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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

水と生きる  その中で

サントリー美術館の第二回展『水と生きる』の三期目に出かけた。
時々ここの会員になろうかと思うものの、首都圏在住なら展示換えの度に「うれしいな」だろうが、関西から遠足ではちょっと悩む。
現に出かけた日も最終日前日なのだ。
会場はお客さんの波で溢れていた。

今回のオブジェはタイトルどおりの<水>だった。
ドビュッシーではないが、そこに水の流れがある。
円の中に石が集められ、そこにライトが差す。明かりは随意な動きを見せる。尤もそれは計算された動きなのだが。
眺めると不思議に快いリズムが生まれていることに気づく。
光が波を生み出している。
眺めるうちにやはり三半規管の波がうねるのを感じる。
『水と生きる』実感がそこにある。

天保から嘉永にかけて20年ほどの間に作られた広重の東海道の宿場風景が並ぶ。江戸百景を見た後にこちらを眺めると、趣も変わって楽しい。
私が最初に見た浮世絵は東海道五十三次だった。
父は広重ファンで画集を持っていた。そして一九の『東海道中膝栗毛』を子供に与えた。
わたしにとって東海道とは、広重の風景とやじきたのツアーに他ならない。
幸先のいいような気分がある。

一蝶『田園風俗図屏風』 丸々した子供らが泳いでいる。一方雨宿りの人も描かれている。破れ傘がいい。マンウォッチャーの目は温かい。

久隅『瀟湘八景図屏風』 近江八景の元の八景図。いわば本歌なのだが、それぞれの名所がどこか思い出せない。

作者不詳18世紀の『京大坂図屏風』 これは嬉しい。わたしの行動範囲内の名所図。さすがに知る場所が多い一方で、今ではないものもある。当然のことながら二世紀以上の年月は大きすぎる。今もここに描かれている神社仏閣・名所が残っていることの方が奇跡的なのだ。
古詩にあるとおり「…松柏は砕かれて薪となり、古墓は鋤かれて田畑になる」…これだ。
右隻は攝津に始まり大坂から、今で言う国道1号線や京阪沿線の地が描かれ、左隻は洛中から比叡と嵐山辺りまで。
その名を書くだけで楽しくなる。
その部分。クリックしてください。mir231-2.jpg

住吉神社、四天王寺、清水、生玉神社、八軒店、道頓堀の芝居小屋、日本橋(今ではヲタウン)、天神橋(座頭が二人渡っている)、天満橋、難波橋(今ならライオンの石像があるが)、義経の船出で名高い尼崎の大物もある。
山崎、高槻、八幡、宇治、伏見、竹田、藤森神社、淀で隣の隻へ続く。
左隻…近江の勢田、石山、比叡山が見え、鞍馬、黒谷、愛宕山、北野神社、天龍寺、大井川、こくうざうとあるのは十三詣りの寺で、西芳寺もある。そこからずっと東に入り、大仏、清水、二軒茶屋、長楽寺、円山、六角堂、清水など…。
「行った行った行った」などと呟きながら眺める。行ったのは20世紀後半から現在なので、この絵の場所とは微妙に違うのだが。

何故こんなに名所図会が好きなのか。…やっぱり基本的に出かけるのがすきなのだろう。

『隅田川名所図巻』も楽しい。以前に屋形船で柳橋から湾へ出、徒歩では白鬚橋まで歩いた。その先は知らない。行く先々の江戸を探して歩いたが、ここではその場所が眺められる。

広重『江戸高名会亭尽』 このシリーズはとても好きだ。
『木母寺 植木屋』 雪見するのか女二人が来た。客に呼ばれたのか・自分らがごちそう食べにきたのかはわからないが、楽しそうだ。
しかしこの屋号では染井の方かと思いましたわ。木母寺は江戸庶民にとって芝居でなじみのある場所。京から人買いの忍ぶの惣太に攫われて、病死した梅若丸を埋葬した寺。子を求め物狂いになった母の悲しい物語がある。
『向島 大七』 広重ではなく北渓の肉筆画で知った料亭。
『王子 扇屋』 これは卵焼きで有名なお店だと思うが、確か近年なくなったのではないか。一度くらい行きたかったが、ないなら仕方ない。広重の人物たちが機嫌よさそうなのをうらやましく眺めるばかりだ。しかもこれは一種の床ではないか。(京都の夏の風物詩のあの床である)
『深川八幡境内 二軒茶屋』 大きな蘇鉄が目立つ。異国情緒を感じる蘇鉄。蘇鉄は堺の南宗寺、神戸の相楽園が有名だ…
『亀戸裏門 玉屋』 わんころが三匹いる。かわいい。亀戸の葛餅が食べたい。

応挙『青楓瀑布図』 既に行かれていた皆さんが褒められていた滝が、目の前にある。なるほど涼しい。色調が抑えられているから全くもって<涼>そのものだ。
半券にもなっている。mir231.jpg


池大雅『青緑山水画帖』 紺地に金字で文字がある。「百丈懸泉雲」この言葉が実感としてそこにある。池大雅は夏の風景にいいものが多いような気がする。

明治の染物を見る。二十四孝の雪中で筍とる話の柄が多い。留守文もあればずばりなのもある。流行したのだろうか。
これらは蒲団地だというが、サントリーが『用の美』を集めた美術館だということを、改めて思い出させてくれた。

『千鳥蒔絵鏡箱』 これが大変に気に入った。ちいちい千鳥が飛ぶ、砂地を歩く、ちいちいちい。
室町時代の美意識が心地よい。

『佐竹本 源順』 久しぶりの再会。思えば古美術とのお付き合いを始めて随分になるが、この三十六歌仙のうち半数以上の方々にはお会いできたが、まだまだ足りない。全員集合することはもうないのかなぁ…

『浮舟螺鈿蒔絵焚殻入』 小舟の二人。浮舟と匂宮か。子供の頃、本編の光君より、次代のこちらの話のほうが好きだった。特に浮舟が。入水してから「ほっといて」な気分になっている彼女に惹かれる。

龍田川をモチーフにした品々の中でも気に入ったのは、『龍田川蒔絵車文透香枕』 寝る間に髪に香が染む。憧れるなぁ。古代のアロマテラピーでもある。ところでナマな話だが、わたしは染付の枕を持っているが、頭熱が高いせいか、すぐに暑くなるのだった。

ところでリストでは二期目に出ていたはずの鶺鴒文皿が出ていた。
好きな器なので嬉しい。これは背景が何もないが、青海波を背景にしたパターンを見かけもする。

同じく鍋島で、わたしが勝手に「花火」と呼んでいる皿も出ていた。
ホント、今風。可愛くて仕方ない。mir231-1.jpg


元禄時代の『道成寺縁起絵巻』は三期目のみの展覧なので、見れて良かった。子供の頃からこの物語は好きで、色んな絵巻を見てきたが、ここのもいい。「いい」と書いたのは美術的な眼で見たことなのだが、実際に好きなのは結局のところ、この物語の構造そのものなのだった。
とは言え、この物語の別バージョンとも言える『賢学草紙』の方が私の好みなのだが。(こちらは龍になった女がついに男を捕まえ、水中に引きずり込むのだ)
追いかけるシーンから、わたしは見た。
既に顔が蛇相になっている。髪は跳ね上がり、裾も露わ。当初は顔だけだったのが、裸になると最早身体も蛇体になっている。

『西行物語絵巻』 室町と南北朝と二種出ている。
讃岐で崇徳院の墓所を詣でる姿がある。これが上田秋成の『雨月物語』の『白峯』の物語になる。また春を待つ姿もある。
佐藤義清が武士を辞めて出家し、放浪する姿に惹かれる人々も多く、様々な『西行物語』が描かれた。出光所蔵のものも見たが、今はなき萬野美術館では数年前、西行物語展を開催したこともある。ここのは徳川美術館のと兄弟巻だった。(蜂須賀家伝来)
見て回ると、「あはれにせつなし」という趣があった。(舟に乗り損ねて蹴られているシーンがあったような)
出家と遁世は違うが、出家の中でも世のわずらわしさを逃れるための出家で、却って機嫌よくすごしました というのが好きである…
(しかし中世の出家譚は、男の自分勝手な動機が多すぎる)

残念ながら『天稚彦』は展示替えで見れなかった。赤坂時代に『絵巻の小宇宙』展で見て以来ご無沙汰だったので、見たかったが。

最後にガラス工芸の美について少し。
前回もたいへん綺麗なガラスを見せてもらい嬉しかったが、今回も引き続き藍色のガラスが見れて嬉しかった。
お気に入りの蝙蝠モチーフの(どう見てもバットマンの舟)器のほか、いいものを多く見た。何がどうというのでなく、総じて「よい」という気持ち。これが大事だと思う。
切子の透明な美は、やはり真夏に見たいものだ。心が清くなった気がする。






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コメント
「花火」とは
なんて素敵な命名でしょう!

それに、ほんとにかわいいお皿。

鍋島はあまりにも完成されつくしていて、ちょっと「深窓の令嬢」的で、ある部分苦手なところもあるのですが、
これは、いいですねぇ、うん、いいですねぇ!

次の「BIMBO/屏風 日本の美」展はいかれますか?
2007/09/01(土) 21:52 | URL | 紫 #-[ 編集]
紫さん こんばんは
ほんと、花火みたいでしょう、大好きです。これでハーブサラダなんていけてるような(笑)。
>鍋島はあまりにも完成されつくしていて
やはり国内の将軍家・大名家などへの正式な贈答用として作られたことが、そんな感じを齎すのかもしれませんね。わたしは好きです~~

屏風は行きたいのですが、日時的にややビミョーです。
2007/09/01(土) 23:55 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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