佐二郎正俊、と記されている。
土佐二郎とかいうトリの種類もあったっけ・・・
吉川英治『新平家物語』ちげぐさの巻にも常盤御前や牛若丸らを陰ながら守る姿があるが、歳月過ぎる間に、再会したときは討手になっていたと言う・・・

結局その生涯はよくわからなかったのだが、伝説の中のつわものとして、なかなか興味深いキャラだったように思う。
見に来てよかった。


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コメント
相変わらずマイナーなところもきちんと回られていますね/笑。
渋谷の文学館は記憶から離れてしまった僕、今思い出した。
町田にも文学館ができました、今度行きたいです。
さて近代建築好きの遊行さん、稲葉なおとという人の書かれた「近代名建築で食事でも」はいかが。
立教大学のカキフライとか,旧岩崎邸庭園の白玉ぜんざいとかおもしろい。
2200円で建築と食事をした気分。
2007/02/21(水) 10:19 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんにちは
文学館好きなんです、わたし。←文学ヲタ。
稲葉さんの本は『近代名建築に泊まる』を持ってます。
丸の内の銀行協会や▲井倶楽部などでもお食事いただいたりしましたけど、次の目標は一橋大学です、オホホ。
2007/02/21(水) 10:43 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
あぁ、我が母校よ、というエリアに、何故関西から、マニアな人が訪ねるか?と思いつつ、出かける場所が山のようにあるのだとも。
近くに金王神社があって、誰かすぐ王に点を入れて、落書きするんです。今はどうなっていることやら。
一度、渋谷広尾方面歩いてみます。
2007/02/21(水) 13:39 | URL | あべまつ #-[ 編集]
あべまつさん こんにちは
その神社もこの金王丸ゆかりだそうです。地名などにしか名が残らないけれど、江戸時代の人々の感性が伝わってくるような感じですね。桜も有名だったようです。
ヲタはどこなと出歩くもんですヨ。
2007/02/21(水) 16:34 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
イナバさん関連で
稲葉なおとさん関連で、こんなエッセイを発見!
文体もテーマもまったく別でしたが、
これはこれで、読みごたえ有り!
でした。
http://www.momotown.net/designer/inaba.html
2007/03/26(月) 11:29 | URL | 旅行良好 #-[ 編集]
旅行良好さん こんにちは
モモタウン津山のタウン情報サイトさんなんですね。
稲葉なおとさんとB’Zの稲葉さんが従兄弟とは・・・
そうなんですかー。
わたしは近代建築ヲタなのでなおとさんの本のファンです。
残念ながら資生堂の個展に行き損ねたのが、今も口惜しいところです。
ところで津山は一度行きました。ご飯がおいしかったです。お魚大好き・・・
2007/03/26(月) 11:51 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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