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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

挿絵―清方・まさを・しげる

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加藤まさを「佐保媛」

野間記念館では主に少女倶楽部で昭和初期に活躍した加藤まさをと須藤重の展覧会があり、鎌倉の清方記念館では明治大正期の清方の挿絵と口絵の展覧会が行われている。

清方は『文芸倶楽部』での仕事がメインに展示され、野間では雑誌の原画展覧会『誌上の光彩』シリーズとして、叙情画のまさをとしげるが選ばれていた。
加藤まさをは童謡『月の沙漠』の作詞者として、千葉の御宿にも記念館がある。

 月の沙漠をはるばると 旅の駱駝が行きました
 
 金の鞍には銀の瓶 銀の鞍には金の瓶


叙情画だけでなく、文にも秀でた人だった。
国書刊行会から復刻出版された『消えゆく虹』『遠い薔薇』といったせつない少女小説は読むほどに哀しくなる。

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まさお「誰から」

ややメランコリックな影を帯びた顔立ちの少女が、色合いの綺麗な銘仙を着ていたりする。見たことのある人もいるように思う。
一方須藤重は目鼻立ちのはっきりした端正な少女や娘を描き、胡粉や金粉を刷いた独特の煌くような色彩を彼女たちにまとわせた。

展覧会には主に昭和初期の『少女倶楽部』の口絵などが並んでいた。
一枚物で、物語のワンシーンやふとした情景を描いている。
『嵐の夜』『われは海の子』『晴れ着』『秋夜曲』『カンナ咲く頃』
・・・タイトルを並べるとそれぞれのイメージが浮かび上がる。
静かで美しい叙情画がそこにはある。
『安寿と厨子王』『義経を迎える静』『巡礼お鶴』『月姫』『海の女神』・・・物語が自ずからそこに現れるだろう。
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しげる「名月」

こちらはまさを・しげるの物語絵。
講談社の絵本シリーズにも二人は麗筆を振るっていた。
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ところが残念ながら、この展覧会に現れた画像が殆どない。
そこでわたしの持つコレクションから挙げた。

一方、清方の出発点は実父の主催するやまと新聞のカット絵や挿絵からだった。それがあまりに人気で、超多忙のために具合が悪くなったのだ。それで本絵に絞ったのだが、晩年は『卓上藝術』と称して、絵巻や色紙の形で、かつて愛した芝居や物語をさらさらと絵画化した。
回帰した、と言ってもいい。

清方の魅力は決してタブローだけにとどまらない。卓上藝術、随筆、といくつもの道がある。
そのうちの一つを少しでも伝えたい。
ここにあるのは展覧会に現れた文藝倶楽部の仕事から。
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コスモス。大正二年だからまだ顔立ちも後の清方美人とは違い、ややふっくらしている。

清方の少女。
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双六は昔の子供だけではなく、大人にとっても楽しいゲームだった。
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艶かしい女だと思う。大正半ば頃から清方の描く女が変わってくる。
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最後にしげるの『月姫』
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きらきら煌いて、月の光のかけらがこちらにまで降りかかるような気がする。

挿絵・口絵の愉しみを知るわたしは幸せだと思う。
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コメント
そうです。
そして遊行さんの文は私にいろいろな世界にかいま触れる
きらきらした魔法の粉をかけてくれるのです。
あんな双六いいですね。欲しいなぁ。
2007/02/27(火) 22:15 | URL | ろこ #-[ 編集]
この「佐保媛」はどこか西洋のフローラやプリマヴェーラを思わせます。初めて見た作品ですが、すごく素敵ですね。
佐保媛は春の女神ですが、秋の女神立田姫は夢二が描いたものが有名ですね。こちらは古の大和の美女というよりもモダニズム和風美人(変な表現ですみません)な女神だと思います。

最後の「月姫」はどこかで見たことのある作品だと思ったのですが、私の持っている『宿命の女』(松浦暢)に掲載されているモノクロ図版と酷似しているのです。図版のキャプションは(作者不詳)となっています。この本に掲載されている図版はほとんどがラファエル前派の作品であり、図版の女性の顔立ちも外人風なので、もしかすると別の作品なのかもしれませんが、モノクロ図版を見て気になっていた作品なので、こちらでカラーの絵を見ることができてとてもうれしいです。
2007/02/27(火) 22:18 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
☆ろこさん こんばんは
やっぱり大正ロマンはキラキラ煌いてますね。
夜の美しさを感じるのはこうした作品からでした。
双六、いい感じでした。
むかしはこんな一流の画家も、機嫌よく楽しい企画に乗っていたのです。わたしも欲しいわぁ・・・
(人生ゲームも大好きなわたしです)


☆千露さん こんばんは
>「佐保媛」はどこか西洋のフローラやプリマヴェーラを
私もそう思います。とても綺麗でした。春の歓びの実感があります。夢二は和風モダンも素敵ですネ、いつか夢二も特集しよう・・・
>『宿命の女』
20年前に出版されたとき、手に入れられませんでした・・・
絵の構図、もしかすると参考にしたのかもしれません。
2007/02/27(火) 23:33 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
少しふっくらとした清方美人も良いですね!
明治大正期の小説には、豪華は口絵がついており、現在の本よりも余程豪華です。しかも描いているのが一流の画家とくれば、言うこと無しです。
普通の絵よりも挿絵は見る機会が少ないので、貴重な展覧会だと思いました。
2007/02/28(水) 20:07 | URL | lapis #e8.b9ePc[ 編集]
lapisさん こんにちは
明治末から大正にかけてややふっくらした美人が流行ったようです。可愛いですね、清方ふっくら美人さん。

昔の本の豪華さはそれだけで美術品ですね。
挿絵は消えてしまうものが多いので、なんとか今後もこうした展覧会が見たいです。
2007/03/01(木) 08:42 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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