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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

美麗 院政期の絵画 1

奈良国立博物館で『美麗 院政期の絵画』展が今、開催されている。
丁度一日から末日まで、四百年の絵画と工芸品が展示されている。
『美麗』というタイトルに惹かれ、それだけで出かけた。
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基本的に仏画はニガテである。特にこの時期の仏像はさけている。
しかし今回初めて 感動した と言ってもいい。今まで全く感じなかった美を、初めて感じたのだ。
来月は狩野永徳展が開催されるので、そちらに照準を置かれている方も多かろうが、余裕のある方は九月に奈良へ出るべきだと思う。
●は国宝、◎は重文・重美である。番号は目録番号。
第一章 美麗のほとけたち および 第二章 説話絵と装飾経 までの感想を挙げる。続きは後日。なにしろわたしは長々しい。
会場の順路。クリックしてください。mir273.jpg

1 ● 五大力菩薩像
〈金剛吼菩薩・龍王吼菩薩〉平安時代(10?11世紀) 和歌山・有志八幡講十八箇院 金剛吼 龍王吼
二体とも目が怒り、蓮座が蛇のうろこに見える。龍王吼はそれが別に不思議ではないのだが。

2 ● 聖徳太子及び天台高僧像
〈龍樹・善無畏・慧文・灌頂・湛然・聖徳太子〉平安時代(11世紀) 兵庫・一乗寺
聖徳太子に惹かれた。少年の姿だから厩戸聡耳王子の時代。何故フルネームで書くかと言うと、彼の座す下方に十人の童子がいて、それぞれ王子を拝んでいるから。たぶん話をすべて聞き取り・聞き分けている状況。一人の童子、顔が上下さかさまになって描かれている。これは構図の都合で(テクニックの問題)仕方ないのだが、やっぱりヘンはヘンである。このお寺は確か加古川にあり、寺の建築様式もご本尊もかなり有名なのだが、いまだに実物は拝んでいない。

3 ● 仏涅槃図 応徳3年(1086) 和歌山・金剛峯寺
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これまで色んな涅槃図を見てきたが、この高野山の涅槃図には、奇妙な驚きを感じた。
図上の人々には名札がついているので「これが誰か」ということがわかりやすいのだが、弟子たちや動物たちは身を投げうって泣いている。嘆きは激しく、声まで聞こえてきそうだ。弟子たちは仏陀の足下に集まっている。一方、仏陀の肘枕のそばにはほとけたちがいる。既に人の相を離れ、天上の地位を得た仏たちがそこにいる。そしてその仏たちは一様に沈みはしていても、嘆いてはいないのである。右上の雲上には摩耶夫人の姿もある。
死を嘆くのは未だ悟らぬ故か、と思うほどに仏たちは静かにそこにいる。
頬杖をつき、仏陀の入滅を待ち続けているのだ。
   
4 ● 釈迦金棺出現図 平安時代 京都国立博物館  
この作品は後期に出るのだが、京都でなじみの作品である。結構大きな作品で、先日展示されているときも、少し身を引くようにして眺めた。キリストも釈迦も死後の復活がいかに望まれているか、そのことを思う。
 
6 ● 五大尊像〈降三世明王・ 軍荼利明王〉平安時代、寛治2年(1088)寛治4年(1090) 岐阜・来振寺
軍荼利明王を拝む中に、獣頭の奴もいる。人外でもすがったり・祈ったりする存在は必要なのだ。
   
7 ● 慈恩大師像 平安時代(11世紀) 奈良・薬師寺  
文房具と一緒の図だが、水滴が唐子なのが可愛い。
 
11 ● 十二天画像〈帝釈天・火天・羅刹天・毘沙門天・ 梵天・月天〉平安時代、大治2年(1127) 京都国立博物館
帝釈天…目が綺麗だった。

12 ● 善女龍王像 久安元年(1145) 和歌山・金剛峯寺  
善女といってもオジサンの相である。ヘンなひげを生やしている。おばさんのおじさんなのか、おじさんのおばさんなのか、その見極めはあまりしたくはない。服の裾から尻尾が出ている。蛇の尻尾と言っては叱られる。なにしろ龍なのだから。この絵の白描は醍醐寺に伝わり、今回109として出ている。
 
13 ● 孔雀明王像 平安時代(12世紀) 東京国立博物館
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これはこんなに間近に眺めたことがないので、殆ど初見に近かった。
明王の頬の赤み、孔雀の緑地に金の細工、細い細い金鎖、瓔珞…仏画がこんなにも美しいとは、このとき初めて知った。繊細丁寧な作画に強く惹かれ、どきどきしてきた。わたしの視線と重なるのは孔雀なのだが、孔雀の目もわたしを見ている。凄い色彩だと思った。

