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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

椿の花

つばき。
万葉集の頃から椿は歌にも歌われている。

  巨勢山のつらつら椿つらつらに 
      見つつ偲ばな巨勢の春野を  


椿は古代において<海石榴>とも書かれた。海・石榴なら海のザクロ、海石・榴なら何になるのか。
この字面のイメージからゆくと、ツバキは赤色がメインのようでもある。
実際赤い椿とはあまり書かず、椿と言えば赤色の花を思い出す。
しかし白椿の美は夙に知られている。

椿の時期は長いので、雪の中に咲く赤い花から春の日差しにゆれる花まで、様々なシーンで椿が咲き零れている。

日本画洋画など取り混ぜて、ただただ好きな椿を展開したいと思う。

鍋島の椿。

たぶん、いちばん愛している。

森田草介の絵は、女も花も、物音から遠く離れている。<静寂>と言う言葉を絵画にすると、彼の作品になる。
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再び洋画の椿。img900-1.jpg

黒田悦子の椿はひどく蠱惑的に佇んでいる。

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山口華楊の椿にはメジロがいる。蜜を吸うのではなく、たぶん花を愛でに来ている。自分の顔より濃い色の葉陰にかくれて。

木としての椿を見る。
白木蓮がそばにあるから、淋しくもない。
鳥もこんなに遊びに来てくれる。
荒木十畝の椿。img900-3.jpg


いつも愛するのが赤ばかりと言うこともない。
躑躅もそうだが、わたしは一つの花に異なる色の散ったものにもときめいている。五色椿を籠に入れよう。
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堀文子の椿は白亳寺のそれだろうか。

先日大和文華館でこの羊遊斎の茶入れを称えた。
掌に包み込めたら幸せだろうと思うような、椿。
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何年前か、初めて茶道資料館へ行ったのは椿の文様が入った陶磁器や茶道具を見るためだった。
そこでこの乾山の硯箱を見たのだ。
白椿の清楚な美に今も心惹かれている。
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板谷波山の遺作。img903.jpg

遺作だからと言うのではないにしても、なぜこの椿はこんなにも静かでいられるのだろうか。

わたしが最初に見た魯山人の器はこの椿文茶碗だった。
遠近感のためにこんな風に見えているだろうと思いきや、会場で実物を見て圧倒された。たいへんな大鉢である。茶碗とはいえまい。
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魯山人は雲錦文もよいが、この椿文のシンプルさが好ましい。

古人の美意識は工芸品に名残をとどめている。
提重は野遊びから生まれた。丁寧な蒔絵。わたしは江戸東博にある螺鈿のそれにも惹かれている。
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わたしのお雛様はガラスの中に端座されている。
ガラスに囲まれているから、なんとなく安心している。
けれどガラスごと箱に収められているので、風景は殺風景だ。
だから私はこの絵でガラスを包む。
そうすればきっとお雛様たちは椿の夢に揺らいでいられる。
IMGP1423.jpg


形だけで言えばこの椿が一番心に沿う。
IMGP1449.jpg


村上勉や永田萌の椿もここに挙げたかったが、照れているのか、出てきてくれなかった。仕方がないので、わたしの心の中だけで愛でよう。
そしてこちらは近藤ようこの椿。
『骨笛』から。img904.jpg

'90年、八尾西武で『ASUKA』で当時連載中の作品数本をパネルなどで再現する展覧会があった。既に近藤ようこのファンだったわたしは喜んで出かけた。
『水鏡綺譚』からは『骨笛』が選ばれていて、造花の椿がいちめんに散っている情景を目の当たりにした。
「ああ」と思った。
説明は出来ない。
このときほかに神坂智子の『蒼のマハラジャ』が展示され、そこからインドのシタール音楽が流れていた。
誰がこの展覧会を企画し、構成したかは知らないが、すばらしい展覧会だと今でも思っている。

わたしが椿を愛するようになったのは、いつからか。
高校生か大学の頃、電車にはわたしと<その人>しかいなかった。
その人は真青なスカートをはいていた。
その真青な布には大小入り混じった椿が真青なままprintingされていた。凄い衝撃だった。
あれ以後二度とそんな青い椿を見ていない。
目から意識に入り込み、とうとうわたしの中に根を下ろして、椿は今も咲いている。

最後に花道家の安達瞳子さんのいけばなから。
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雑誌で見たとき、ただただときめいた。

