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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

美麗 院政期の絵画 2

昨日の続きです。これまた長いです。

第3章絵巻物の世界と第4章白描の絵画などから
こちらは去年の京博『大絵巻展』とダブるような内容でもある。
だからなんとなく懐かしく慕わしい気持ちがある。

61 ● 信貴山縁起絵巻〈飛倉巻・尼公巻〉 平安時代(12世紀) 奈良・朝護孫子寺
わたしが見たのは飛倉巻だが、これは教科書で最初に見たことから始まる。現代語訳のテストがあったのだ。
この絵を改めて眺めると、托鉢の鉢そのものに意志があるようで、面白い。つまり托鉢にきたのに、忙しくて誰も相手にしてくれない。困った鉢は「ヨッシャ」とばかりに蔵ごと運んでしまった。
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永井豪によるとこの鉢はUFOだということだが、それもありえそうである。
またJAのCMの俳句で石川淳はこの飛倉をネタに一句作っていた。
『鉢投げて米俵飛ぶ秋の空』 わたしはファンだから、「うーん素敵」とうなるばかりである。

62 ● 伴大納言絵巻〈上巻〉 平安時代(12世紀) 東京・出光美術館
少し以前に出光でこの絵巻の展覧会があったが、あまりのヒトデにわたしは行くのを断念した。クリックしてください。
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今目の前に応天門が炎上するのを見て騒ぐ人々の情景が広がっている。門は黒々と炎煙を噴き上げて、大きく燃え続ける。描かれた人物たちの表情がリアルだ。これと先の信貴山縁起絵巻の価値が高いのは、こうしたリアリズムさによるのかもしれない。

63 ● 地獄草紙 平安時代(12世紀) 奈良国立博物館
東博のは後期。こちらは以前から見ているが、対峙するのがイヤになるような強さがある。こわいわい。色が問題なのか。
八大地獄の次の地獄は別所と言うそうだ。読みやすそうな仮名交じりである。これくらいの字なら読めそうだが、あまり読みたい内容ではない… なのに図録の裏表紙にはげげーなことに・・・ 

65 ◎ 沙門地獄草紙〈火象地獄〉平安時代(12世紀) 東京・五島美術館  
象なのか犬なのかわからん怪物に破戒坊主たちがやられてますな。しかし沙門地獄と言えばタイトルになるが坊主地獄だと別府温泉のようだ。
66   沙門地獄草紙〈飛火地獄〉平安時代(12世紀) 個人蔵  
火は可愛いが坊さんにしたら難儀である。地獄で安泰と言うのはなかなかないからやはり大変である。    
68 ◎ 沙門地獄草紙〈沸屎地獄〉平安時代(12世紀) 奈良国立博物館
スカ▲ロはいやだが、見るしかないので見ている。門の入り口に坊さんたちがわんさわんさとおる。みんな責め苦の順番待ち。

70 ● 餓鬼草紙 1巻 平安時代(12世紀) 東京国立博物館  
子供の誕生と言うめでたい瞬間にも既に餓鬼はまといついている。生も死とつながりあっている。生前と死後とはリングのようなもので、生きる間など短いものなのだ。しかしその生の間にも、こうして死とも生ともつかない忌まわしい存在にまといつかれている…

72 ● 病草紙〈眼病治療・二形の男・口臭の女〉 平安時代(12世紀) 京都国立博物館
眼病治療は無残なので見たくない。 二形の男・口臭の女これらは後期なのだが、京博で見た。フタナリも平安の頃は病気と看做されていたのか。それとも異形のものは全て病なのだろうか。
73   病草紙〈嗜眠癖の男〉 平安時代(12世紀) 個人蔵  
今で言えばナルコレプシーみたいなものか、末法の世だけにどうもいやな感じだ。
74   病草紙〈痣のある女〉 平安時代(12世紀) 個人蔵
これも見るのが辛い。今の世でもせつない事情なのにこんな平安では…。

77 ● 辟邪絵〈天形星・栴檀闥婆・神虫・鍾馗・毘沙門天〉 5幅 平安?鎌倉時代(12世紀) 奈良国立博物館
邪を退け斃す存在の方が、怖く見える絵。天形星は邪鬼を喰っているのだが、どう見ても人肉鬼にしか見えない。鍾馗の帽子は朝鮮の両班のそれのように見える。栴檀闥婆の三叉と来たらもう・・・(涙)神虫も怖いだけ。正義のヒーローであっても見た目の怖いものはやっぱりコワイなぁ・・・
唯一マシなのは半券にもなったこの毘沙門天。
ちょっとイケメンである。mir279.jpg