14   馬頭観音像 平安時代(12世紀)ボストン美術館
以前大井町から南品川を散策中、馬頭観音の祠を見た。お世話をする人と一緒に手を合わせて仏様を見ると、頭上に小さく馬があった。関西ではまず見たことのない町の仏様。
こちらの絵も頭上にヒヒンと馬がいた。見事な絵だった。いつまでも見ていたくなるような名画だった。
ただし温厚な佛図ではない、湯気でも沸き立ちそうだ。目が血走っている。恐怖のチラシ。
馬頭観音と言えば、半身が馬そのままの姿をした馬頭観音が出現するのは『暗黒神話』だった。わたしの小学校の体育の先生に馬頭という姓の人もいた。なんとなく懐かしい。
 
15   如意輪観音像 平安時代(12世紀) 米国・ボストン美術館
そばの善貳師童子が美少年だ。みづらに結うた髪も可愛い。
 
16 ● 十一面観音像 平安時代(12世紀) 奈良国立博物館  
こちらは本身の仏様の頭上に11面があるのだった。一つ一つのお顔を眺める。実に色々な表情があるものだ。暴悪なものもある。大慈大悲の観世音も様々な表情を向けるのか。
顔から首、肩、胸に掛けて優美、と言う言葉を実感する作品だった。

17 ◎ 両界曼荼羅(血曼荼羅)平安時代 保元元年(1156) 和歌山・金剛峯寺  
血天井の類かと思ったが、そうではなく清盛の頭の血(え゛っ)をまぜて描いた曼荼羅。巨大な曼荼羅で、血が黒く滲んでいるかと思ったが、よくわからなかった。
胎蔵界・金剛界 共に破れはないものの、図柄は判読しづらくなっていた。

18 ◎ 大仏頂曼荼羅 平安時代(12世紀) 奈良国立博物館
象、牛、花をバックにしている。なんとなく不思議の国のトンネルを落下する様に似ている。
 
19 ◎ 一字金輪曼荼羅 平安時代(12世紀) 奈良国立博物館  
描かれた獅子がどうも凶相である。いいのか、これで。
 
21 ◎ 星曼荼羅 平安時代(12世紀) 奈良・法隆寺
北斗七星・九曜・十二宮・二十八宿それぞれが擬人化などで描かれているのだが、十二宮にびっくりした。北斗七星、九曜の神の絵は他でも見ているし、二十八宿も字の一つ一つと神の絵とが合致するのだが、十二宮はほぼゾディアックと等しかったのだ。
正直言うと知らなかった。
白羊宮・金牛宮・双児宮・巨蟹宮・獅子宮・処女宮…が西洋のゾディアックだが、ここでは始発が微妙に違い、名も異なる。しかしそれが面白い。
獅子宮・女宮・秤宮・蝎宮・弓宮・磨宮・瓶宮・魚宮・羊宮・牛宮・夫妻宮・蟹宮。その性質については以下のサイト
http://www.e-mercy.co.jp/web/fortune/12kyu/main.html
ビミョーに聖闘士☆矢の黄金聖闘士を思い出している私……
   
27 ● 普賢延命菩薩像 平安時代、仁平3年(1153) 広島・持光寺  
手の多いほとけ様。白い象たちがいる。その手が象を掴み取り、信者の元へ投げるような気がした。
    
29 ● 不動明王像 平安時代(12世紀) 京都・曼殊院  
この門跡寺院には以前行ったことがあるが、そのとき関心を惹いたのは、幽霊の絵と欄間や建具だった。模造品がかけられていたのかもしれないが、この不動を見るのは初めてだ。菱形の両目がすばらしい。腹に堪えるぜ。
     
32 ◎ 愛染明王像 平安時代(12世紀) 京都・細見美術館    
細見で見たときと違い(コンセプトがこれだからか)なかなか威厳を感じた。
愛染と聞くと色模様より先に、大阪の夏のお祭の始まりを思い出すのだ。
この絵の赤さが見事だと思う。しかし何故赤色なのだろう…理由を知っていたはずなのに、忘れた。

