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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

国華余芳 明治の古美術調査

市ヶ谷に下りるのは一年ぶり。去年の今頃ここの山脇ギャラリーに日本のサーカス・見世物チラシを見に来ていた。今回はお札と切手の博物館へ行く。独立行政法人。国立印刷局博物館と言うらしい。
大阪には小銭の造幣局があるが、都内には札を作る機関がある。博物館の常設展示自体はそうそう変わるものではないので、軽く見て回る。
小さい子供が興味を持ちそうな作りにしてあるので、こういうとき手元に子供がいる人が羨ましい。
今回わたしが見に来たのは『国華余芳の誕生 明治における古美術調査の旅』展。
img770.jpg

『国華』と聞けばすぐに、明治以来の古美術雑誌を思い出す。てっきりそちら方面の回顧展または資料展かと思って、防衛庁のお膝元までやって来たのだ。
しかし実際には違った。あちらは明治22年岡倉天心らの手で「夫レ美術ハ国ノ精華ナリ」という理念の下で発行され続けた雑誌であり、こちらは東京新聞によると、
明治12年に印刷局一行が行った古美術調査の旅とその成果をとりまとめた多色石版図集『国華余芳』の魅力に迫る特別展です。本展では、『国華余芳』の美術的・技術的側面、そしてそれがどのように役立ったのかという機能的側面から印刷局による文化財調査の意義を解明します。
というものなのだ。サイトではもっと詳しく書かれている。
以下必要事項。
『国華余芳』とは、旅先で観覧した文化財や山川風景を選りすぐった図集・写真帖です。なかでも特筆すべきは、多色石版印刷で精巧に再現された正倉院御物や伊勢神宮神宝で、カラー写真の技術がない当時、写実的な『国華余芳』は美術品図集の先駆けとなりました。
お雇い外国人キヨッソーネと日本人技術者たちとの交流もここに見えて、とても面白かった。キヨッソーネは紙幣を作るのに技術指導したイタリア人で、この人の集めた浮世絵展などの展覧会が、知る限り過去二度ばかりあった。

この『国華余芳』の凄いところは多色石版印刷というところなのだ。渋谷文学館で見たポスター(冒頭の図版)に惹かれて、わたしはここまで来ている。
あの図版をもう一度見ると「アレレ」なことがある。欠落している部分に気づく。現在では修復された姿しか我々は見ない。その前の状態での姿を描写しているのだ。
これは凄いことなのだった。

調査ツアーは明治12年5月1日に大手町出発の9月19日までの142日間。局長得能良介を隊長にキヨッソーネ、カメラマン、通訳、科学班の者らで構成された調査隊は日光、伊勢、奈良、諏訪などを回り、陵墓や博物館も訪問し、武具・仏具・古文書などを調査しては、模写や撮影を続けた。
その精華がこの『国華余芳』となったのだ。
それ以前は明治5年の壬申検査と呼ばれる調査があり、なんとか政府も日本の古美術の海外流出を止めようとしていたが、どうもあんまりうまくいかなかったようだ。
(尤もそれで「百年の眠りから醒めた」と冠されるステキな里帰り展などが見れるのだが)
関係ないが壬申の乱から丁度1200年の年だったのだ、その調査は。

『国華余芳』の冒頭文がなかなか面白い。少し写してみた。旧漢字と旧かなにカナなのだが読みにくいし打ちにくいので、ここではかなで通す。ついでに句読も入れる。
「夫れ峰嶺の峨々たるを仰ぎては懐抱を高尚にし、江河の滔々たるに臨みて、勉強の念を発起す、是れ自然の理なり、況や書画器具の類、古人精神の寓する所、一たび之と相接すれば、膝を交えて其指授を受けるが如し、観感の際・・・・・」23行X21文字が最後まで句読点なしなので、ちょいと疲れる。

『国華余芳』は神社仏閣の写真集と、文物の石版画の二つに分かれている。
img771.jpg

焼失前の金閣。セピア色なので金がどこにあるのかよくわからないが、これが義満の金閣なのだった。

img772.jpg

佇まいの変わらない法隆寺。
わたしは古写真を見るのが好きなので、それだけでもこの展覧会に来た甲斐を感じる。

次に画集。にほんの技術の高さをまざまざと感じる石版画集。
正倉院の御物から『碧地金銀絵箱』img773.jpg

写真ではなく石版画なのだから、やっぱりすごい。

冒頭にあげた『平螺鈿背円鏡』 小さな楕円は外れたパーツ。
img774.jpg

参考として、現在の写真もあげよう。
img775.jpg


他にも色々出ていて、これらが無料展示されているのにも感心した。
いや実に全く。

最後に一枚現代の石版画の図版を挙げよう。
この展覧会のためにその実演されていた技師さんからのプレゼント。
ありがとうございます♪
img776.jpg


展覧会は3/4まで。古美術や石版画に関心のある方は市ヶ谷へどうぞ。
http://www.npb.go.jp/ja/museum/event.html
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コメント
サイトを見たけど「よくある質問」に「切手は売っていますか」に「販売していません」の一言だけ、そっけない。
珍しい切手とか販売すればいいのにと思いますがー。
市ヶ谷ですか、僕は明日その近くの佐藤美術館に行く予定。
またチケットがあるのですよー。
2007/02/22(木) 22:15 | URL | oki #-[ 編集]
遊行さんこんばんはv
古い写真の法隆寺、いいですね。
春の奈良、いいだろうなぁ。行きたいなぁ。
遊行さん、会津八一はお好きですか。

『奈良坂の石の仏の頤に小雨流るる春は来にけり』

遊行さん、すてきな春を巡ってください。
2007/02/22(木) 23:11 | URL | ろこ #-[ 編集]
☆okiさん こんにちは
佐藤では中島千波の教室の人たちの作品ですか。
以前小布施で中島美術館に行きましたよ。
市ヶ谷駅の川沿いに釣堀があるのにはびっくりしました。


☆ろこさん こんにちは
3/10にはお水取り見に行きます。
そこから関西の春が始まります。
秋艸道人会津八一・・・いいですねぇ。句碑めぐりも楽しいです。
2007/02/23(金) 09:15 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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