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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

近世 都の工芸

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さすが京都だと息を呑むような展覧会を見た。
『近世 都の工芸』京都文化博物館の展覧会。
あんまりに良い工芸品ばかり見たので、クラクラしてしまった。
これだけすばらしい工芸品が一堂に会するのは、実は珍しいことではないか。
文化の極みに行き着いた頃の日本の美が、ここにある。
長いな、一言でいい。日本文化の極限の美。
技巧に技巧を重ねたすばらしい世界。
光琳、乾山、仁清、名を書くだけでときめいてくる。

プロローグ京・職人と商人の町—描かれた職人
—職人尽絵や洛中洛外図から、当時の生き生きとした職人像を窺う。
桃山の革新
—高台寺蒔絵や南蛮漆器など桃山時代に花開いた華麗な工芸品の数々を紹介。
古典の復興と雅の意匠
—古典に基づく王朝文化の復興の気風が漂った江戸時代前期の風雅な工芸品を紹介。
コラム諸芸と工芸
—能や花、茶道、香道などの諸芸との関わりの中で育まれてきた近世の工芸品を紹介。
琳派の成立とその展開
—尾形光琳・乾山をはじめ、華やかで新しい感覚の意匠が出揃う江戸時代中期の工芸品を紹介。
復古と創造
—明末、清初の文人趣味をはじめとするさまざまな復古や、あらたな創造がみられた江戸時代後期の工芸品を紹介。
エピローグ 都の工芸と評判
—国内外の人が、都の職人の様子について記した史料等から、都の工芸の様子や評判を窺う。


このように7つのコンセプトに分かれて展示されているが、何もかもが見事で、見ていて楽しくて仕方なかった。
早く次が見たいと想う気持ちと、見終わるのが惜しい気持ちとが、鬩ぎあう。久しぶりにそんな感情の湧く展覧会だった。
とにかく好きなものだらけ。

まずプロローグから
ここにいきなり初見の洛中洛外図があった。
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人物の描きようも私好み。福岡市博物館所蔵。
はきはきときれいな女たち、img830.jpg

メリハリのある町並み。着物の柄も煌びやか。狩野孝信の作。
いい、実にいい。キャラのきれいさに嬉しくなった。
暖簾の柄、てんびんの魚篭の魚たち、のんびりした犬・・・
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まだまだ全てを見た、と言うことはないなぁ。
こんないいのが初見なのだ。

次は職人尽絵、これはいくつか知ってるものもあった。
佐倉の歴博から。img831.jpg

こちらはこのように絵画なのだが、この文化博物館には京の町の様子を、可愛い人形とジオラマで再現していて、それがまたとても楽しいのだ。
人間の世の中には、色んな仕事があるものだ。
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『毛吹草』には地域ごとの名産品を書くページがあり、実物とパネル展示があった。
西陣 厚板、安居院 畳縁、釜座 鉄唐金鋳物、八条 浅瓜・・・このように。

桃山の革新
桃山時代の華やかさは障壁画と蒔絵漆器類に見て取れる。
一事が万事派手好みで、こういうものを見ると、カネは使ってなんぼだという実感が湧く。

南蛮漆器、キャビネット。趣味からは少し離れているが、このツメツメに詰め込まれた絢爛豪華さ!侘び寂がハナにつくぜという太閤さんのキモチがわかるな?
おお、キリシタン関係だ。隠れではなく、許可されていた頃の遺物。
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梅田の次の中津駅のそばに毎年5月と11月しか開館しない南蛮文化館、ここに久しぶりに行きたくなった。

綺麗な小袖や、その小袖を貼り付けた小袖屏風もある。
わたしは誰が袖屏風が好きなので、嬉しい。
桃山の小袖もいいが、実は寛文小袖が特に好きなのだが。

それから嵯峨人形の犬。img833.jpg

このわんころべえは京博友の会のカードの犬。改めてこの人形が桃山時代の製作だと気づいた。わんころべえと言うより、碗頃兵衛がいいかもしれない。

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夕顔文釘隠は細見のもので、これもまた好きだ。
大体が釘隠などに惹かれるのだ。
それから中之町で出土した三彩や織部たちの欠片など。今、東京の出光美術館では「志野と織部」が開催されているが、そこにもこれらが出張しているようだった。

古典の復興と雅の意匠
桂離宮などから様々な意匠の釘隠、引き手などが来ていた。
以前一度だけ桂離宮に出かけている。なんとも言えず良い空間だった。
後水尾天皇と縁のあるものたちはみな、綺麗で愛らしい。
ブルーノ・タウトは桂離宮の造形を絶賛したが、細部を語ったかどうか。
バウハウスの思想と、これら小さきものの装飾性とは必ずしも一致しないのだが。
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クリックしてください。
これらの釘隠の美は本当に<みやび>で<きれい>だ。
やはりわたしは豪奢・繊細どちらにしろ<きれい>で<可愛い>ものが好きだ。
この仁清の『色絵鱗波文茶碗』の色合いの見事さ!
清水焼の基本色以外使っていないのに、なんと豪奢であることか。
どきどきした。img836.jpg

