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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

海をこえた出会い

府中市美術館に初めて行った。京王府中駅からちゅうバスと言うコミュニティバスに乗る。100円なので嬉しいが、ぎゅう詰め。30分に一本だからこうなるのか。
公園の中に美術館があるが、周辺住民の憩いの場みたいな感じでけっこうだ。
『海を越えた出会い 洋画と洋風画』。
以前からここに来たかったが、遠いのでなかなか踏ん切りがつかなかったのだ。しかし来た甲斐のある展覧会だった。
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チラシには郡山美術館所蔵のウォーターハウスの女がいた。
彼女に誘惑されてのこのこ出てきたのだが、彼女だけではなかった、わたしを捉まえたのは。

洋風画の時代として、<異国としての中国>と<西洋との出会い>とコンセプトを分けられた作品が並ぶ。皆江戸時代。司馬江漢と亜欧堂田善が多い。
洋風画と言うのは建築で言えば擬洋風にあたるだろう。
正直言うと変なのだが、その<変>さが先人の努力なのだな。
こうした積み重ねがあるから・・・と言いながら、やっぱりビミョーだ。

チラシにあるのは『円窓唐美人』だが、同じ江漢の『王昭君』の方がわたしは好きだ。はかないような微笑を浮かべていて、松に寄りかかりながら琵琶を抱いている。

びっくりしたのが亜欧堂の世界地図。1810年の地図。なかなか正確なのだが、何法に基づいているのかちょっとわからない。しかし立派な地図だった。
この美術館で以前亜欧堂の展覧会が開かれたとき、それで初めて彼を知ったのだ。文化頃の活躍期の絵師らしいが、なかなか面白い作品が多い。
『海浜アイヌ図』 座る女がなにやら今風のおねえさんなのも面白かった。

安田雷洲『丁未地震』 逃げ惑う人々を銅版で描いているが、ちょっとこの図を見てスウェーデンボルグの霊界煉獄界を思い出したり、ウィリアム・ブレイクを思ったりした。

江漢『馬入川富士遠望図』 向うの富士山と手前の小鳥との遠近感が面白い。なにかパラドックスのようで。

いよいよご維新を迎え、洋画の時代へ。
五つのコンセプトがある。
『外国人の見た日本』 ワーグマンやビゴーの作品がある。
ビゴーはわたしの近所・伊丹市美術館にたくさん所蔵されているので、親しみがある。
ここに描かれている人々は全て<外国人の目から見た>明治の日本人なのである。
傘を背負い三味線を弾く女、托鉢する人、西洋人の旦那についてそのスケッチを見守る女中(オヤオヤやんきー座りしてる)、日清戦争の風刺画もある。

『東西の風景 バルビゾン派と日本の画家たち』
五百城文哉『小金井風景』 描かれた橋は小金井橋らしい。古写真による裏づけがある。桜と川と橋。
なんでもかつては小金井は日本のバルビゾンと呼ばれていたそうな。
(池袋モンパルナスと同様の言いかもしれないが)

『伝統の継承』
カバネル、ローランスと言ったアカデミックな外国人画家。
明治初期の洋画家・鹿子木や不折、芳翠らの重く、そして物語を感じさせる作品が集められている。しかしながら、「もっと光を」と言いたい気になるのも確かなのだ。

カバネル『エステル女王』img784.jpg

王冠も顔立ちもきれいだ。カバネルは数年前の『万国博覧会の時代』展でもステキな女神があった。
思えば今の日本は光を呼び入れた印象派の作品を大多数の人が愛し、こうした重いアカデミックな絵は好まれなくなっている。
わたしも描かれた内容がロマンチックだから惹かれているのに過ぎない。

ローランス『オリエントの皇后』
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ビザンチン風の装いがステキだ。
絵画の技法がどうのと言うことになれば、古臭いのだろうが、そこに魅力があるのも、不思議な話だった。

不折『八重の潮路』 美しい男が眠るそばにワニが寄り添っている。
不折は日本神話や中国の故事を絵画化した作品が多いので、これも多分そこからだろう。
男とワニと言えば、山幸彦と豊玉姫の神話を思い出す。
どうもそんな気がする。古事記の中に「八重の潮路」という文があったかどうか、ちょっと今思い出せないのだが。
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『光を求めて』 いよいよコラン以来の外光派のコーナーが来た。
チラシにあるピサロ『エラニーの農園』。1885年。先のローランスの絵より20年も前の作品なのだ。見るだけで開放された明るい気分になる。

コラン『フロレアル』 草の上に寝転ぶ裸婦。この構図は人気があるのか、わりと多く見てきた。女の表情にも惹かれる。たおやかにやさしい顔。
こんにちは、気持ちよさそうですね 
そう話しかけてもおかしくないかもしれない。
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『田園恋愛詩』 以前この絵を使ったチラシを得た。今も大事にしているし、その展覧会に行きたかったが、行けなかった。新潟は遠かった。
この絵が府中市の所蔵とは知らなかった。それだけで嬉しい。
ダフニスとクロエのような二人。

チラシにある太田喜二郎『ベルギー風景』を見て一言「モネしてる」と呟いてしまった。モネでよかった、マネなら・・・

それにしてもリュクサンブール公園は絵になる場所なのだと思う。
以前与謝野晶子が描いたものも見た。そして児島虎次郎も描いていた。
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この噴水が魅力的なのだろう。それらを見て、いつも思うことは「行きたいよー」これだった。

