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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

美術に見る水のすがた

逸翁美術館の夏の展覧会は、毎年涼やかなものと決まっている。
今年は『美術に見る水のすがた』 和の心・夏の時間にふさわしい展覧会だった。
展示は常よりやや少ない感じがするが、それが却って良いように思う。
暑い盛りに数が多いと、それだけで暑苦しくなる。
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この美術館は、逸翁小林一三の雅俗山荘そのものを美術館にしている。
だから第一室というのは玄関入ってすぐの小間であり、第二室は吹き抜け空間の広間である。ここは本宅ではなく山荘なので、軽く明るい心持ちで、お招ばれしていると思うがいい。

鬼貫の一行句がある。
谷水や 石も歌よむ 山桜   おにつ羅
力強い筆致の一行の句。1718年の作句だが、句も良いがなにより書そのものがいい。
気合の入る力強い筆致。須田剋太ほどの激しさはないが、最初に展示されているだけに否応なく気合がみなぎってくる。ああ、いいものをみせてもらった。

書と言うのは無論墨で書く。その肥痩・濃淡により、形も思想も変わる。
小野通女の和歌懐紙がある。モノクロ画像だが挙げる。
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この書の良さは、実際目の当たりにしないと伝わらない。間の捉え方、墨の濃度、その字面、なんとも言えず良いものだった。心臓に直接届くような書だと思う。
歌の中身はせつなく色っぽいものだが、その書の方に惹かれる。
例えばこの文字を川の水面に浮かべたとする。
水に浮かび上がる文字の美に、思わずそれを掬いたくなる。
掬えば文字は崩れるのがわかってはいても。そんな良さがある。

応挙の淡彩を施した『嵐山春暁図』がいい。夏に桜を見ても心が華やぐこともないが、その白さ・松の薄い緑が広がる様を思うと、やはり応挙の絵はいいと気づく。
保津川の水の豊かさ・・・保津川くだりをしたときの爽快感が蘇ってきた・・・
チラシになった乾山の『銹絵染付流水文手桶水指』 一目で知れる乾山の個性を味わう。乾山の作陶の中でも水指はこの一点のみらしい。水の流れは呉州だからやや薄い。薄いことが水の流れを感じさせる。濃い色なら流れではなく留まるようにも見える。
茶色いのは杭らしい。時々はその杭に鷺なども止まるだろう。

『鴨川納涼図屏風』 狩野派の絵師の手によるものらしいと解説にあるが、丸顔のキャラたちがイキイキしていてとても楽しそうだ。みんな大体三頭身。
東石垣町の墨書きがある天水桶、その町は二階が座敷で客が遊んでいる。
街中には太平記読みもいるし、座頭らもいる。川の中ほどに床もしつらえてある。
矢場もあって、中には子供を客にしているのもある。からくり仕掛けの水橋とかね。
見世物小屋も出ていた。折の中のクマ、鬼娘の看板のある小屋の木戸には、出入りする客も見える。相撲を取ってる連中もいる。この暑いのに元気なことだ。
ああ、今年もなんとか床で遊びたい・・・!

応挙『鵜飼舟図』 これは本体の絵は墨絵で、並んで鵜飼いする鵜匠を描いているが、表装は描き表装で中廻しに水色の波濤を描いている。センスの良さを強く感じる。

芦雪『長春亀図』 絵の下に亀とエビがいるが、目は岩の上の雀たちにゆく。
三羽の雀、各自の表情がいい。mir179.jpg

まんなかの花はなんだろう?芦雪の動物たちにはしゃべり声があるような気がする。
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抱一『水月図』 これは先の応挙の鵜飼いと同様本体の絵は薄い墨絵で、描き表装が派手なのだ。烏瓜、変わり朝顔、露草・・・明るい夏の植物が咲き乱れ、夜の絵を囲んでいる。

田能村竹田『蟹図詩賛』 可愛いサワガニの奴らが123・・・45、6匹いる図。撫でてやりたいくらい愛らしい。この蟹なら穴に落ちても、クロポトキンが見たように、相互扶助があるかもしれない。 ところで全然関係ないが、田能村竹田は藩政改革の建白書が容れられず、それで家督を譲って文人画家になった、と聞いてはいたが、まさかこの名前ってそれを意味するペンネームだった?・・・わたしのぱそ、タノムラ・チクデンと入力すると田能村竹田ではなく<他の村逐電>と出たのだ・・・・・!
二葉亭四迷の例もあるしね。

明治になってからの是真『洋盞蛍図』 本当の色合いとは違うが、この画像が出てきた。
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グラスに蛍が止まる。なんとなく色っぽくて、そのくせ涼やか。(他の虫ならこうはいかないが)蛍と蝶にだけその特権が許されている。

ヴェネツィア縦縞ガラスレース鉢 言えばねじり祥瑞のガラス版な鉢で、逸翁はこれを茶会にも使用していたはずだ。そうした自在さが逸翁の持ち味だ。今も楽しませてもらっている。

片輪車蒔絵四方香合 小さくて可愛い香合で、蒔絵が煌いている。水につけて車輪の乾燥を防ぐ風俗の図像化が、蒔絵のきらめきで、まるで本当に陽に当たっているように見える。

古染付桃花流水文水指 桃花の梅と違った尖る花びらが可愛い。これは魯山人の箱書きを持っている。箱書きの文字はたいへん静かだった。
魯山人の大阪星岡茶寮は阪急沿線にあった。阪急の創始者逸翁と魯山人の間に交流があったのではないかと思うと、なんとなく楽しい。

松村景文は呉春の弟で四条派の絵師だが、この絵を見ると「琳派?」な感じがする。
六曲一双の『花鳥図屏風』 金地に群青の水面、鳥たちと白梅。雁や鴛鴦などがいる。たらし込みはないが、なんとなくそんなものを探してしまった。

つい先日大和文華館で見たばかりの乾山の竜田川にまたもや遭遇。
そうです、逸翁にもあるのです。乾山カンパニーが今もあるなら、わたしも買うかも・・・欲しい物だらけで、財布は空に・水屋は満杯になるオソレアリ。
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よく兄の光琳の方が天才で奔放で、と言うのを読むが、弟の派手さはどうなんだ?というツッコミをいれたくなる。弟の作品を見ると兄とは又ベクトルの違う派手さ・楽しさがあって、嬉しくなる。わたしはこの雁金屋兄弟は弟の方が好きなのよ。

他にも色々名品があった。硯箱で住吉・愛蓮家の周茂叔などを蒔絵や螺鈿にしたのを見た。
梨地が夜空のきらめきを思わせる八つ橋合子も見た。
根来塗に後補で水辺の景色を描いたものもあり、ヴァラエティに富んでいて楽しかった。

秋には逸翁美術館・開館50年記念展が開催されるので、そちらも大変楽しみだ。
一番近い美術館でこのように楽しませてもらい、ただただ感謝した。
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コメント
逸翁美術館って、初めて知りました。
東京でいえば、五島美術館か根津美術館と
いう感じでしょうか。
芦雪の雀と亀、かわいいですね。
花は薔薇でしょうか?
2007/07/30(月) 07:37 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
またしても
大和文華館に続き、行こうかなと迷っている逸翁美術館の記事、とってもありがたかったです。

芦雪の絵が出ているのですね。
う~む。
関西のミュージアムぐるっとパスを
つい先頃購入したので、何とか行けないものか思案します。
2007/07/30(月) 20:07 | URL | meme #z8Ev11P6[ 編集]
☆一村雨さん こんばんは
>五島美術館か根津美術館
そうです、五島慶太、根津嘉一郎は小林一三の茶友です。慶太はむしろ逸翁の弟分で、茶道だけでなく事業についても学んでいたそうです。
内容や規模などを言うと、畠山記念館が一番近いように感じますね。
逸翁美術館には畠山即翁による扁額の「即庵」もあります。
実際にお手前をなさる一村雨さんに、こちらの茶道具を楽しんでもらえたらなぁ、と思います。


☆memeさん こんばんは
ぐるぱす買われましたか。ぜひおいでください。
この池田には他に落語ミュージアムもあるのです。
(古典落語の舞台なのです)
ハーフティンバーの近代建築の空間に大和絵と茶道具が並べられている・・・
ミスマッチなようでいて、納得できる空間です。
わたしは茶道具と呉春は主にこちらで修行させてもらってます。
この近くには、天保年間から続くうどんの老舗もあり、なんとなく楽しい地です。
2007/07/30(月) 21:14 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
 小野通女の書、川面に浮かべて文字がほぐれて動き出す様が浮かびました。 七恵さん、さすが名文!

 花は最初玉浦椿?と思いましたが、葉と蕾は一村雨さんも仰るようにバラ科の匂いがします。 ハマナスかしら?

 お喋り雀たち、最高にカワイイ!
今、私の足許でもツンツン跳ねて遊んでいます。

 私は乾山は光琳とは違うことをやろう!と色々な美の可能性を探った末、最後まで満足出来なかった(光琳に勝ったと思えなかった)人ではないかな~と思っています。 今、七恵さんが「弟の方が好きなのよ」と言って下さったことで、彼も草葉の蔭で小躍りして喜んでいるのでは~^^

 私も茶道具としては乾山が好き。 美術品としては光琳かな~う~ん、でも作品によるかな~(ナンテ、自分どんだけ~?笑)
2007/07/31(火) 15:14 | URL | 山桜 #-[ 編集]
山桜さん こんばんは
小野のお通さんもええものを残してくれましたね。

あの花ねー、本当にわからなくて。
椿ぽいかなと思いつつ・・・
三羽の雀・・・『悪魔の手毬歌』を思い出す私です(笑)。

光琳の真似は誰も出来なかったけれど、乾山の作品の写しは現代に至るまで続いてますよね。
圧倒的な芸術家と職人の違いかな、とか思ったりします。

茶道具は大好きなのですが、実際の場に当たるのがニガテで・・・(反省)
2007/07/31(火) 22:10 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
大阪方面に20日頃行くような感じですが、この展覧会が終了した後で、残念です!
お子がいるので、電車乗り倒しツアーになりそうですが、東洋陶磁だけは行けるよう、頑張ります!
弟乾山の絵、ゆるくてのどかでかわいくて大好きです。
2007/08/01(水) 16:45 | URL | あべまつ #-[ 編集]
あべまつさん こんにちは
おお~~この猛暑地へおいでくださいますか。
阪神百貨店で22~28日まで鉄道模型フェアしてますよ。
それと関西は私鉄王国なので、行かれる地にもよりますがスルッと関西システムを使われることをおススメします。
ケーブルカーも乗れますしね。
お得なクーポンもありますから、一度スルッと関西のHPごらんなってくださいね。
2007/08/01(水) 18:40 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
今度はうどんを忘れない
お世話になっております
(ここの抹茶 結構濃厚で好もしい)
東京でも水絡みの展覧会やってますな
そちらもこちらも
間に合うかどうか微妙ですが
大阪開催の屏風展に絡めて
秋に伺うのならばなんとかなるかも
前回逸したうどん屋さんにも行きたい
(夏でも 生姜落とした
あったかいうどんも おいしそう)
柴田是真さんの玻璃杯(?)
飲むなら水がいいのかな
当方 喫するのは ほぼ麦酒ですが
これなら程よく冷やした透明なもの
どれもよさそう 
蛍観つつの一杯 夢ですな
それでは ご自愛ご健筆を
2007/08/01(水) 20:01 | URL | TADDY K. #fjJSDZ0o[ 編集]
TADDY K. さん こんばんは
夏のうどんはつるつるササメざるというのがありますが、咽喉越しもいいですよ、無論熱いのは時期問わずナイスです。

是真のグラス、雰囲気的に
葡萄の美酒 夜光の杯 飲まんと欲すれば 琵琶馬上に催す
そんな感じでした。

わたしはサイダーがいいです♪
炭酸大好き。

夏には夏の楽しみが、秋には秋の楽しみが待ってます。
とりあえず私も出かけなくては。
2007/08/01(水) 22:04 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
はじめまして。当方、応挙・芦雪の絵が特に好きな横浜人です。

こちらで逸翁美術館の情報を得まして、会期末ぎりぎりの昨日いってきました。結論から言って、行って甲斐のあるものでした。

応挙の2作品はどことなく一般の応挙のイメージから離れた幻想的な世界が現れているようで、新たな魅力を発見した気がしましたし、芦雪は相変わらずのかわいい、そして芸細な良品であったと思います。

また、これまであまり興味のなかった酒井包一の作品も風情があってよかったですし、これまたあまり興味をもてなかった松村景文についても、あの屏風を係員の人に頼んでケース内の明かりを消してもらったら、すっかり表情が変わり、こちらのほうがしっくりときて好きな作品に変身しました。(館の人たちが次々と現れて、みんな“照明おとしたほうがいいわー”と言っていたのがおかしかったです。)

このようなすばらしい経験をすることができるきっかけをいただいた遊行七恵さんに、大きな感謝を申し上げたいと思いましてコメントさせていただきました。ありがとうございました。
2007/08/13(月) 10:01 | URL | mya #OaBoOaWY[ 編集]
myaさん こんばんは
はじめまして。
逸翁美術館のコレクションを気に入っていただけたようで、わたしもとても嬉しいです。すばらしい作品があっても見る機会がないのは、とても残念ですから、こうして横浜からおいでになり、そして幸せな気分で作品を味わわれる・・・思うだけで嬉しいようなことです。
照明を落として作品を眺める・・・たいへん贅沢な経験をされたのですね、羨ましいです。
灯り一つで作品の顔が変わる、と言うのはたとえばブライス・コレクションの展示方法などでもそうですね。
なかなか味わえない喜びだと思います。

関西はやはり古美術が多く収蔵されています。また折りがあれば是非お越しください。そして楽しまれてくださいね。
2007/08/14(火) 21:29 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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