中に白釉、外に緑釉を重ね掛けする手法を『掛け切り手』という。見事だとしか言いようがない。

同じく仁清の手による色絵釘隠は、京博の年会案内の表紙などにも使われることが多い名品である。
掌に載せてそれぞれを見比べたくなるようだ。

ところでこちらが寛文小袖。片側だけに大きく構図が生きている。
全体の均一化より、こうした明らかな方が私は好ましい。
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『住吉蒔絵硯箱』 コレハコレという決まりが古典にはある。松に波に鳥居だけではわからない、と言われればその通りなのだが、太鼓橋が現れた瞬間、これはイヤでも応でも『住吉』なのだった。
月に芒なら『武蔵野』だし、女をおんぶする公達なら『芥川』、箒と巻物なら『寒山拾得』なのだ。

コラム 諸芸と工芸
能楽、華道、茶道、香道・・・・・・
このうち香道なのだが、この展覧会の前に京都国立博物館で、原口さんと言う方から新規に寄贈された志野流の香道具の名品を見た。
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クリックしてください。
源氏香の印など少し学んだ。・・・難しいな。覚えるのに時間が要る。
蘭奢待の包みもあった。どきっとする。
そういえば私は白檀が好きだ。花では梔子がよく、香水ではヘリオトロープがいい。
それから何故か硝煙のにおい・・・
志野流の袋の紐の括り方にも目を瞠った。
菖蒲、橘、桜 などの花の形に結ばれている。本当に奥が深い・・・・・・
京博に寄贈された原口さんの諸道具のうち、ほかに目を惹かれたのは、清朝の七宝袖香炉だった。
袖の中につける香炉はジャイロスコープ式で、倒れることはない。青と緑の絡まりあう見事な唐草文様だった。
わたしは茶道も華道も香道も、実際に体験して身につけることより、外側からそれを眺めていたいのだった。

ところで室町時代頃に成立し、江戸時代前期に人気のあった説経節のうち、『をぐり』の小栗判官が諸芸を身につけているという件がある。
小栗は三条高倉の大納言家の坊ちゃんだが(偶然ながら、その三条高倉の地に、この京都文化博物館が建てられている)当時の貴族の子弟の教養として<諸芸>を身につけていたらしい。諸芸には料理も含まれている。横山家に小栗が勝手に婿入りしたとき、彼は芸の披露を求められる。

話を元に戻し、展示物のことを少し。
池坊の花瓶。アゲハチョウが止まってる。とても可愛い。わたしは自分の女紋がアゲハチョウなのでか、とても蝶が好きだ。実際に昆虫館で、チョウチョの飛ぶのをじーっと眺めてシアワセになる。
だから蝶の造形品にはいつも甘い目を向ける。

琳派の成立とその展開
今回もまた雁金屋兄弟の名作を大いに味わえた。
来年の今頃、この文化博物館では大掛かりな光琳と乾山の展覧会が予定されている。楽しいなぁ。

冒頭に挙げたチラシのうちから『流水図乱箱』 がわには白菊が並んでいる。光琳のセンスにときめくばかりだ。見込みの流水図はたらしこみはたらしこみなのだが、見ようによってはクリムト的な様相を呈している。

『刈田鶴蒔絵硯箱』 img832-1.jpg

斬新なデザインだと感じる。大胆と言うかなんというか。
見込みには蝶が飛ぶ。
モダンな鶴たち。これらの鶴を見ると、加山又造が琳派の後継者だと言う実感が強く湧く。

『槙雀蒔絵硯箱』永田友治 江戸時代の職人・永田氏と昭和の名工・松田権六はきっとお友達だ。
この雀の愛らしさを見ると、それを信ずる。
槙の木か。槙の木は我が家の門をかばうように延びている。松なら ♪見越しの松という風情だが、見越しの槙の我が家なのだった。

乾山の透彫反鉢、全種類を見たい、と常々思っている。
とにかくわたしは乾山が一番好きだ。楽ならノンコウ、近代なら楠部彌弌、少し前なら塚本快示、朝鮮なら11世紀の高麗青磁、中国なら曜変または油滴天目茶碗、磁器なら色鍋島・・・
ああ・・・乾山写しのものでいいから、手元に入らないだろうか。
今回は紫陽花柄の鉢。可愛くて仕方ない。
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おとどしの暮れか、東博の表慶館で見た清水焼の『色絵六角段重』があった。嬉しい。あのときも可愛いと思っていたが、やっぱり変わることなく可愛い。扱いは大変だろうが、ここにお惣菜を少しずつ入れて、機嫌よく開いてみたい。そうすればいただきながら嬉しくて、歌うかもしれない。(これこれ)

