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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ミネアポリスの浮世絵を見る

松涛美術館にミネアポリス美術館から浮世絵が届いている。
二期に亙って展覧会を繰り広げるが、その前期に出かけた。
この美術館はありがたくも安価なので、巡回先に奈良県美があるが、とにかく出かける。
mir357.jpg

二階から見て回れと指示を受けたが、目録は地下にしかないのが残念。
二階には初期浮世絵などが並んでいる。

清倍 神力定家東遊 色合いがいかにも初期のものらしくて、やや風俗画風でもある。
馬上の定家とくつわを取るのはこれは綺麗な女形らしい。(鳥居帽子をつけている)名前は乃里竹とあるからノリタケとでも読むのだろう。もう一人奴のような共侍がいる。

二世清倍 七小町 六 あふむ小町 小町七変化とでも言うか、鸚鵡小町を描いている。
上部に陽成院と小町の歌が書かれ、山家の様子が見える。頃は秋か、老いさらばえた小町が杖に頼って木にもたれ、若い貴族が短冊を手にしている。

同じあふむ小町でも、政信になると若き美女・小町になる。こちらの小町は着物に「花の色は・・・」の文字が見える。
このもともとの筋やそこからの展開については、折口信夫のこの論考が面白い。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000933/files/46312_25548.html

政信 閨の雛形 男を挟んで二人の女がいる。仲良くしている。隣室の屏風の横の空間に「仁王様 あうんの・・・」と川柳が入る。そうか、巧い見立てだ。
手前から水色の着物の女、黄八丈の男、赤っぽい着物の女。色合いもいい。

重長 やろう風 これは鳥居帽子をつけた若衆で、振袖である。女形であろうと思うが、英語のタイトルは<Playboy Tipe>なので、ちょっと違うように思う。
(わたしは図録を買わず、ミネアポリス美のサイトを見ている)これは三幅対の右の絵で、真ん中と左がどんなだったか、とても気になる。

豊信 大坂 これも三幅対の一つ・左。京・大坂・江戸の三都を美人で描くのだろう。
遊女とかむろ。かむろは正面向き。着物の柄が丸いチョウチョ。
絵と言うより人形にしたいような。

チラシ裏。クリックしてください。mir358.jpg

いよいよ春信である。
見立て 玄宗皇帝と楊貴妃 一つの岩に二人が仲良く座って笛を吹いている。そのポーズだけで玄宗と楊貴妃と言う決まりがあるので、故事来歴なども知っておくと、こんなとき楽しい。

見立て 小野道風 も同じ。カエルが柳に飛びつこうとするのを見る。それでOKだ。
このカエルがなんとなく可愛い。みなよろし、と書きそうだ。

見立て 高砂 着物に漢数字が書き込まれている柄なのが面白い。小さい文字なのが、いかにも春信の絵らしくて、いい感じだ。

これは後期なので実物を見ていないが、見立て 佐野の渡り を見て胸を衝かれた。
「昭和の春信」と謳われた小村雪岱の『お傳地獄』を思い出したのだ。
この絵は歌麿も北斎も国芳も描けないだろう。

水売り その色鮮やかさに驚いた。別な展覧会で見たものと比較すると、大変綺麗な発色だった。
mir353.jpg


座敷八景 塗桶の暮雪 エンボス加工で雪が表現されているので、これは実物を見ないとよさが伝わらない。浮世絵がどんどん工夫されてゆくのがよくわかる。

座敷八景 台子の夜雨 丸坊主のかむろが姐さんの元結をくくっている。かむろの着物が可愛い。正面向きのうさぎ。その背後に立つ女の着物は鶴丸。昔のJALのようだ。
こうしたところにも目が惹かれる。
傍らには茶釜と棗や杓があるが、杓の櫂(サジ部分)がえらく曲がっているのでスプーンのようだ。

薫衣香 黄八丈の着物に香を焚き染めようとしている。黄八丈は白木屋お熊以来、ブームになったとか。医者か若い娘でないと着れない着物。今しも香炉をセットしようとする娘は、正面向きの千鳥柄の着物を着ている。江戸時代の文様では正面向きはやはりウサギがいいと思う。

春章 二代山下金作の浅香の局 雨の激しく降る中を、筵を巻いて歩く女。浅香の局が何の芝居に出てくるかはわからない。浅香姫なら俊徳丸だが・・・書き換えだろうか。
しかし「深深たる夜の雪」の中、歩いてくるのは玉手御前なのである。
雨の表現がペン画のような細密さで、それがよかった。

春英 二代中村野塩の戸無瀬 のしお=のしほ=もしほ?調べるのがちょっと今、面倒だ。
この戸無瀬は『道行旅路の花嫁』のシーンかと思う。眉と眼までの距離が長い。

清長 六郷の渡し 五人の女客と若い侍と坊やの乗る船。向こうに富士山が見える。
清長らしい背の高さで、男も女もなくスタイルがいい。
腕まくりした男の白い二の腕に惹かれた。

