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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

大正ロマン 田中翼コレクション

大正ロマンに憧れている。深い憧れがあるからこそ、意識がそちらへ向く。
弥生美術館から17日まで池袋三越で開催の『大正ロマン 田中翼コレクション』チケットが届いたとき、不意に出かけることを決めた。ムットーニー展のチケットもあるし、ゆくしかないと思った。
それで15日、半日かけて5つの展覧会を見た。
一番先に向かった『大正ロマン展』と最後のアド・ミュージアムの内容に重複するところが多いので、意識が鮮明になりつつ、記憶が混濁している。
大正シックと言う素敵な展覧会が開催され、多くのお客さんがそのモダンさにときめいたことは記憶に新しい。あちらはホノルル美術館の所蔵品だったが、池袋のは田中さんと言う個人コレクターの美品だった。

『白木蓮』橘小夢。mir287.jpg

ずっと以前弥生で回顧展があったとき、魔性を秘めたような絵を描くと思っていたが、ここにある絵には、そんな翳りはない。パーマネントの髪をふっさりと肩に掛けた着物の女性。眼差しも穏やかである。唇のめくれ方に少し秘められた何かがあるにしても、彼女は穏やかに微笑んでいる。

大正から昭和初期の魅力は深い。
アールヌーヴォーもアールデコもどちらも呑み込み、それを珠を吐くように見事にならべてみせる。
『足利銘仙』山川秀峰。mir286.jpg

当時一流の画家たちによる宣伝ポスターは、それだけでも価値がある。
わたしは銘仙より友禅や絖(ぬめ・・・絹より光り滑るもの)などに惹かれるのだが、この時代の少女たちから婦人層には幅広く人気があった。

大正時代の着物の図案には驚くべきものも多い。
薔薇と欧羅巴の居城の組み合わせ。mir286-1.jpg

まことに不可思議なのだが、こちらはまだ序の口だった。
現在ではレトロ着物と呼ばれる着物たちが、トルソーのようなマネキンに着せ掛けられて、並んでいる。
エジプト壁画をモチーフにしたローマの人々を描いた帯、孔雀、豹などの着物・・・
不可思議なセンスに戸惑いながら、泳ぐようにそこを抜けると、ビーズバッグが長く掛けられていた。椿をモチーフにしたバッグがほしいと思った。

クラブコスメの双美人が微笑んでいる。四月と十月には本社で展覧会が開催されるが、この中山太陽堂の功績は大きい。
そして当時の化粧品たち。mir286-2.jpg

こちらはレート化粧品のポーチ。紙箱にはきれいな蝶たちの乱舞が描かれていた。
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昔の化生瓶たちは形だけでなく、ラベルのロゴまでが綺麗だった。

明治になり不思議なブームがあった。
万年青とうさぎと絵葉書である。万年青ブームのことは大佛次郎の小説にも詳しいが、植物と生物は生命の範囲が短いから、今には残らない。絵葉書だけは無機物だけに、当時のものが今も世にある。そしてそれは大正にも引き継がれた。
橋本邦助や小林かいちの絵葉書など、ここにもアールヌーヴォーとアールデコの影響を受けた作品が並ぶ。

大正時代には<市民生活>が誕生している。市民は明治時代の締め付けから放され、江戸時代ほどではないが生活を楽しむゆとりを持ち始めた。
それは殊に少女たちから婦人層に顕著だった。
『少女倶楽部』『少女の友』『婦人倶楽部』などの雑誌が現れ、付録が大人気となった。
華宵のしおりと、資生堂デザイナーとして著名な山名文夫のうちわ。
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華宵についてはしばしば記事を挙げているので、何も書かない。
山名のモダンさはいつか記事に挙げたいが、以前目黒で展覧会もあった。図録のないのが残念だったが。

モダンさは無論工芸品にも現れる。
色合いの見事なカップ&ソーサ。mir286-3.jpg

見込みの絵柄がやや気に入らぬが、モダンである。そして巨大な鯛の皿。こうしたガラス工芸品も楽しい。

三越について。
大阪人にとって三越とは正直どうでもいい百貨店であった。数年後梅田に展開されるらしいが、これまでは北浜にあった三越しかしらず、そこは外商は良くとも実際には使いにくいというイメージしかなかった。
しかし近代史を学び・楽しむためには、三越の歴史を知ることは重要だ。
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橋口五葉のデビューは三越ポスターからだった。杉浦非水のモダニズムも三越から始まった。こちらのポスターはややそれらよりも以前のものだが、その時代性を良く示している。
パンフレットなどにも力が入っているのがよくわかる。
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なお北浜三越の終焉については、こちらに書いている。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-58.html

図録のないのが誠に残念な展覧会だった。
大正時代の応接間も再現されていて、多くのご年配のお客さんが喜んでいる。
もっと見ていたい展覧会だった。
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コメント
大正ロマン
こんばんは。
池袋に三越があったとは知りませんでした。
この記事だけで十分大正ロマン伝わってきました。
特に化粧品やカップ&ソーサーは思わず欲しい~と叫びたくなるような品物ですね。
乙女心をくすぐります。
2007/09/17(月) 21:44 | URL | meme #z8Ev11P6[ 編集]
いいですねえ、大正ロマン。
大正から昭和初期、時代的には決して明るい時代ではないのですけれど。
でも、芸術って暗い土壌でびっくりするほど豪華な花を咲かせるのかもしれませんね。
2007/09/18(火) 06:56 | URL | OZ #-[ 編集]
大正ロマン私も好きです。
当時の「モガ」ももちろん素敵なのですが、
最近は銘仙などの着物により心惹かれるようになりました。
今の着物の常識では考えられないような大胆な意匠が大いに用いられているところに魅力を感じます。
桃山時代から江戸初期の小袖と並んで好きな衣装の一つです。
2007/09/18(火) 23:01 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
☆memeさん こんばんは
池袋の三越はマイナーでしてね、しかしここで開催された展覧会にハズレはないんですよ~~(めったに開催しませんが)
化粧品の瓶やカップなどの工芸品は、本当にロマンチックでどきどきものです。
名古屋のノリタケ資料館にも同時代の良品が展示されてますよ♪


☆OZさん こんばんは
政治的にも世相も暗い事件や猟奇的な事件がこれでもかっとてんこ盛りの時代ですよね。
でも仰るとおり暗い土壌でこそ百花繚乱なんですね。切り裂きジャックとOワイルドとラファエル前派の時代が同じヴィクトリア朝というのと同じなんでしょうね。
そこにときめきます。
2007/09/18(火) 23:25 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
☆千露さん こんばんは
あの大正から昭和初期の着物の図案の自由奔放さと言うものは、桃山から寛文までと元禄年間とヒケをとりませんね。染料が自由な分こちらの方が面白い色合いになりますね。
取り合わせもけっこう自由が利くようで、それがやはり今の人気になっているんでしょうか。私はやはり女性が楽しめる時代が大好きです♪
2007/09/18(火) 23:32 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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