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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

巨匠と出会う名画 川村記念美術館展

佐倉にある川村記念美術館の名品が、兵庫県美術館に来ている。
夏休み企画として、毎日先着50名の方に特製シールをプレゼントと言うので、朝も早くから出かけた。
阪急王子公園から徒歩18分ということで、駅に着いたときギリギリ10時開館に間に合わないな、と思いながら歩く。
JR灘駅・阪神岩屋駅を越えて延々と炎天下を歩いて、たどりついたら9:55だった。
わたし、歩くの早いなぁ。
シールはチラシと同じ構成。mir200.jpg

川村コレクションが誇るレンブラントの『広つば帽をかぶった男』が出迎えてくれた。色の深み、男の眸の深さにわたしも微笑む。
何章かに分かれて展示されているが、アメリカンポツプアートなどにはあまり関心がないので、その辺りはよく見ていない。
気に入ったものだけ挙げてゆく。

モネ 睡蓮 チケットの半券になっている。しかし睡蓮の池の微妙な色合いはどうしても再現できない。
光、藻の絡み、花の影、そして。
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ところで<モネ>と打つとわたしのPCは<藻寝>と変換した。
ある意味、正しいかもしれない。

ルノワール 水浴する女 この絵を前にして、わたしは静かな幸せを感じる。ふくよかで柔らかな肌、骨を完全に覆う肉、健康そうな肌の色。
彼女の柔らかな茶色い髪よりは、色の薄そうな予感がする。(金色に近いかもしれない)、その腿を覆う白い布は真珠の輝きを見せている。
青色が忍ばされているので、まるで貝殻の内側のようだ。
ルノワールが好きな人には、対峙する間、ただただ楽しく嬉しい時間が流れる。
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ルノワール 黒褐色の髪の女 横顔が優しい。裸婦に心を惹かれているので彼女に意識がいかなかった。

ボナール 化粧室の裸婦 これは以前に佐倉で見た。ボナールの近代的な女たちが好きだ。フランス風な愛しあい方の後の行為かもしれないし、朝の支度かもしれない。
この化粧室の向うにはどんな服があるのだろう。
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ブールデル 果実 ポモラという女神をモチーフにしているという。手に果実を持っている。裸婦の身体の線は箆の跡目が示している。指の腹で撫でてみたくなった。

マティス 肘掛椅子の裸婦 マティスの制作のプロセスを見て以来、どの作品を見ても、「この完成品に至るまでの軌跡」ということを考えるようになった。どんな線も色彩も全て、マティスによって選び抜かれた完璧な線であり、色彩なのだ。
裸婦の背後にある紫の花を活けた花瓶。何の花かはわからない。紫陽花色をしている。絨毯の柄も素敵だ。かつてはぞんざいな絵だと思っていたが、理解することで深い憧れが生まれるようになった。
mir201-1.jpg

以前この絵葉書を川村で購入していたが、今改めて眺めれば、なぜか上部がカットされている。
あこがれの’20年代。ときめくような何かがある。

ピカソ シルヴェット ポニーテールの綺麗な娘。裸婦として描かれているが、これはピカソの想像によるそうだ。シルヴェットにはフィアンセがいて、彼が立会いの下でならとモデルを承諾した。ピカソは残念だったろう…
フランスにしかいないような娘、ジュリエット・グレコのようだ、と私は思った。
’50年代のフランス娘。mir202-1.jpg


シャガール ダビデ王の夢 竪琴の名手たるダビデ王は画面の右端にいる。中央には花嫁と花婿、左端にはサーカスの馬。赤と青が同居する作品で、違和感を覚えないのはシャガールくらいだ。まんなかが黄色だからかもしれない。
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赤・黄色・青。そうか、信号機は対立ではなく融和なのかもしれない。

藤田嗣治 アンナ・ド・ノアイユの肖像 mir200-2.jpg

ノアイユ夫人は顔をこちらに向けて立っている。何十年も昔の女だが、今もこんなひと、いる。服の着方も(肩の外し方も)、金色の靴もレースも、髪型も。
個人的にこんなタイプのご婦人を何人も知っている。亡くなった方もいて、なんとなく懐かしい。
フジタは施主の注文の多さに腹を立てたようで、実はこの絵は未完成らしいが、そうは思えなかった。背景の白。それがフジタの個性に見えるから、この絵はこれ以上手を加えることはない。

キスリング 姉妹 姉の服の柄を見ると、東欧風に思えた。妹はまだ幼い。せつない表情。憂愁が身にまといついている。笑っても次の瞬間には笑顔が消えてしまうような姉妹。姉はそれでもまだ目元にわずかながら「暮らしていこう」という意思がのぞくが、妹のほうは若いからと言うだけでなく、ひどく弱々しかった。
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マグリット 冒険の衣服 横たわる女はシスターの髪を隠すような布をつけている。それは随分長くて、足元まで延びている。彼女の中空には布のような亀が浮かんでいる。彼女は何故かその亀の足鰭を掴んでいる。
随分細い身体。くびれのない身体。身体の半分は布で隠されたままだった。

マン・レイ ニューヨーク 板を何枚もはりつけて斜めに立てかけると、マンハッタンの摩天楼のようだった。オブジェ。それを見てから隣のコーネルの箱に動いたが、ふと視線を戻すと、あの摩天楼がこちらに突き刺さるように見えた。
そしてその形は、摩天楼から顕微鏡に変身していた。

コーネル 無題(ピアノ) モーツァルトのピアノ・ソナタのオルゴールと、太鼓を叩く天使の像がセットされている。柔らかくやさしい音楽が流れ出す。コーネルの箱には心惹かれるものがある。オルゴールとして愛したいような箱だった。

コーネル 無題(ラ・ベラ〔パルミジャニーノ〕) タイトルどおりLa Bella(美しい)女の顔が箱の中にポスターのように貼られている。しかし絵は破れを見せ、箱自体も風化し始めている。置き忘れた・忘れられた・捨てられた・・・
朽ちたようなイメージが、しかしまだ生きている。

コーネル 海ホテル(砂の泉) 砂に半ば埋もれているガラスは、砂時計なのか。箱に閉じ込められた刻。時は流れているのか、時は止まっているのか。

モーリス・ルイス ギメル 大きなカンヴァスにアクリルで、薄い緑が塗られている。上部には微かなグラデーションがある。下部には隙間がある。離れて眺めると、緑色の峡谷のようだ。その渓谷を抜けると砂漠が待っているのかもしれない。

サイ・トゥオンブリー 無題 この'52の作品は銀鼠色の横長の画面に細い線が真っ直ぐ横に数本ひかれているだけ。
正直言うと、こういうのがニガテなのだ。わたしのアタマではこの抽象的概念が理解できないからだ。しかしこれには眼を留めた。つまり、和の美に近いものを感じたからだ。無題と言う以上見る側が何をどう見てもいいのだと解釈し、私はこの作品を「反物」としてみている。四十歳を越え五十前くらいの、艶かしさと上品さとを併せ持つ女の人に着せてみたいような。そんな眼でわたしはこの作品を見ている。

橋本関雪 琵琶行 日本画は3期に分かれて展示される。今回は琵琶行が出ていた。この下絵は京都の白沙村荘(橋本関雪の美術館)で見ていた。2期目に出る木蘭を知ったのは、白沙村荘で川村のチラシを貰ったときからだ。
この琵琶行はせつない物語の絵で、小船に乗る琵琶弾きの女の小指の爪だけが長いところに目がいった。琵琶を弾く事はないので知らないが、多分演奏者にとってそれは不可欠なのだろう。
さすがに中国を舞台にした物語絵の良さは、見る限り関雪がいちばんだ。

長谷川等伯 烏鷺図 今回、この絵を前にして長く心を遊ばせた。
鷺がいる。飛ぶ鷺もいれば止まる鷺もおり、憩う鷺もいる。静かな情景。静かで、そして和やかな空気。
心が広がり、潤うのを感じる。この鷺の遊ぶ情景でこんなに豊かな気持ちになるのは、他に高麗青磁のそれくらいしかない。
わたしの最愛の陶板。mir201.jpg

惜しいことに等伯の図像は手に入れられなかった。
カラスの方もわるくはなく、こちらは妙に愛らしいと思った。しかしあの鷺のいる情景の豊かさとは、描かれている心持ちが異なると思う。
この豊かな心持ちをどう伝えたらよいのだろう。東洋の思想、自然の中の生物、<なじむ><なごむ>と言った言葉が合うのかもしれない。
自雪舟五代長谷川法眼等伯の署名があるが、こんな穏やかな心持ちで等伯の作品に向かい合うのは、初めてだった。

展覧会は10/8まで。日本画はこれらが8/21まで・8/22-9/13、9/14-10/8の三期に分かれる。私は幸いなことにASA友の会会員なので、三期とも見れそうだ。次は関雪の木蘭と芦雪の牧童図が現れる。
追記: 2009年1月7日、Takさんが烏鷺図の画像を挙げられていた
こちらで見られる。とても嬉しい。
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コメント
遊行七恵さん、こんばんは。
私が密かに好きな画家の一人と言えばキスリングなのですが、ご紹介の姉妹の絵は初めて拝見しました。
色使いがとても好みですし、姉妹の表情に関する七恵さんの解説もまたいいですね。
「モンパルナスのキキ」を初めて観て以来のファンなのです。
2007/08/11(土) 23:11 | URL | sekisindho #7JPwz3bk[ 編集]
巡業中なんですね
川村、今工事中なので、全国巡業中なのですね。
今度は、今まで以上に大きい、ロスコ・ルームが
できるとのこと。

ピカソの「シルヴェット」大好きです。
婚約者の心境も分かります。彼女が有名なピカソの
モデルになったと光栄なことだと思うより、
あのピカソということで心配だったのでしょうね。
2007/08/12(日) 10:07 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
☆sekisindhoさん こんにちは
キスリングは生きてる間に大成功を収めた数少ないエコール・ド・パリの画家ですが、彼がキキを描いている頃は若くて、まだ貧しい時代でしたね。
マン・レイの写真などでも有名ですけど、キキはキスリングの作品が一番<わたしたちのキキ>のイメージに近いように思います。


☆一村雨さん こんにちは
そうですね、大改装で拡張するらしいですね。あそこに行くのも根性が要ります。80kmで走ってもまだつかない~~(送迎バスの中で青くなってました)
>あのピカソ
全く同感です。あの絵は顔・身体・両手と、三つが別な手による作品のようにも見えます。
2007/08/12(日) 12:44 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
いかなくちゃ
キスリング、いいですねぇ
こんなの初めて見ました。
あそこの美術館は駅から便利が悪いのが難点ですよね、今の時期、炎天下を歩く事になっちゃうし。
安藤さんの設計ですけど、お年寄りにはあまり親切な建物でもないし・・・・・・
いく度、いつもあの階段は「どうなのかなぁ」と思います。
でも、出品作品は素晴らしいみたい、わたしもきっといかなくちゃ
2007/08/12(日) 21:25 | URL | 紫 #-[ 編集]
紫さん こんばんは
いやまったく兵庫県美は遠いです。
わたしは阪急から行くのでクラクラですよ。openのゴッホ展のとき、お年寄りが階段からこぼれそうでした。

川村へは関西人はなかなか行けないので、これをチャンスになさってください。本当によいです。
2007/08/12(日) 23:00 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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