78 ● 粉河寺縁起絵巻 平安時代(12世紀) 和歌山・粉河寺
これも大絵巻でみたか、水か火かで汚れているが、色も良く残り、線描も細かく、勿体無い感じがする。

79 ● 華厳五十五所絵巻 平安時代(12世紀) 奈良・東大寺
善財童子の修行ツアー絵巻である。ぽにゃっとした童子が愛らしい。わたしはすぐに高橋睦郎の『善の遍歴』を思い出すのだが、この絵巻では、童子はわりと女の人のところへよく向かっているように思った。

80 ● 華厳宗祖師絵伝〈義湘絵巻第二・三〉鎌倉時代(13世紀) 京都・高山寺
これも大絵巻展で見たが、祇園祭でもこの絵巻を写したものをつけた山鉾を見ている。
しかし今回、わんこに惹かれた。子供と遊ぶわんこの愛らしさ!ゾロ顔のわんこで、テテの愛らしさにきゃんきゃんだ。
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81 ● 寝覚物語絵巻 平安時代(12世紀) 奈良・大和文華館  
金より銀箔が眼に残るまさしく「美麗」な絵巻。断簡で物語も残らぬので、今にある分でしか推し量れぬが、優美さにときめく。
しばしば大和文華館で対面するが、そのたびに幸せな気分が生まれる作品。たとえ作者は悲恋を描こうとしても画像はただただ美しい。
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82 ● 金光明経〈巻第三〉(目無経)鎌倉時代、建久3年(1192) 京都国立博物館  
白描の上にお経が書き連なっているのだが、絵師はどうしたわけかキャラの顔を完全には描かなかった。そのために目無経になってしまった。
わたしは絵を描かないのでよくわからないが、目は割りと早いうちに描くものではないのか…

84 ● 紫式部日記絵巻 鎌倉時代(13世紀) 大阪・藤田美術館  
こちらも藤田で見知った名品なので、親しみがある。作家の日常?も、その描いた世界と酷似しているらしい。  

89 ● 芦手下絵和漢朗詠抄〈下巻〉 平安時代、永暦元年(1160) 京都国立博物館  
文字を絵に絡めて描く<芦手>は以前から好きなので、嬉しく眺めた。着物の柄にも芦手が多くあるが、それらは大方が和歌を示しているので、平安時代以降の教養の分布などを思うと、とても興味深い。

90 ● 沢千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃 1合 黒漆塗螺鈿 蒔絵 平安時代(12世紀) 和歌山・金剛峯寺
やはり高野山には名品が多い。この櫃全面に施された螺鈿蒔絵は見事で、とても愛らしい。澤千鳥たちがイキイキしているだけでなく、水辺の植物たちも愛しげに咲いている。
オモダカが可愛い。とても楽しくなる。 

90-1 ◎ 彩絵檜扇 1柄 檜 彩絵 平安時代(12世紀) 島根・佐太神社  
91-2 龍胆瑞花蝶鳥蒔絵扇箱 1合 木造 黒漆塗彩絵
この二つのセットは、以前にも見ている。檜扇はとても立派。扇に関しては昨夏東大阪で世界中の扇の展覧会を見たので、多少その違いや用途などは学んでいる。
箱もいい。秋の花は慎ましく愛らしい。 

92 ● 秋草文壺 1口 渥美窯 平安時代(12世紀) 東京・慶應義塾
あまりわたしの好みではないが、いい壷だった。腹にススキなどが刻まれている。ふとこの壷に何を活けるか考えた。  

93 ◎ 野辺雀蒔絵手箱 1合 黒漆塗 蒔絵 平安時代(12世紀) 大阪・金剛寺  
これまた感じのよい蒔絵の箱である。雀たちがちゅんちゅん元気に活きている。何と言うのか、こういうのを手元においていた古人は本当に優雅なものだと思った。
近代の松田権六の雀のご先祖たちのようである。

第4章 白描の絵画
95 ◎ 高雄曼荼羅図像〈胎蔵界一・五〉平安時代(12世紀) 奈良・長谷寺  
凄い素描、と思った。ちょっとオバサンなほとけ様である。しかし高雄曼荼羅がなんで奈良の長谷寺に伝来しているのだろうか…

