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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

金刀比羅宮 書院の美

金刀比羅宮 書院の美。
凄くいい展覧会だった。
本物とレプリカとで再構築された空間。金比羅さんの空気を持ってくることは完全には無理だが、これは成功していると思う。先走るが、菊の欄間のレプリカなど見事も見事。絵のレプリカはキャノンの仕事。えらいもんです。
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先行の皆さん方は七月に行かれてて、いい記事を沢山見たけれど、実際自分がこの空間に入ると冷静になれない。可愛い??とわめくばかりなり。
なんでこんなにええのかわからんくらい、素敵な空間。アタマの中ではエンドレスに√金比羅フネフネ追風に帆かけてシュラシュシュシュ--廻れば四国は讃州・・・と流れている。
入るといきなり屏風仕立ての岸岱の蘭陵王がいた。
これはなんとなく<いたずら小僧のお出迎え>的に見える。なんせアカンベーしてるようにしか見えぬのだ。
それで表書院・鶴の間の再現。丹頂鶴が色々おるのですが、中に一羽スカした奴がいて、これがちょっと気を引いた。芦は筆勢が力強くていい。墨絵では意図的に筆勢の強弱で表す何かがある。ここの引き手は縦長でよく見ると<金>の字がある。金比羅の金ですね。
(絵葉書の切手貼付欄にそれがある)mir214.jpg


この鶴の間はそんなにコーフンもしなかったが、次の虎の間があかん。こんな可愛いのは犯罪やないですか。虎の可愛さにキュー(拘束)ですよ、なんやのあの愛らしい丸々肥えたのどかな虎三たちは。ああーもう可愛いなんてもんやない。この展覧会が金比羅さんの書院の美を愛でるものだと言うことをスッカリ忘れ果てて、トラトラトラトラ・・・ラブ!でした。(以下、長く虎の感想文)
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チラシの水飲み虎の親子、チラシもいいが、実物はもっとずっといい。
鋭いおメメに可愛いベロ。仔虎のおしりの可愛さときたら、はなしにならない。後から抱き上げて噛まれてみたいくらい、愛らしい。応挙先生、わんことにゃんこ・・・いけねぇとらこだ・・・の愛らしさ、後世の人間をこんなに惑わしてええんですか。
この虎の間だけで延々と書いてしまいそうだ。
全部で八頭の虎がおるのだが、絵葉書になったのは五頭だけ。背中向けて見返るとらこはいない。どう見てもにゃんこが「頭撫でろ」をねだる仕種の奴もいないし、豹柄の寝てる奴もいない。江戸時代、豹はトラの雌だと思われていたらしい。まつげがなかなか長い。
わたしは寝る猫にいたずらをしてしまう。瞼をウニッと開き、口肉を持ち上げて牙を撫で、鼻を押さえる。すると大抵の猫は厭そうにぶんっと払うのだが、中には気の短い奴もいて、わたしの手を捉えるや、後ろ足で猫キックを繰り替えしつつ、噛みあげてくる。いたたたた、と言いながらわたしはなんとなく幸福を覚える。これは猫には悪いけれど、やめられない楽しみだ。
では絵葉書にもなった虎ちゃんたち。
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コンニチハ。わたしがそう呼びかけ「チチチチ」とすると、右の奴は間違いなく挨拶を返すと思う。応挙は無論この時代の人だから実物を見ず、古画を参照とし、自宅の猫をモデルに使ったから、ますます愛嬌がある。噛まれてもいい、撫でてみたい。
左のシナ作る猫・・・やのーて虎の牙の愛らしさにはくらくらする。手手のふとぶとしく、肉の締まったこと。ますます虎に溺れそうだ。
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シロちゃん。白虎。かつて宝塚ファミリーランドと言うすばらしい遊園地があり、動物園が併設されていた。そこには白い虎の一家がいた。シロリン・シロタンを始め、アルビノ一家は健やかに暮らしていた。今は一家離散した。白虎を見るとどうしてもそのことを―――思い出す。このシロちゃんは和紙の上で白い毛が毛羽立っているのを感じさせた。

さて寛政年間に完成した七賢図。これはどなたかの記事の中で、顔に墨を塗られる被害があったと言うのを教わり、どんな具合かと見たが、一人目の顔に掛かる墨(薄れてはいるが)なんとなくお稲荷さんの宝珠のような形に見えた。二人の童子がその後に続くが、顔を上げている少年の表情に「明日は」というものが見えたような気がする。何と言うか将来に対する希望のあるような顔つき。先を行く少年はそれを穏やかに視ている。
賢者たち、お気の毒にやはり墨が残っている。

