FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ロートレック展を見る

mir312.jpg

サントリーミュージアムで『ロートレック』展が開催されている。大阪の次は名古屋それから東京へ巡回する。
サントリーミュージアムにしては珍しく、今回展示目録を作っていないという。
そうか、それなら仕方ない。
記憶と謎なメモ書きによって、この感想文は綴られている。
入り口すぐ横の一室で15分ほどのスライド上映と説明とで予習が行われる。
これはなかなか面白いのだが、終わると同時に見学が混むのがこわいので去った。

ロートレックが様々な分野で多くの傑作を残したこの時期に焦点を絞り、日本初出品となるオルセー美術館秘蔵のロートレック・コレクションをはじめ、各国から集められた油彩画の名品の数々、さらに版画とポスターの代表作を網羅し、挿絵や素描、関連資料などもまじえて、ロートレック芸術の本質に迫ろうとするものです。彼が大きな影響を受けた浮世絵版画との関係も検証します
美術館はそんな狙いで開催している。

近年ロートレック展を見た記憶をたどる。福島の郡山美術館でのそれが今も印象深い。
そこでは主に油彩と素描が出ていた。内容は娼館での日常の情景だった。
クールベとロートレックの描いた千鳥たち…女同士の愉しみがそこにあった。
今回はそうした作品は現れず、ただシリーズ『彼女たち』Elleがある。
この作品はレベルは高かったが反応が悪いという不運な作品だったらしい。
彼女と彼女たち…Elle et eux

オルセー、サンパウロ、鹿島茂コレクションなどからその時期の作品が現れる。
全てロートレックで埋めるのではなく、例えばジュール・シェレやテオドール・スタンランのポスターも並ぶ。
世紀末のパリが再現されているのを感じる。
シェレの娘たち、スタンランのえらそぉな黒猫、そしてロートレックの芸人たち。
同時代にはミュシャもいたが、ミュシャが実際より美しく、そしてアールヌーヴォー様式に則って作品を展開させたのとは対照的に、ロートレックに描かれた人々は戯画的な動きを見せる。美人もオトコマエもいないが、魅力的なアクの強さがそこにある。
アリスティド・ブリュアン。彼を描いたポスターが何点か並ぶが、いつ観ても(今見ても)作品として、いい。
対象をあえて美しく描かず、その個性を拡大化させて描く、と言う手法は日本でなら写楽がそれをした。
浮世絵がフランスの芸術家に及ぼした衝撃と影響は今更ここに書く必要もないが、それがいかに大きかったかは、ここに並ぶ浮世絵を見てもわかる。

ロートレックは身体に不幸を抱えていたが、闊達な性質で、そして娼婦たち芸人たちに愛される画家だったという。彼の手で描かれた人々はナマナマしい姿を捉えられている。
しかしそれは世の片隅に生きるものを侮蔑的に捉えたものではなく、言ってみれば身内の日常の姿を淡々と捉えたものなのである。

数年前、芸術新潮で鹿島茂が没後百年記念展に寄せて一文を認めている。(その展覧会もこの天保山サントリーミュージアムだった)
その雑誌を引っ張りだしてみていると、ロートレックの機嫌のよい写真などもあり、アルコールとノーバイとで早世したとはいえ、本人は極めて楽しく生きたのだと感じた。
実際この展覧会に並ぶ作品を見ても、不幸を感じないのである。
放蕩息子の挫折はなく、心の入れ替えもなく、描きたいものを描いて死んでいったのだと思う。
なんとなく「あっぱれ」な生き方のようにも感じるが、まねをするのはお断りだ。