104 ◎ 不動明王二童子図像 平安時代(12世紀) 滋賀・石山寺
せいたか童子もこんがら童子も可愛い。脇の二童子をつれた明王は、どことなくパンチパーマのオバサンのようにも見える。
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113 ● 後鳥羽天皇像 鎌倉時代(13世紀) 大阪・水無瀬神宮
後鳥羽院が承久の乱に敗れ隠岐へ流される直前の似せ絵らしい。
「我こそは新島守よ 隠岐の海の荒き波風心して吹け」
…後鳥羽院の和歌が思い出される。
なんでも大変に剛毅な院だったそうだが、今昔か何かに、盗賊捕縛の指揮を取るエピソードがあった。舟の櫂を片手でぶんぶん打ち振るほど剛力の人で、それを見て盗賊は自分から縛についたそうだ。
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114 ◎ 天皇摂関影〈上巻〉鎌倉時代(13世紀) 愛知・徳川美術館
天皇は向かって右端に座し、視線を左に投げかける。摂関たちはずらーーっと左に並び右をみつめる。二人目の人がなかなかいい顔だった。
これをみて、前に上下分の作品を見たな、と思ったらそれは後期の115 ◎ 公家列影 なのだった。

第5章 藤末鎌初のほとけ
120 ◎ 釈迦十六善神像 平安?鎌倉時代(12?13世紀) 兵庫・聖徳寺  
光背にへんな顔が見える。善神たちではない。これって「あなたの知らない世界」では…

122 ◎ 不動明王二童子像 平安?鎌倉時代(12?13世紀) 兵庫・瑠璃寺
またこの童子が美少年で。こういうのばかりみていると嬉しくなる。
 
124   聖徳太子勝鬘経講讃図 鎌倉時代(13世紀) 奈良・法隆寺  
さすがに法隆寺は聖徳太子に関する名宝が多い。わたしは厩戸王子は『日出処の天子』でファンなのだが、後身の聖徳太子にはあまり関心がなかったりする。
だからその生涯の事業もあまりよくわかっておらず、この勝鬘経講讃が太子の大事業の一つとは、正直思っていなかった。
絵は擦り切れている。保存がよくないというのではなく、よく表に出て大衆教化に使われていたのかもしれない。

125 ◎ 蓮池図 鎌倉時代(13世紀) 奈良・法隆寺
宋元の花鳥画の系統に連なるような作品。静謐さを感じる。かなり大きな絵で、見ているとどういうわけか頭の中にヴォーン・ウィリアムスの『アゲヒバリ』が流れてきた。水辺に遊ぶのはおしどりか。棹尾を飾るのにふさわしい作品だと思った。


展覧会は9/30まで。19日から展示替えがあるが、半券があれば500円で後期分を楽しめるようなシステムを採っている。
独立法人になってからの奈良博は、間違いなく素敵な場所になっている。
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コメント
絵巻物
遊行さんのブログが紅葉の竜田川~★
絵巻物が最近楽しいモノになってきました。古文書なる文字が判読できない悲しさよりも、画面から出てくる臨場感、躍動感が楽しいです。信貴山も御伽草子のよう。
なんかワクワクします。
物語好きには、たまらないモノなのだと知りました。
慶応が持っている秋草文壺お気に入りです。土っぽくて、線が遊んでて。
今なら尾花や、実の付いた枝ものなどをごっそり入れて、お月見ですね。
奈良博が素敵になって、良かったです。
先月行った時、企画展の図録が200円で、広告料取る分お安くなったらしいです。求めなかったのですが・・新しい国立を見たのでした。
直に正倉院展ですね。
2007/09/12(水) 23:17 | URL | あべまつ #-[ 編集]
あべまつさん こんばんは
本当に良い展覧会でした。
基本的に子供の頃からマンガも文学も絵本も同じ視線で対峙していたので、絵巻物を見るとわくわくするのです。
今回は一枚絵のブツゾーたちにときめきました。近来稀な新発見です。
うーんまだまだ見るべきものは多いなぁ。

独立行政法人になって、奈良は間違いなく大成功だと思います。
正倉院展は学生の頃からほぼ欠席せずに出かけてますが、永徳展と時期も重なるので、はてさてどうなることやら・・・
2007/09/13(木) 21:42 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さんのブログでしっかり予習した
つもりだったのですが、あまりの名品ぞろいに
中途から、青息吐息。後半は、白描あたりから
集中力も欠け、記憶にも残っていません。
後鳥羽天皇像、国宝だったら、もっとはっきりと
した表情しろよ~と
悪態ついたことは覚えています。
2007/09/24(月) 08:31 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
一村雨さん こんにちは
行かれましたか!
>あまりの名品ぞろいに中途から、青息吐息
ああーわかります!まさかこんなに凄いとは思いもしなかったというか、油断大敵と言うか、とにかく名品がさらっと展示されてるのが奈良博の底力ですねー。
後鳥羽院ね、国宝でない別な似絵は眉も濃くてオトコマエなんです。意思的な顔で。
流謫されたのが響いたかな~~
2007/09/24(月) 09:47 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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