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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

田園の輝き 児島善三郎展

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児島善三郎を最初に知ったのは、絵よりも先に名の方だった。それも今東光の小説『春泥尼抄』から。
「・・・北の「紫園」へ行った。壁面に児島善三郎の五十号の静物の額縁がある下の椅子で、二人は対い合ってハイボールを飲んだ。「この絵、良いなあ」原田はしっとりした色調の椿の絵を見て呟いた。・・・ローケツ染めの和服を着たマダムが 「この絵、褒めてくれはりますの」と自分の鑑識眼を褒めてもらったように嬉しそうに言いながら・・・」
このことについては以前にも書いている。
五十年前の作品だが、何回読んでも飽きない。今から二十年ほど前にもらってからずっと。

作中で褒められていた児島の絵がどんなものかはわからないが、展覧会に並ぶ作品のいくつかは見知っていた。それもどちらかと言えば初期のもの。つまり<武蔵野を楽園に変え>る以前の作品。
わたしは絵葉書コレクターでもあるので、分類ファイルにタイトルを付けて絵葉書を管理している。
この絵の入るファイルのタイトルは「楽園で見た夢」。
間違いではないと思う。
これは近所の西宮大谷記念美術館にある。
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『南仏カーニュの小橋』

それから同じく西宮大谷にある裸婦図。肌の白さがちょっと透明度が高すぎて私には苦手な作品だ。わたしは満谷国四郎のような黄土色がかった和風な肌の裸婦にときめくのだった。
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だからこちらの独立美術の首途にと描かれた裸婦たちの方が好きだ。
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若い頃はともかく、’30年代に入ってからの児島の作品のよさにはクラクラした。
筆の動きが見えるような<大きな>作品が列ぶからか、なんというか心が広くなるような気持ちよさがある。好感度が増すばかりで、どれもこれも「すばらしい!」作品ばかりなのだ。

風景画の良さにも衝かれる。
緑色が本当にいい。鈴木信太郎の緑色も見事だと思ったが、児島の緑は肺の中に入って欲しいような緑なのだ。
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特に福岡市美術館に収蔵されている作品群の緑の良さには、ただただ深呼吸だ。
『代々木の原』『上高地』『春待つ田んぼ』・・・
あかん、好感度増すばかりやんか。
回顧展をみることで好きになる画家、それがここにもいた。

無論風景画だけがいいわけではない。静物画、特に花の絵の良さにも随分引き寄せられた。
二枚の菊の絵が並んでいるのだが、どちらも'42の作で、一枚は緑を背景にテラコッタの壷に色んな菊を差し込んだ派手な大きい絵、もう一枚は赤地に少しの菊。
色彩の美を存分に堪能できる作品だと思う。そして多分、評価は赤の絵の方が高いような気がする。

戦前・戦時下にあっても児島はどうしてこんなに見事な作品を生み出し続けることが出来たのだろう。
しかもこんなにもカラフルな作品群を・・・
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(A3チラシに使用された素敵な作品)

やがて平和な時代に入り、熱海の風景を多く描くようになる。
同じ独立派の林武の『熱海』を思い出したが、二人とも「自分の目で見て・自分の指で描いた」風景だと思い知らされる。
全く素晴らしい。林や児島の力強さにどきどきする。
そう、力業。これらの作品はなにもかもいい。
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いくらでも感嘆し、いくらでも喜ぶばかりだ。
こんなにいい展覧会の企画をたててくれた府中市美術館に感謝するだけだ。
激しい雷雨の中、来た甲斐があるやないですか。
どんなに書いても追いつかない気がする。
自分の感想や感情や感覚が、これらの作品群に完全に<負けた>のは確かだ。
とにかく見てほしい。見ないとこの味わいの深さは伝わらない。

最後にこの展覧会で一番強く撃たれた作品を紹介する。
『秋はれ』 空の色、黄色い地、木々の色・・・他の絵を見て回っていても、何度もここへ戻っては眺め返す。細胞質にまで浸透するようなすばらしい作品だと思う。
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展覧会は7/16まで。
今のところ、わたしにとっての今年の洋画のベスト展になっている。
そこから外れたとしてもこの絵は胸に刻まれ続けているだろう。
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コメント
今年の洋画のベストですか、僕も早く行かなくちゃ。
府中は最近ヒット展覧会が多いですね、動物絵画もホームページ見たらカタログ完売になっている、大勢お客さんがきたんでしょうね。
ちょっと地の利の悪い美術館が繁盛するのもいいことだ。
2007/06/26(火) 00:03 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんにちは
これは本当にいい展覧会でしたよ!なんていうか最近は忘れられているが日本洋画史を支え、興隆させた画家たちの回顧展をもっとすべきだと思いますね、そうすることで今また<再発見>になる。

動物絵画・・・はろるどさんによると神田では展覧会の最中に、既に本が高値で売買されていたそうです。
2007/06/26(火) 12:31 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
これから行ってきます。
今日の東京新聞に評が載っていて、「目の前の風景を見据えつつも、現実の生々しさは微塵も感じさせない」とありました。
今日中央線が高架化で大幅運休、ちょっと心配。
2007/06/30(土) 12:11 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんばんは
ご覧になった感想が楽しみです。
十年以前の私では、このよさがわからない画家だったろうと思います。
絵を見るのは、見る側にも色んな課題や要求が突きつけられ、それをクリアーしていかないとダメなのかもしれません。
本当に良かったです。
2007/06/30(土) 22:19 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
田園の輝き
最終日に行って来ました。色彩のエネルギーにくらくらしました。
この画家はもう少しすればもっともっと評価されるのではないでしょうか。
特に外国で。
2007/07/16(月) 22:20 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
とらさん こんばんは
この色彩感覚は本当にクラクラものです。
>特に外国で
ああ、なるほどわかるような気もします。
生前も、記事の冒頭に挙げたようになかなか人気だったようですが、
最近はやや忘れ去られているので、これからがまた楽しみになるかもしれませんね。
絵を見てこんなに明るい気分になったのは久しぶりでした。
2007/07/16(月) 23:11 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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