最後のコーナーに来た。
『青木繁とラファエル前派』 わたしは青木に惹かれて洋画を見るようになったので、とても嬉しかった。

そしてウォーターハウス『フローラ』img783.jpg

水仙を摘む女。ピンクの衣裳が彼女の身にあっている。森のずっと向うに白い一団が歩く。物語の背景はわからない。
しかし彼女に会えて、ただただ嬉しかった。

青木と恋人の福田たねとの『逝く春』 琴を弾く女、足元には月琴がある。孔雀の羽、薔薇・・・文字を書くだけでも浪漫を感じる。
散らばる本は源氏物語だろうか。みをつくし、うつせみ 日本語の美を示す文字たち。
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青木と森田恒友『森の夕』 ラファエル前派と言うより別な派の影響を受けたような作品。紫色がそう感じさせるのか。
青木の点描による『海景』や日本武尊素描もあり、興味深く眺めた。
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『少女群舞』 油彩がエナメルのように煌いていた。これは近年収蔵された東近美の『輪廻』と構図が似ている。あちらより大きな絵だが、本当にこのタイトルなのだろうか、と思った。
まるでステンドグラスかモザイクのように見えるが、青木が意図してそのような塗り方をしたとは思えない。
この貫入のような美は、作品の生命を脅かすと同時に、深い魅力をそこに齎している。

随分よいものを見た。
その足で常設展示と牛島憲之記念室に向かった。
牛島のシュールな風景画が好きになったのはここ数年の話だ。
なんとなく描かれたフォルムはヘモグロビンのようだと思う。ぐにっと曲がっている。
ぶつかっても痛くないだろう。
画家の歩くスナップ写真がある。「え・・・」と思った。
現実の風景なのだろうか。こんな場所が在るのか。
まるで牛島憲之の描く風景画のようにしか、見えなかった。

現実帰還。
意外なことに歌舞伎の情景を絵巻に残していた。
金山平三が多く残しているが、やはり他にも描く人はいた。
墨絵で洒脱な線が舞台を髣髴とさせる。
切られ与三郎が膝を組み、、すし屋の権太は桶を小脇に抱え、、尺八を背にしたのはエーと・・・あっ御所五郎蔵!、片肌脱いだ弁天小僧、お祭佐七が灯りで手紙を読む、そばやでほっかむりのままは時次郎、しかし次がわからない。櫛巻きの女が三味線を弾いているのだ。これだけではやはりわからなかった。

3/4までの展覧会。次は『動物絵画の百年』・・・悩むね、わたしも。

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コメント
なかなかこの美術館もがんばっているでしょ。
現代美術が苦手という遊行さんも、パネルに画家の言葉が書いてある趣向なら満足でしょ。
今回の企画展示は府中がいつも常設で出している絵画をほとんどそっくりもっていって、亜欧堂田善なんかを付け加えたものー府中のコレクションのよさがわかりましたね。
ところでアンケート答えて絵葉書いただきましたか?
初めてだと遠く感じるものですが、武蔵小金井を結ぶバスに乗った方が早いですよ-30分に一本はつらいですよね。
2007/02/24(土) 22:48 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんにちは
それが常設展示室は時間を考えてパスしたのです。
牛島だけは見ました。
あのバスは親戚に行くときにも使うバスでした。
あまりに遠いので悩んでいます。
2007/02/25(日) 04:22 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
青木
こんにちは。

『青木繁とラファエル前派』 これだけでも観に行く価値
あると思いつつ、まだ行けてません。
「次」はどーしても行かねばなりませんし。。。

私も青木繁大好きです。
2007/02/25(日) 09:03 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんにちは
>「次」はどーしても行かねばなりませんし。。。
動物画ですね、あれは行きたいですが、okiさんのアドバイスに従って小金井からバスに乗るほうがいいかもしれません。
府中からはビミョーです。

青木には十代の頃からときめき続けています。ラファエル前派に目が開いたのも青木の導きと思ってます♪
2007/02/25(日) 12:37 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さんこんばんは。
お返事が遅れてしまい申し訳ありません。
TBありがとうございました。

「海をこえた」ということで、
所蔵の東西のコレクションを上手く見せた良い展覧会だったと思います。
ただウォーターハウスはちょっと良く分からない点もありました…。
もう少しまとめて拝見したいです。

府中市美へは東府中より徒歩は如何でしょう。(私はいつも徒歩です。)
歩道も整備されていますし、20分もかかりません。
お時間があれば…。
2007/03/02(金) 20:33 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんばんは
>ウォーターハウスは・・・まとめて拝見したいです
もうそれは本当にそう思いますよ、Takさん、lapisさん、千露さん、私・・・とウォーターハウスを深く愛する人々の間ではただただそれが悲願なんですよ。

東府中から徒歩・・・いい感じですね、それも。地図で調べてみます。
2007/03/02(金) 21:59 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
いつも拝見しています。継続して日記凄いです。私も努力しないと・・・。ここのところ寒くなってきたので風邪などに気をつけて下さい。またよらせて頂きます。
2008/11/10(月) 15:08 | URL | 明雄 #-[ 編集]
☆明雄さん こんばんは
ありがとうございます。
毎日なんとなく続いています。
きちんと書けているかは別問題としても。

秋の楽しみを味わう前に冬になりそうです。
紅葉狩り本番になって欲しいです。
2008/11/10(月) 21:17 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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