ここから奥書院へ向かうことになる。再現された空間であっても、雰囲気が活きている。
通路の壁に写真がある。欄間が扇の連続形だった。雅なものだ。
さすがにそれは再現されていない。

菖蒲の間 応挙から半世紀後に岸岱が蝶を描いている。
群蝶図。mir213.jpg

レプリカとは言え見事なものだ。これは群狂う有様で、江戸時代に度々見られた<蝶合戦>のときのようなものにも見えた。わたしは蝶が好きなので嬉しく眺めた。この部屋に通されたとすると、わたしは一羽一羽蝶の様子を確かめただろう。

柳の間 鷺がいる。柔らかな鷺たち。こうした絵に接すると、岸岱の後の岸竹堂―西村五雲―山口華楊の動物画家の系譜が見えてくる。江戸も遠くではなくなるのだ。
白鷺は今も近所で見かけるが、やはりなんとはなしに優美に見える。その優美さはこの絵のように、静かで安寧な心持ちを齎してくれる。

春の間 ここには菊の欄間が再現されていた。細い巧妙な造りが再現されている。いい感じ。その裏へ廻ると・・・
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上段の間になる。欄間共有。若冲の花丸が延々と。これはたいへん楽しい。花々がきれいで可愛くて、イキイキしている。百花繚乱。この襖の引き手は菊をモチーフにしている。
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椿が好きなのでそれを探すと、また赤くて愛らしい椿がそこに咲いていた。どの花もみな嬉しくなるほど、みごと。大抵こうした花丸図は格天井の天井絵などに採用されているのを見るか、または歌舞伎の大道具で書院の優美な情景で見るかしかないから、嬉しい。
この部屋の本来の様子はこんな感じらしい。菊の欄間の下に百花が咲き乱れる。釘隠しはあいにく菊でもほかの花でもないようだった。

再び表書院に戻ることになる。
山水の間 ここは身分の高い方の間で、再現空間には花頭窓が見える。ライトアップしてくれているのがいい感じ。
チラシにここの写真がある。mir211-1.jpg

クリックするとその欄間がよくわかると思う。
七賢の間と山水の間の欄間は、一番格の高い欄間だった。やはりそれはそうだろう。

富士一の間 百年前の邨田丹陵の富士。今回は新幹線で東京へ出たのだが、富士山を見損ねたのでここで見る。
富士二の間 巻狩図が広がる。武士と馬と鹿だけの空間。背後を描かず襖の白を残したままの空間は、勢いをそのまま封じたように見えた。騒ぐ声も何もかもを。
巻狩りと言えば曽我兄弟の仇討ちだが、無論それを踏まえている。襖の端に明治壬寅三月丹陵先生作・・・源頼朝云々と書いたものがあった。

伝永徳の『富士山杉樹図屏風』は華やかで、剥落していようとなんだろうといい感じだった。もう二周ほどしてから地下へ降りた。
こちらは屏風や絵馬などがある。

元禄頃の『象頭山社頭並大祭行列図屏風』伝晴信 これが楽しい。基本的に風俗図が好きなので、見ていて楽しくて仕方ない。色んな商売もあり、溢れるほどの人間がいる。
お遍路さんも当然いるが、これでは<同行二人>どころの騒ぎではない。川で体洗う人もいる。沐浴?・・・もしかしたら単に暑いからかも。
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面白い絵馬が続く。
牡丹・孔雀図 鏑木梅渓 剥落して真孔雀が白孔雀になっている。
羅陵王 谷文晁 これは入り口の岸岱のそれとは違い、いかにも舞っている、と言う感じがある。朱色は褪色したが不思議に鮮やかに白色が残り、優美なものだった。
素尊斬蠎図 山口重春 スサノオが高天原から追放され、地上を旅する中、クシナダ姫の人身御供を阻止しようと、ヤマタノオロチを斃そうとする図。目を怒らせ足踏ん張って刀を抜こうとする。
駒迎図 為恭 公卿たちか、温和なムードがある。
高徳題十字図 菊池容斎 たかのり・十字を題す。桜の木は剥落しているがそこにあるのは確実だ。もしかすると最初からわざと桜を薄く描いたのかもしれない。児島高徳は明治に人気再燃したから、歴史画家の容斎も好んで描いたようだ。十字とは無論この言葉である。
『天勾践ヲ空シウスル勿レ 時ニ范蠡無キニシモ非ズ』
源為朝図 容斎 墨でササッと描いたような勢いがある。ひげが伸びていて着物だけの姿で弓を取る。これは流された後だな。
為朝護白川殿図 松本楓湖 この絵師も明治の歴史画家だからさすがに故事などに詳しい。こちらはひげもそり、甲冑を身につけて弓をとる姿。為朝は古今に秀でた強弓取。
堀河夜襲 小林永興 知らぬ画家だが名前からゆくと小林永洗の師匠辺りか。こちらも源平で、土佐坊が夜襲をかけてくるのを迎え撃つ義経たち。綺麗な女がいるが、これは静御前かも知れない。もう一人の女は長刀を持っているので、女武者だろう。綺麗な顔立ちの女たちと、沈痛な面立ちの武将と家来。
馬図 芳年 えっと思った。明治七年の横浜の商人が願主の絵馬。芳年とは思えぬほど愛らしい目の馬。こんな綺麗な目の馬は初めて見る。綺麗な顔の綺麗な馬。びっくりするほど綺麗な馬だった。(馬といえば競馬の馬たちに流行しているインフルエンザ、早くみんなよくなりますように)
海難絵馬もある。うーんリアルにナマナマシイ。でも天に御幣の雲が出ている。南無。