三囲神社の夕立 突然の夕立で女たちは慌てている。それを戯作者か遊び人風の雷神?たちが眺め下ろしている。こんな奴らの気随で濡れてなるものかよ。

歌麿登場。
難波屋おきた これは発色が大変よいので、まるで初めて見たような気分で向かい合った。シブイ色調だがハッとなるものがある。

青楼仁輪嘉女芸者の部 浅妻船・扇売り・歌枕 この三人のうち、「歌」の字を書いた扇子を持つ芸妓(左端)が可愛い。同じような顔立ちとは言え、微妙に違う。頭をまいたような彼女が気に入った。

指差し 歌麿得意の母子絵ではあるが、これはあれか。・・・位置的にはビミョーだな。

台所 台所仕事をする四人の女。竈の煙で顔をしかめるのもいる。色は少なくとも、繊細な構成だと思う。

写楽も発色のよいのを持っている。どんな保存をしているのだろう・・・
珍しいのは歌舞伎堂艶鏡の作品。この絵師の作品はこれまで太田記念でしか見たことがない。豊國の役者絵もある。

国芳 義勇八犬伝 犬坂毛野mir354.jpg

おお、わたしは元々この作品が好きなので嬉しい。
幼児の頃、新八犬伝には気合が入っていたので、今でも八犬伝関係の錦絵などを見るのが好きだ。

北斎が実に多い。
壬生狂言を描いたものを見たのは初めてだ。そういえば、17日から29日まで京都高島屋で北斎展が開催される。津和野の北斎美術館からの貸し出し展らしい。永徳の後に見に行くつもりである。この時期に永徳展に行かれるなら、ツアーに組むのも楽しいかもしれない。

富嶽三十六景、諸国瀧巡り・名橋奇覧 など風景画が多いが、どれもこれも発色が見事で驚いた。天保年間の作品ばかりだからか。一体いつからこの美術館にこれらコレクションが入ったかはわからぬが、明治初としたら30?40年前に発行されたものとなる。
それをそのまま保存していたのだろうか・・・・・・。

百物語 小はた小平次mir355.jpg

大好きな作品がこんなにハッキリした色調で現れると、嬉しい。それが骸骨で怨霊であろうと、可愛くて仕方ない。

百人一首うばがゑとき おばあさんによる絵解き。こういうのも当時の人は「ああハイハイ」とわかる教養があったのだ。今の日本は・・・
花鳥図はロックフェラー・コレクションで名品を見たが、あちらもいい発色だった。

広重も実に多い。入れ替えがあるとは言え本当に多数出てくる。
東海道、木曾街道、浪花名所、江戸百・・・数々のシリーズのうちよいものを展示してくれている。

可愛いのは戯画・ほふづき尽くしの童遊びだ。ホウズキダンスもあり、楽しい。

これらの画像は以下のサイトで見れる。
http://www.artsmia.org/art-of-asia/explore/explore-collection-ukiyo-e.cfm
いい展覧会をみて、とても機嫌よくなった。
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コメント
おお~♪この展覧会、この前のNHKの「日曜美術館」で紹介されてました!!
なかなか東京までは行けないので、来年の奈良で開催される時に行きたいと思っています。
私は鈴木春信さんが大好きなので、小野東風の見立ての絵はぜひ見たいと思っております。
そうそう、ホオズキダンスの絵も紹介されていたのでぶっ飛びました(笑)
現代の人がみても、なお新しさを感じる浮世絵は不思議な魅力がありますね。

2007/10/16(火) 14:18 | URL | tanuki #-[ 編集]
ううっ~小平次、可愛いですか~
私はうなされそうです~
2007/10/16(火) 15:06 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
国芳はどこにあった?
こんばんは。うかつにも国芳を見逃したみたいです。どこに飾ってありました?全部みたはずなのですが。

春信、歌麿にすごく魅せられますが、鳥居清倍の“神力定家東遊”や奥村政信の“閨の雛形”なんかもいいですね。

日本ではこういう準大物絵師のいい絵をみる機会が少ないですから、有難いです。
2007/10/16(火) 17:03 | URL | いづつや #RK0OJ0uw[ 編集]
こんばんは。
本当に凄い展覧でした。
今日ワクワクで行ってきました。
今年の松濤は力入ってますね。
こんなにきれいな浮世絵を間近にできて、
とっても幸せでした。
春信が、一段と輝いていました。
コレクションの筋がいい感じで、
広重の箱根、北斎の赤富士
初めて見る広告板北斎、
歌麿も、写楽もあるし、
豊国の役者絵のいい感じ、
国芳の八犬伝もかっこいい~
あんまりじ~っと見すぎて、
たばこ塩に行く時間がなくなってしまいました。
後期もしっかり見に行こうと誓ったのでした。
レポートが充実しているので、
改めて感動できました。
2007/10/16(火) 17:18 | URL | あべまつ #-[ 編集]
☆tanukiさん こんばんは
おおtanukiさんは春信ファンでしたか!
いいのが揃ってましたよ~奈良でも見ようと思うわたしです。
よかったらご一緒しましょう!
ホウズキダンサーズ可愛かったですね~
どれもこれもすごく発色がよくてびっくりですよ。本当に綺麗でした。