復古と創造
明末から清朝初期の中国趣味、文人趣味、先達に倣った作品などが流行りだしたそうだ。
穎川、木米、道八らが台頭してくる。好きですよ、彼らの作品。

『交趾釉』で青銅器風な作品がある。奥田穎川。
字が出ないので諦める。img842.jpg

それにしても青銅器も大好きなのだが、なんとなく数字の<741>の並びを見ると、この形に見えて仕方がない。

『銹絵雪笹文手鉢』道八 これは乾山のそれの倣いなのだが、乾山のを既に見知っているから思うのだが、やっぱり道八は道八らしい作になっているなーと感じる。ファンだから二次創作しましたが、原作から離れてオリジナルになりました、という感じ。
道八の作品は親しみやすい。

エテコはあんまり好かぬのだが、道八のこのエテは可愛い。
エテで可愛いと思うのは、森狙仙の絵と中国の丸顔の奴らくらいだが、この置物は岩合光昭さんの『スノーモンキー』もびっくりのムクムクした愛らしさがある。もっと言えばマルコのアメデオみたいだ。

蝶が好きだというと、必ずいいことが待っている。
『蜻蛉蝶蒔絵螺鈿料紙箱・硯箱』 蝶と蜻蛉が飛び交っている???!箱書きには応挙の下絵、とあるが定かではないにしろ、嬉しくて仕方ない。 三岸好太郎のシュールな絵画でも蝶が飛び交っているのがあるが、そんな喜びがここにもある。嬉しくて嬉しくて仕方がない。うう、いいものだー。

長刀鉾の金具もたくさん揃っていた。『鉄線に虫尽くし文』 テッセンの花も図像としてよく好まれている。
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こうした金具や、十二神将像の肩喰や胴喰、兜などにつくデザインは何故こんなにも愛らしいのだろう。

エピローグ 都の工芸と評判
京雀のほか、毛吹草などからも選ばれて、パネル展示されている京の町・通りなど。
この日の朝、北野天満宮門前の粟餅屋・澤屋に寄ったが、その澤屋もこの本に掲載されているのだ。京都は「百年くらい続いた店では老舗とは言わない」とよく言うが、こんな店があることを思えば納得もゆく。これらの本は今で言えばタウンガイドなのだ。
それで思い出した。
大坂に面白いガイドブックがあったそうだ。諸国から来た商人たちのために「良質のお宿・良質の食べ物屋・良質のショップをこの一冊で!」という内容のものを、旅籠組合が出していたそうだ。組合、とは言わなかったろうが同業者でそんなネットワークを作っていたのだ。
たいへん面白いし、役立つ情報だったろう。
ダメ店は載せてもらえなかったそうだから。

書類などからのぞく事柄も多い。節季払いとか誓文払いとか、口銭の事情とか色々。
文化八年の進物便覧では、京都ブランドの人気度なども見える。

イゃ--ホンマにようけ、色んなん見せてもらいましたワ。
何もかもが面白かった・・・入れ替えはないけれど、もう一度行こうかなと言う気分が湧いている。今月末まで三条高倉の京都文化博物館で。
恒例の映画上映、18日は見たかった『武士道残酷物語』だし、来週行こうかどうか思案中。
とりあえず、古美術好きな方には完全に勧めたい展覧会でした。
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コメント
はぁ~~すばらしい~~
こんばんは。
今日、新日曜美術館の展覧会紹介で、出てきたのです。
おぉ~~と唸っておりました。
記事を拝見して、ますますお尻がむずむずです。
京都から、トキオに来てくれないかしら。
ウフィッツィから、ダビンチが来るのだから、
願いが届かぬ事もないでしょう。
工芸好きには、たまりませんね。ふぅ~~~素晴らしい。
仁清のお茶碗は、五島のお茶碗名品展で、見ました。
たらし込みと、三角模様のデザインに驚きました。
2007/03/11(日) 21:04 | URL | あべまつ #-[ 編集]
あべまつさん こんばんは
いやまったく、すばらしい展覧会でした。
仁清のお茶碗、五島に出張してましたか!それはよかったです。
まったくもう・・・「駄目」が一つもないのですよ。
選ぶ側の見識にも感心しました。
うん、ホンマにエエ展覧会でした。
NHK見ました、夜にですが、(朝は「喝!」みているのです)
私は佐倉の家具がみたいです。
2007/03/11(日) 21:50 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
怠け癖
が、ついたかも。
これで、4週続けてお出かけなしです。
で、何をやっているかというと・・・
あたらしいPC、・・・おっと、某外資系メーカーのCM風に言えばPCじゃありません。あのCM、札束ゲイツが怒っているそうですが、・・・立ち上げて遊んでいます。

佐倉の家具は遊行さんの好みだと思いましたよ。
2007/03/11(日) 22:09 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
鼎さん こんにちは
りんごさんですね、黄金のりんご。
わたしはそちらは無縁なのでよくわからないのですが、時々うらやましくなります。ゲイツに踊らされるのがくやしいもんで。

佐倉の家具は納入されているお屋敷などで時々見かけてました。
大正モダニズムなところがいい感じです。
2007/03/12(月) 08:49 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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