これら絵馬の縮図帳が出ていた。中にはここに出ていた剥落した孔雀や、羅陵王、他に捕鯨、飛ぶ鴛鴦、虎一家、溺れる女を救う(掬う?)、天狗に猪、象頭山(金文字)、嵐の船、緑色の蟹、怖い鷲(爪に掴むのは・・・)・・・
和船の模型もあり、細かく出来ている。装飾の透かしに扇形があったりするし。

そして昭和初期の平林春一の金比羅風俗図が二枚。茶店で一服する情景に駕籠かきもいるが、金比羅狗もいる。代参。第三の男ならぬ代参の犬。托鉢の虚無僧もいて、この<はしもと屋>は繁盛している茶店なのだった。甘酒が飲みたいよ。
また港に集う影のような和船たち。いいなぁ。
最後にドキッ。
金比羅狗の置物がある。カ・ワ・イ・イ----!!

・・・この金比羅展は、どきどきわくわくのままに終わった。
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コメント
こんばんは。作品が映える展示とはまさにこのことでしょうね。レプリカについては賛否両論ありそうですが、これほどの空間が実現されているのなら問題ありません。ただ出来れば群蝶図をもう少し近くで見たかったです…。

虎はどれも可愛かったですよね。目をくりくりさせて愛嬌を振りまいているようにも見ました。迫力では白い虎が一番でしょうか。

私も展示室を何度となく廻りました。
一方向でないところがまた良かったですよね。ついつい滞在時間の長くなってしまうような展覧会です。
2007/08/21(火) 21:24 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんにちは
本当に素敵な空間でした。レプリカであっても「書院の美」を満喫、という観点から私はOKですね。
でも出来たら群蝶のある間などは靴を脱いでの見学ならなーとか思いました。(あがりこみ)
楽しい展覧会でした。
2007/08/22(水) 13:39 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
羅陵王
こんにちは。
TBありがとうございました。

渾身のレポート堪能させていただきました。
力入りますよね。自然と。

羅陵王の絵馬がとても動きがあり
印象に残りました。地下の絵馬たち
あれ意外とスルーされがちですが
見応え充分でしたね!
2007/08/30(木) 13:42 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんばんは
久しぶりに気合の入る展覧会でした。
何より面白かったです。
絵馬は本当に面白かったです。
見所の多い展覧会でした。
年に何度もないような。
2007/08/30(木) 19:07 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんぴらさんの感想ようやくUPできました。
虎ちゃんたちも可愛かったし、花々も大変美しかったのですが、
私が一番心惹かれたのは『群蝶図』です。
長押に蝶が飛び交う様子は実に幻想的で、
いつまでもこの部屋にいたいという気分になりました。
若冲の燕も軽やかで愛らしく、これまで抱いていた若冲のイメージが少し変わったように感じます。
2008/01/11(金) 17:41 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
千露さん こんばんは
群蝶図、いいですよね。
基本的に私、ムシは苦手と言いつつも蝶とセミとトンボだけは大好きなんです。
特に蝶は好き好き好き♪
実物も絵画も工芸品も、みんな好きです。

>若冲のイメージ
トリオヤヂから花のおじさんくらいに・・・?
2008/01/13(日) 21:35 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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