☆一村雨さん こんばんは
おや?おかしいなぁ。
一村雨さんならナットク~と思っておりましたのに^^
お蒲団で寝ているとき、ふと眼を覚まし・・・きゃ~~~ なぁんてね★
ちょっと想像したいぢわる遊行です。


☆いづつやさん こんばんは
地下のほうですよ、国芳。
他にも女水滸伝とかありましたよ。
地下の展示はちょっとややこしかったから・・・二十四孝もありました。虎の絵。
>鳥居清倍の“神力定家東遊”や奥村政信の“閨の雛形”なんかもいいですね
わたしも思いました。ああいうのをもっと見たいです。初期浮世絵は風俗画のほうにやや傾いてますが、後期にはない味わいがありますね。


☆あべまつさん こんばんは
うーむ、あべまつさんの気合の入り方が伝わります。
照明も明るいのでビックリでした。
松涛は以前にも武者絵だけの展覧会がありまして、それもよかったのですよ。
浮世絵には松涛も特に気合を入れてくれてるのかしら?
後期は諦めて、奈良で見ようと思います。
またあべまつさんのレポも楽しみです。
2007/10/16(火) 19:12 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
ミネアポリス美術館
TBありがとうございました。
美術館サイトの紹介ありがとうございます。
今週は、なぜか仙台に滞在中なので、帰ってからアクセスしてみます。
凄い展覧会ですね。
もう2度行きましたが、後期を含め何回も行くことになると思います。
2007/10/19(金) 11:16 | URL | とら #-[ 編集]
とらさん こんばんは
仙台は『萩の月』ですね。
(なぜ政宗の名より先にお菓子なんだ)

ご近所さんというのが本当に羨ましいです。
この浮世絵展はリピーターになる価値あり、ですよね。
知ってる作品が出ていてもこれだけ発色が綺麗だと新作をみたような気持ちになります。
本当に素敵でした。
2007/10/19(金) 21:36 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。
私も「水売り」を見て色の美しさに仰天しました。
あんな素敵なピンクが浮世絵にあったのですね。

国芳の八犬伝も最高でした。
右上の犬2匹が可愛い+武者姿が美麗でかっこいいことこの上なしです。

何回も見たい展覧会でした。
2007/10/20(土) 22:53 | URL | meme #z8Ev11P6[ 編集]
memeさん こんばんは
>「水売り」を見て色の美しさに仰天しました
初期・中期・幕末と三期に分け、それぞれ使えた色の特徴など考えても、やっぱりあのピンクはとても綺麗でした。
しかしわたしはあの「水売り」が少年だと言う説明にビックリでした。知らんかった~!

やっぱり国芳の武者絵はいいです。
女装の美少年特有の不思議な魅力に満ちていて・・・

奈良では前後期なしかも・・・と期待していますが、さてどうなるのでしょう・・・
2007/10/21(日) 00:36 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。

私も「新八犬伝」にどっぷりはまって、児童向けの本も持っていました。
この展覧会をみて、浮世絵の世界に戯作は欠かせないのだなと、あらためて感じました。
2007/10/23(火) 00:53 | URL | キリル #-[ 編集]
キリルさん こんばんは
わたしは運よくNHKの『新八犬伝』本などを手に入れました。
今でも大事にしています。

>浮世絵の世界に戯作は欠かせないのだ
そのとおりです。わたしが歌舞伎を自分から観劇するようになったのは、國貞の錦絵を見て「この元ネタはどんなかな」と興味を持ったからなんです。
やはり浮世絵と戯作と芝居とは密接な関係があるので、浮世絵を詳しく楽しむにはここらは押さえた方が、もっと楽しめます。
2007/10/23(火) 20:39 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さんこんばんは。
本当に充実した展覧会でした。国内でこれほど保存の良い浮世絵はもうないのかもしれませんね。奇跡です。

>水売り その色鮮やかさに驚いた

これが浮世絵の色のかと目を疑ってしまいます。まるで近年の水彩画のようでした。初めて春信を見た気分です。

静かに見入れるというのも良いですよね。松濤万歳です。
2007/10/24(水) 22:51 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんばんは
>国内でこれほど保存の良い浮世絵はもうないのかもしれませんね
地方の旧家の長持ちから時々幕末頃の凄いのが現れますが、江戸中期のそれはもはやないでしょうね。

はろるどさんの仰るように近代日本画の系譜と言うことを考えます。
松涛に感謝です。
2007/10/24(水) 23:30 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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驚きのミネアポリス美術館蔵浮世絵コレクション!

松涛美術館で今、ミネアポリス美術館が所蔵する一級の浮世絵コレクションが展示され
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