梅、桜の間に椿はひっそりと、しかし確かな存在感を見せながら、咲き続けている。
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コメント
遊行七恵さん、こんばんは。
「椿の花」だけでこれだけの記事はじめてみましたよ。いいですね!
印象に残ったのが、黒田悦子さんの作品と乾山の硯箱、そして近藤ようこの椿です。
特に『骨笛』のこのカットは、サド侯爵の薔薇の花に埋もれた部屋を思い出して、ドキドキしてしまいますね。
2007/03/29(木) 23:33 | URL | sekisindho #7JPwz3bk[ 編集]
風邪引いてます←流感ではない
sekisindhoさん こんにちは
おお、わたしも特にそれらに惹かれてます。
西洋の薔薇、日本の椿・・・それらが集合する中心に人がいる。
ときめきますね。
椿は首ごとぼとりぼとりと落ちることが武士には不吉とされましたが、わたしにはそこが好ましい花です。
2007/03/30(金) 15:03 | URL | 遊行 #-[ 編集]
椿って様々な作品のモチーフにされていますね♪
一輪でも、たくさんでも絵になるというか・・・
バラの花とはまた違った華やかさを見せてくれますね。
花が落ちてもまだ地面で美しく咲いているのがいですね。
ちなみに、私が今使っているシャンプーも「TSUBAKI」です(笑)

2007/03/30(金) 21:28 | URL | tanuki #s.Y3apRk[ 編集]
tanukiさん こんにちは
>花が落ちてもまだ地面で美しく咲いているのがいですね
それが椿の魅力なんだろうなと思います。
地の花のようで。
そしてそれらが寄せ集まるとなにやら魔力的な力を見せてくれそうです。

わたし、椿オイル好きですよ(笑)
2007/03/31(土) 10:17 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
私の椿のイメージは、アンコ椿です。
祖父母が伊豆大島に住んでいたもので~
2007/03/31(土) 19:55 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
他の多くの花と異なり、冬に花をつける椿には不思議な力があるのでは?と感じます。
西洋では八重咲きの椿が主流のようですが、
私はやはり日本古来の一重咲きの椿のほうが好きです。

>海石榴
「海石榴市(つばいち)」の「海石榴」ですね。
古代ものの小説や漫画によく登場する地名ですが、
にぎやかな市場というイメージがぱっと思い浮かびます。
この時代から椿は日本人にとって親しいものだったのかもしれませんね。
2007/03/31(土) 21:07 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
☆一村雨さん こんばんは
♪三日遅れのたよりを乗せて~
子供の頃アンコをそのままアズキのアンコだと思い込んでいた私です。三日遅れのたよりも、古紙回収業者の都合だと・・・
基本的にわけのわからない間違いの解釈をすることが多いです。
今朝も「魚の目の医者」というのをみて、サカナの目を治療するお医者さんているのか・・・あっ、違う、魚眼レンズの医者なんかも!と思い込んでおりました。ウオノメとカナで書かないとわからない(涙)


☆千露さん こんばんは
そうですそうです、海石榴市のつばきですね。
奈良に万葉植物園と言うのがあり、万葉集に見える植物を集めて栽培しているのですが、古代の椿は女の人の髪に飾られもしたようです。ツヤツヤした緑の葉に、印象的な花。
古代の人々をどれほど惹きつけたことか・・・
思うだけでときめきます。
2007/03/31(土) 23:13 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
 子供の頃、椿は八手や南天と一緒に家の裏の方に植えられていて、なんだか辛気臭くて好きじゃありませんでしたが、結婚祝に母に真っ赤な藪椿の鉢を分けて貰ってから無視できない存在になりました。

 西洋に行って里帰りしたカメリア系は苦手です。 侘助、藪椿、雪椿・・・魯山人の椿文様鉢にあるような花びらが一体化したようなあまり花が大きく開かない楚々としたものが好きなのです。 

 ツバキはやはり艶葉木が語源でしょうね。 太陽好きのご先祖様は、鏡のような光り物信仰、常葉信仰があったようですし。
2007/04/02(月) 14:50 | URL | 山桜 #-[ 編集]
山桜さん こんにちは
>艶葉木が語源でしょうね
たしかにそれが強いと思います。

それで一つ恐ろしいような話もありましてね。
某所に伝わる物語なんですが、仏が九億九千九百九十九万九千九百九十九人を救う本願を立てて、血の池に沈む。
顔を出した仏は口に入った血を吐く。そこから花が咲く。
血吐きチバキ・・・ツバキが咲いたと言う説話です。
うなるばかりでした。

しかしそんなこと関係なしにツバキはやはりきれいです。
2007/04/02(月) 15:25 | URL | 遊行 #-[ 編集]
おおっ、確かに真っ赤なツバキにも、白地に吹き絞りのツバキにも、
斬首のごとき散り方と重なって、血吐きのイメージがありますね! 

鎌倉の鏑木清方記念美術館に行って来たばかりなので、
鏡花挿絵など、頭の中にいろんな妖しい情景が蘇ってしまいます。
う~ん、甘露甘露・・・エエッ?
2007/04/03(火) 10:57 | URL | 山桜 #-[ 編集]
山桜さん こんにちは
鎌倉のいかれたんですね。
あそこ大好きですよ。
今の挿絵展の初日の感想が以下です。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-757.html

今は後期になったところかしら。
いいですよねぇ。
鎌倉をじっくり味わいたいけれど、なかなか難しいわたしです。鎌倉彫のツバキも可愛い・・・
2007/04/03(火) 11:06 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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