FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ブルーノ・タウト展

ブルーノ・タウトと聞けば大抵の人は言う。
「桂離宮をほめた人でしょう」
少し詳しい人ならこうも言う。
「バウハウスの人で、熱海の日向邸が最近一般公開されましたね」
そしてもっと詳しい人はこう言うだろう。
「宇宙建築師、アルプス建築家です」
ブルーノ・タウトは建築家として、様々な側面を見せてくれたのだった。

月末まで外苑前のワタリウム美術館で展覧会が行われているが、それ以前は’94に京都国立近代美術館で『宇宙建築家ブルーノ・タウト』展が開催されたことくらいしか思い出せない。
当時既に多少の知識はあったので、機嫌よくタウトの展覧会に向かった。
img198.jpg

('94のチラシ)

それから暦も一回り以上動き、今またこうしてタウトの思想や残した仕事に再会している。
タウトが桂離宮を絶賛した言葉を抜粋しようかと思ったが、やめた。
しかし数年前自分が実際桂離宮の庭園に立ったとき、その文章が頭の中に流れ出していて、深い納得があった。
img199-4.jpg

バロックもゴシックもマニエリスムも好まなかったからこそ、タウトはこの桂離宮を絶賛し、陽明門をけなしたのだ。
わたしはブルーノ・タウトという一個の人間には関心も好意もあるが、その仕事には少しの距離を置いている。
彼は多分、伊東忠太も渡邊節も認めなかっただろうと思う。
わたしは、装飾過多の建造物に、深い愛着がある。

会場の中に色ガラスで構成されたグラスハウスの模型があった。
久しぶりに見る。
img199.jpg

これは頭頂が尖っているが、大阪南港にある『なにわの海の時空館』を思わせるものだ。
そして模型のそばに置かれたフルカラーの四角いアクリルガラスたちをみて、わたしは明るく笑ってしまった。
‘94の京都での展覧会では併設のカフェで、このガラスをイメージしたデザートが展覧会期限定で売り出されていたのだ。綺麗なガラスはゼリーに化り、水中を思わせるようなブルーソーダの中に沈んでいた。そのことを思い出して、私は嬉しくなったのだ。

ワタリウムではタウトの膨大な書簡や書いたものをまるで寺院の幡のようなものに延々と転写して、それをいくつも吊るしている。ただの装飾ではなく、読むべき資料なのである。
読む。
その行為が途中でいやになるほど、濃密で率直なタウトの言葉。
タウトはキッチュと言う言葉を<いかもの>と置き換える。自分が見てキッチュ・俗悪だと見做したものはすべて<イカモノ>である。
洋画家・和田三造の美意識を疑って、彼までもイカモノ扱いにするのは、面白いを通り越してしまうが。

タウトが日本滞在中に計画した仕事を見る。
その中に一つ、個人的に笑い出したくなったものがある。
生駒山の都市計画。
これはと関東の方にはわからないことなので簡単に記すが、今現在、生駒山はたいへんな問題で揺れている。土地ころがしで、議長が逮捕されたり業者が逮捕されたり、市が家宅捜索されたりしているのだ。それを知る関西人のわたしは、おかしくて仕方ないのだった。

一方アルプス建築。
img197.jpg

これは架空建築の画集である。幻想都市計画と言うべきか。
アルプス建築・星の系。1919年にタウトはこんな綺麗な図を描いていたのだ。
そして翌年にはこんな絵を。なるほど表現主義だ。

タウトは色彩とシンプルな形に拘ったが、装飾性を排除・・・とまでは言わないが、装飾に冷たい目を向けていたように思われる。
彼の作った集合住宅写真を見て、資料も何も考えずにいても、そう思う。
img199-1.jpg


ところでわたしが見た’94年の展覧会だが、それは平安遷都1200年記念展の一つで、同日わたしは都市計画の先輩に当たる『大唐長安展』、『蘇る平安京』そして『日本洋画壇三大巨匠』を見ていた。
今になって思えば、タウトの都市計画より、大唐長安や平安京の都市計画の方が私の好みに合うのだった。
img199-2.jpg

タウトの建てた集合建築。

石川淳の初期の小説『白描』にタウトをモデルとしたクラウス博士という故郷喪失者が現れる。
石川淳の精神の運動による視線だけでなく、戦前知識人の<ブルーノ・タウト>への視線が、そこで多少とも伝わってくるような描き方をされている。
長らく読んでいないが、久しぶりに読みたくなって来た。
それにしても、先日見たばかりの『ハンニバル・ライジング』のハンニバル少年の父・レクター氏と彼はよく似ている。

img199-3.jpg

日向邸。同じ熱海でもわたしは派手な起雲閣しか行っていない。

ワタリウムでの展覧会は、彼の書き残したもの・資料を多く見ることが出来て、たいへん有意義だった。

関連記事
スポンサーサイト



コメント
最終日
タウト展明日が最終日ですね。
フリーパスもあるし、大幅な展示替えがあるというので行こうか思案中。
カタログもできたそうですが五千円近い!
こりゃどうしましょ。
京都国立近代美術館の回顧展ではもっと良心的値段だったんでしょうねー。
2007/05/26(土) 22:26 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんばんは
高いですね~
しかし志賀直哉の『萬歴赤絵』の状況に陥っている私です。
今日、京博で凄いのを見ました。6万円の本の販売。クラクラしました。
京都のは2千円ほどでしたよ。
財布に厳しく生きる私です。
そうだ!
福田平八郎展のはがきが105円でした、初めて5円がついた・・・・!
2007/05/26(土) 23:08 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア