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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ペルシャ文明展

去年東京で開催されていたペルシャ文明展が大阪歴博に来ている。
十年以前は古代文明の遺宝が好きだった。古代史そのものが好きだったからだが、最近はそうではなくなっている。むしろ近代史がメイン。
これまで見てきた古代文明展を挙げようと思ったが、かなり多いのでやめる。
しかしチェックすると、このペルシャ文明を含む<オリエント文明>そのものの展覧会が少ないことに気づいた。岡山、池袋、横浜の三つの常設展示を持つ博物館の他には、ベルリン博物館などの総合展覧会で一部見たくらいだった。
他は今は亡き並河萬里の風景写真など。
ただこの展覧会で舞台となった場所の地図を眺めると、少女コミックの金字塔『王家の紋章』に現れる文明と民族と領土すべてが見えた。
アッシリアもヒッタイトも、あの作品のおかげでとてもなじみがある。
全く知らぬ文明ではなくなったのだ。
わたしはヒロイン・キャロルの友人の気持ちで、この文明展を見て回った。
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基本的に獅子と山羊をかたどったものが大変多いのに気づいた。
獅子は敵でもあり、憧れでもあるらしく(王権の象徴ともなりうる)、山羊は身近な動物だからか。
羊と牛もたいへん多い。
古代ペルシャの動物はこれら4種と猪、ガゼルがメインなのかもしれない。
チラシになったのは有翼獅子の黄金のリュトン。べろと歯が可愛い。
羊頭リュトンも多い。山羊も羊も牛もツノがあるので、その角の生え変わりに死と再生を見ていたのだろう。

今から三千年前の黄金のガゼル装飾杯が凄かった。
下から上に向かって↑4期に亙りガゼルの生涯を描いている。(打ち出しの技法)
母から乳を貰う仔ガゼル。生命の樹を食む若きガゼル。ガゼルの敵・猪の群。ガゼルの死骸を啄ばむ猛禽類。
「当時の死生観を表している」と解説プレートにあるが、東洋的な輪廻の思想はなく、死は死としてそこで終わっている。
遊牧民族と農耕民族の意識の違いが端的に表されているような気がした。

しかしそれにしても黄金が多い。
羊、獅子、山羊をかたどったものたち。(思わず聖衣か?と言いそうだ)←ヲタ。
この細工の繊細さにはただただ感心する。
mir189.jpg


土器もある。ここには幾何学文様と山羊の連続するパターンがある。どことなくアールデコ調にも見え、モダンでもある。

山羊装飾の鉢は灰皿状だが、立ち上がり足を天に向ける山羊のついた杯は、なにで貼り付けたのだ。ハンダはなかったはずだが。ああ、瀝青か。納得する。

王による獅子狩を線描した杯もある。これらが図像として綴られ、海を渡って日本に来て、龍村平蔵が復元するまで、どれほどの時間がかかったことか。
それを思うといくらでも眺めていたくなる。

ラピスラズリで作られた装身具もある。褪色したような色合いの貴石。
それより凄いのは紅玉髄20ケで作られた装身具。細かい文様が全てに入っている。
植物性の薬液で腐食されて刻むその技法は、インダス文明独自のものらしい。
大変見事だった。

意外と気に入ったのは、円筒印章。つまり円筒表面に細かい柄や文字が刻まれていて、それを粘土の上に転がすと、円周分の長さの四角い紋章になるのだ。
これは面白かった。

ライオン像の足の部分だけ残ったものがあった。巨大な爪。どんな大きさだろう。
猫と違い、出しっ放しの爪。実は柱頭の一部らしいが、どんな柱か・・・

ペルシャの宗教ゾロアスター教の神様アフラ・マズダの神像も多い。
レリーフ。
ソグド人もこの神様を信仰していた。拝火教。

石灰岩製のマスティフ犬の彫刻のリアルさにもびっくりした。殆ど雌獅子のようだ。マンガではこの犬は見たが、実物は知らない。
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ササン朝の切り子碗にはなじみがある。正倉院に収められているあれとそっくり。
同じ時代の文物だからだが、解説に笑った。
「ササン朝ペルシャの国際的ヒット商品」
いいなぁ、こういうの好き。
それをプレゼントしてくれたのはどこの国のヒトかは知りませんが、人気商品が日本にあるのも喜ばしい。
どうもササン朝になると鳩や猪のリアルな彫像などが出てくるらしい。猪はオトコマエだった。
かなり面白い展覧会だったが、こちらの方は紛争などがあるので機嫌よく出かけるというわけにはいかない。素晴らしい文明を恒久的に保存するためにも、この地に平和が訪れることを祈りたい。
大阪での展覧会は9/17まで。
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コメント
私も世紀末にはまる前は古代文明をこよなく愛していました。(今でも好きですが)
最初に行った展覧会も国立国際美術館で開催された「大英博物館展」です。
岡山のオリエント美術館へも何度も行きましたし、
池袋のオリエント博物館も行ったことがあります。

>『王家の紋章』
紀元前好きの母の影響で私も愛読しました。
私もこの作品のおかげで古代オリエント地図がすんなりと頭に入ってきます。
2007/08/05(日) 00:06 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
昔は、中近東の古代文明が大好きでしたが、いつの頃からか、日本の考古/古代史に移行しました。今は、ちょっと広げても、朝鮮・中国かな。関係あるしね。
それにしても、昨年、ペルシャ文明展 には、行っていない事が判明してしまいました。
都美より大阪歴博の方が見易いでしょうね。

科博のインカには行こうと思っています。
2007/08/05(日) 00:57 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
ペルシャ文明展
この展覧会は昨年の夏に観ました。記事は、http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/Children061.htm#06080
です。
そのころ米国ーイランの関係が最悪になってきていたので、ブログに余計なことを書きましたが、最近はすこし沈静化しているようですね。
2007/08/05(日) 10:20 | URL | とら #NLuYSg0A[ 編集]
☆千露さん こんにちは
岡山のオリエント博物館はたいへん良い収蔵品を見せてくれますよね。
だいぶ前の奈良シルクロード博で、オリエントの遺産を色々見ましたが、その後に岡山で「あっ」が多かったです。
壮大なコミックのおかげで、地図や歴史などが親しいものになるのは、とても嬉しい気分です。


☆鼎さん こんにちは
古代文明には限りないロマンと憧れがありますね。現代中国には関心がありませんが、古代中国の文物や歴史には深い関心が湧きます。
南米の文明も子供の頃からコミックなどで興味がありますが、今こちらに来ているナスカには悩まされ、来年神戸に来るインカにも悩まされます。


☆とらさん こんにちは
東京と大阪の間に1年の時間差が生じましたが、古代史の時間を思うと、1年なんてほんのわずかなものなのだと感じました。
とらさんの挙げられてた獅子爪と素焼きの壷、わたしも気に入ってます。
しかし円筒印章ほしいわ~~
作ろうかな、と思うくらいです。
2007/08/05(日) 10:45 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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