会場にはその当時の芸人たちの映像などもあり、見所の多い展覧会となっている。
一つ一つの細かい感想より、総じて「よかった」と書くことがこの場合一番正しい気がする。

大阪では11/4まで開催されている。



mir312.-1.jpg

関連記事
スポンサーサイト



コメント

彼によって、わたしってポスター絵が好きなんだ、イラストが好きなんだ、と気づかされました。
子供時代の事故で体の発育が変な風になってしまったけど、ご本人はそれが原因で性欲が異常に強くて苦労した、ということをどこかで読みました。
ロートレックの絵の躍動感が大好きなOZでした。
2007/09/28(金) 08:07 | URL | OZ #-[ 編集]
ロートレック、私も好きです。(^^)
冒頭のポスターは本当に有名ですね。
絶妙な構図は、何度見ても感銘を受けます。
モデルたちの、構えない、普段通りのふるまいをそのまま描写されているところに、画家との心理的距離の近さを感じますね。
2007/09/28(金) 10:07 | URL | tanuki #-[ 編集]
素晴らしきポスター芸術
☆OZさん こんばんは
のっけからなんなんですが、わたしは彼がそうした面でとても強靭だったと言うのを知り、ヒトゴトながら妙に嬉しく思いました。
結局それが原因の早世であっても、「よかった」と思います。へんな感心ですが。
>躍動感が大好き
わたしもです。競馬や自転車レースの作品などに、特に惹かれます。だからか、油彩より版画を評価しています。(図柄使用バッグほしいよ~)


☆tanukiさん こんばんは
ポスターって結局「まず心をキャッチする」が一番重要じゃないですか。眼と意識にハッとした衝撃を与え、それを長らく持続させる。ロートレックはその点ホントに凄いと思います。浮世絵の影響を受けたとしても彼はそれを飲み込み、自分の個性として吐き出している。それがあの構図なんだと思いました。モデルたちとの親密さが作品を生み出したんですねえ・・・
2007/09/28(金) 21:46 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
ロートレックの作品は決して「美しい」絵ではありませんが、
人間の欲望や醜さをも愛情を持って描かれているようで私は好きです。
昔の映画「赤い風車」ではどこか暗い印象の人物として描かれていましたが、
近年の映画「ムーラン・ルージュ」では脇役ながら非常に闊達な人物として描かれていました。
そちらのほうが彼の実像に近いのでしょうね。
2007/09/28(金) 22:57 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
千露さん こんばんは
>人間の欲望や醜さをも愛情を持って描かれているようで
まさにそのとおりだと思います。
「赤い風車」はやはりちょっと重苦しかったです。演じた男優が個性のきつい人だから余計そうなったのだろうと思います。
記事にも挙げましたが、ロートレックの写真などが色々ありまして、どれを見ても元気で機嫌よい人なので、イメージがスッカリ変わりました。
2007/09/28(金) 23:39 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さん
こんばんは

半年たって、会場はサントリー美術館に移ってきました...
とても雰囲気のある、いい企画だと思いました。
2008/01/27(日) 21:28 | URL | lysander #f8kCkkcg[ 編集]
lysanderさん こんばんは
楽しまれたようですね。
あの女たちの後姿は、彼女らのいる空間にまで入り込んだロートレックだからこそ描ける「味わい」がありました。
ナマナマしさを感じました。

いい展覧会でしたね。
2008/01/27(日) 22:15 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
ロートレック展を観て
楽しんできました。映画・動画が良かったですね。
長い記事を書いてしまいました。TBが飛ばないので↓
http://cardiac.exblog.jp/m2008-02-01
2008/02/02(土) 09:44 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
とらさん こんばんは
いまおじゃまして来ましたが、「過去が蘇る~」な詳細さで、ソヤソヤと喜んでおります。
あの動画は本当に面白かったです。
あれだけでも価値がありました。
2008/02/02(土) 21:16 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。

>言ってみれば身内の日常の姿を淡々と捉えた
>この展覧会に並ぶ作品を見ても、不幸を感じない

ロートレックは楽しく生きた! それが作品に表れていたように思います。なんか確認できたみたいでうれしいです。

東京では階段で4階から3階に降りた踊り場のような一角に、自転車なんかのポスターが集まっていて、とてもいい空間でした。そのあたりが空いていたこともありますけどね。
2008/02/05(火) 00:00 | URL | キリル #ZgLpcwNk[ 編集]
キリルさん こんばんは
ロートレックの性格にもその「楽しさ」が見え隠れしているように思いました。
動きのある絵を見ていると、イキイキした心持ちになります。