33 ◎ 孔雀明王像 平安時代(12世紀) 文化庁
孔雀の羽根が♡なのが愛いやつだ。しかしどうしても孔雀明王を見るとマンガ『孔雀王』を思い出す。
   
34 ◎ 毘沙門天像 平安時代(12世紀) 山形・上杉神社
上杉謙信は毘沙門天の信者だったはずだ。きっとこの像を拝んでいたに違いない。しかしこれは後期なので本で確認しただけ。ちょっとガクトのイメージが湧いてきた。
   
35 ● 閻魔天像 平安時代(12世紀) 京都・醍醐寺
ふっくらと優美で、これが閻魔なのかと思ったら、安産の修法に使用されたそうだ。なるほど納得。
      
40 ◎ 普賢菩薩像 平安時代(12世紀) 奈良国立博物館
美人だった。そう思った途端石川淳の『普賢』を思い出した。あの小説に描かれたイメージがそのままこの形容になるのかもしれない。
 
42 ● 板彫十二神将像〈波夷羅・迷企羅〉平安時代(11世紀) 奈良・興福寺  
かわいい?かわいいとしか言いようがない。興福寺の仏像は好きなものが多いが、この厚みのない二体の干支の神様、可愛くて仕方ない。ぐりぐりしたくなるほどだ。
美麗なものばかり見ていると、麻痺してしまう。だから時々こうした飄逸で愛らしいものがひどく気に入る。

43 ● 四天王立像〈増長天〉木造彩色截金 平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺  
これはまた力の入り具合の丁度いい像だと思う。浄瑠璃寺にはもう何年も行ってない。 これが飾られているのなら、見に行こうと思った。スタイルの見事さにときめいた。

44 ◎ 不動明王二童子立像 木造彩色截金 平安時代(12世紀) 京都・峰定寺  
表情がいい。どういいかは実際に見てもらうのが一番いいのだが。言葉がついてゆかないのが残念だ。このお寺は花背にあるそうな。石楠花で有名らしいが遠いので行ったことがない。しかし付近に有名な料理旅館も多いそうなので、ちょっと計画を立てようかと思う。

45 ◎ 毘沙門天立像 木造彩色玉眼 截金 平安時代、応保2年(1162) 東京国立博物館  
顔だけ白色が残されている。きりっとしている。そんなに大きいものではないが、静かな威厳があるのを感じた。
 
49 ● 扇面法華経冊子〈法華経巻第一・観普賢経〉 彩牋墨書 平安時代(12世紀) 大阪・四天王寺
半期場面替えなのでわたしが見たのは尼そぎ(おかっぱ)の少女のいる図だった。これは四天王寺宝物館でしばしば見るとはいうものの全容を見ていないので、いつ見ても新鮮な気分がある。墨も色彩も良く残っている。しかし今回わたしなりの<新発見>があった。この題を知っていても、これが冊子だとは今の今まで意識していなかったのだ。目の位置を変えて、初めてそのことに気づいた。他の絵はこのノートのほかのページにあるのだ!

50 ● 平家納経〈序品・提婆品・法師功徳品〉 6巻 平安時代長寛2年(1164) 広島・厳島神社
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後期にはまた別なのが出るが、おとどしの厳島神社名宝展以来、よく表に出るようになった。特に奈良にはよく出るのかもしれない。派手で綺麗なのでどれもこれも嬉しくなる。

他にたくさん法華経などがあったが、好きな方には良いと思う。
次は絵巻物などです。
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コメント
大特別展
七恵さん、こんにちは。HPで展示作品を仔細にみて、びっくりしました。まさに95年にあった日本仏教美術名宝展の絵画パートの再現です。

展示替えで観れなかった傑作を見逃したくないので、出かけることにしました。
2007/09/12(水) 16:54 | URL | いづつや #RK0OJ0uw[ 編集]
いづつやさん こんばんは
>95年にあった日本仏教美術名宝展
おーそれはすばらしい!私はその展覧会には行かなかったのです。開催時期に奈良そごうに創画会やトラキアの黄金展などは見に行ったにも関わらず・・・干支が一回りして、やっと仏教美術にも目が開いたようです。

ぜひともいづつやさん、おいでください。
本当に素晴らしかったです。
2007/09/12(水) 22:39 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
今期最高の特別展
この展覧会は前評判通り、強烈でした。
そして、奈良博が以前にも増して好きになりました。

できることなら、前期展示も見たかったです。
2007/09/24(月) 17:51 | URL | meme #z8Ev11P6[ 編集]
memeさん こんばんは
これは本当に凄い展覧会でしたね。
古美術系では今年最高だと思います。
ちょっと世界観が変わったような気がしました。
本も素晴らしい出来ですね。
2007/09/24(月) 18:08 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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