>4階から3階に降りた踊り場のような一角
そういうセンスがいいですよね。
空間も作品も共に活きてくる・・・
2008/02/05(火) 22:09 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。

Bunkamuraが出来たころに開催した
ロートレック展に何気なく出かけ
ガツンと衝撃を受けて以来、彼の
大ファンです。展覧会何度行っても
同じポスター何度見ても飽きません。
2008/02/07(木) 18:47 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんばんは
やっぱりロートレックっていいですね。
わたしは最初にポスターから入り、油彩をみてびっくりしました。
描く題材は同じものかもしれないけれど、二つの差異に関心を持ちました。
わたしには版画の方が好ましいです。
2008/02/07(木) 21:12 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。TBありがとうございます。ロートレックは殆ど初めて見ましたが、私は遊行さんとは逆にまず油彩の方に惹かれました。ああいう思い切った画面の切り取り方をする画家は、あまり他ではいないと思います。感心しました。

自身の体の問題と、美意識という点では少し違和感も覚えるモデルの描写には、何か関係があるのかもしれませんね。そんなことも考えました。
2008/02/26(火) 22:28 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんばんは
油彩を見ていてロートレックの目の角度と言うものを考えました。
彼の身体の問題であの視線なのか、それとも別な理由なのか。
彼は同時代の他の誰にも似ていない画家だと思いました。
共通するものがない。
色々な楽しみを見つけ出せる内容でした。
2008/02/26(火) 22:52 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
七恵さん、こんにちは。
特に油彩画関連の作品群に、私も、「身内」感覚、感じました。
なんというか、哀しいような情の深さのある人だったんじゃないかなーって思います。
ロートレックの友達になりたいって思いました!
2008/02/28(木) 20:16 | URL | はな #-[ 編集]
はなさん こんばんは
>「身内」感覚、感じました
貴族でありながらこうした最下層の人々と交流し、安らぎを得ていたということを考えると、色々と哀しいものも感じたりしますね。
悲しくはないけれど、哀しいような。

ロートレックの友達はいいかもしれませんが、ゴッホの友人はしんどいだろう、と思いました。
2008/02/28(木) 23:27 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
浮世絵「写楽」大首絵の視点なるほど...。
ロートレックとゴッホの繋がることに、興味深いです。
二人は出会い、そして当時グーピル商会にいた
ゴッホの弟テオは両方の絵を購入してます。
その後ジュワイヤンのお陰で今日に繋がる...
そして日本でも開催で私も「よかった」展覧会です。
2008/02/29(金) 13:07 | URL | panda #62/4nzbo[ 編集]
pandaさん こんばんは
絵に生命の全てを注ぎ込んだのは同じでも、一方は娼婦を描き、もう一方は描かなかった。
そのことがなんとなく興味深く思ったりします。
ロートレックは長生きすれば、また別な面が展開したかもしれませんね。

テオとゴッホの兄弟愛というのか、「精神的双子」と言われる在りかたがとても好きです。
2008/02/29(金) 22:03 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さん、こんばんは
ああ、確かにロートレックって身体的にハンデを負っていましたが
それを悲観したりするような絵は見られませんね。
精神的にできていたからじゃないかと思いますが…
(貴族だったことも起因していると思います。)
彼にとっては絵も生活のためでない、精神的な遊びなのかもしれませんね。
だからそこ自由なタッチとかが生まれていったのではないでしょうか?
2008/03/14(金) 02:04 | URL | アイレ #-[ 編集]
アイレさん こんばんは
ロートレックの人間性は「闊達」という言葉が大きく占めているように思います。作品に対してもとても自信があったようですし。
彼の作品のうち、版画には特に動きを感じます。疾走感が。
そんなところが好きです。
2008/03/14(金) 21:01 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア