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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

画狂人 葛飾北斎

京都の高島屋に、津和野の北斎美術館から浮世絵がやってきた。
個人コレクターの熱意で生まれたコレクションだけに、珍しい作品も多い。
北斎は人気があるので高島屋グランドホールは満員御礼だった。
(同じフロアで北海道物産フェアが開催中なので、いよいよ熱気が高まる)
富嶽三十六景や百物語など人気シリーズは当然のことながら、若い頃の線の細い作品も多く出ていた。
名が変わるのと画風が変わるのが同時期で、なるほど芸術家魂ではピカソの先輩だというのも納得だ。変遷と発展を繰り返している。見事な脱皮。しかもその空蝉もまた見事な作品だというのが、すばらしい。
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肉筆画を見る。北斎得意の鍾馗像があり、横顔を向ける女もある。額から鼻のラインがなだらかに流れている。それが北斎の特徴だと思う。
また文福茶釜があった。これは顔は狸で袈裟衣姿で、『白蔵主』のそれを思わせる。
二股大根を担いだ大黒もいる。(チラシの下方)
もこもこの虎。mir378-2.jpg

先般、百年ぶりの竜虎再会という感動的な展覧会もあったが、どれを見ても北斎の虎はもこもこしている。
これでは月に吠えるというのでなく、「・・・うまそうだな」とウサギを見ているように思える。

個人コレクションで面白いのは、やはり珍品を見ることだ。
版画であっても販売が目的ではない種類の作品がある。
例えばそれは摺物だ。
それは俳諧仲間や狂歌師たちの内輪の楽しみにごく少量摺られたもので、それだけに技術的に凝った趣向のものが多い。
北斎は様々な作品を残した。
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同時代のライバル歌川豊国に比べ、北斎は圧倒的に作家性が強い。
よく「好きなものしか作らないのがアマチュア、嫌いなものでも作るのがプロ」と言うが、北斎は依頼も無論多く受けたが、買い手に迎合することなく、自己の作家性を全面的に押し出している。
浮世絵で描かれる主な分野は、まず役者絵、芝居絵、戯作からの二次創作としての絵、風景画、美人画、春画などである。
北斎は勝川時代の修行時代はともかく、役者絵も芝居絵も多くない。
その春朗時代の作に一枚可愛いのがあった。
マサカリ担いだ金太郎が瀧をバックに、仲良しのクマの子と手をつないで歩いている。
クマの子はチャンチャンコを着ている。
なんだか大変に愛らしくて、そしてちょっと羨ましいような絵だった。
クマと友達になることは予定にないが、一度くらいこうして仲良くしてみたいものだ。

初公開として出ているのが以下の二点。
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『俳諧秀逸つきの友』(上)とこの難しい字はサザエ堂と読む。(下)
上は春朗時代のもので清長の影響を受けている、と解説にある。確かに座る女にそんなところがある。下のさざえ堂はかつて本所のどこかにあったようだ。
サザエ堂は建物の内部が二重構造になっていて、上がり階段・下り階段で人が会わないように出来ている。大抵が仏教系のお堂で、有名なのは会津若松にあるサザエ堂だった。
あれは本当に素晴らしい建築だった。

驚いたのは北斎もおもちゃ絵を作っていたこと。
立版古(組み立て絵)で石橋山の合戦を拵えている。とても楽しく思えた。

‘05年末、東博で北斎の大回顧展が開催され、実に多くの作品が現れたが、それでもまだこうして初見がある。
わたしの気に入ったのは、楼のてんやわんやな様子を活写した十枚続きの作品。(長い!)
『吉原遊郭の景』
置屋も遊女屋も帳場には必ず神棚があるが、この向かい合う狛犬たちが可愛くて仕方ない。
なんとなく映画『幕末太陽傳』を思い出すような猥雑さがいい。

『諸国瀧巡り』『富嶽』辺りになると色調もがらりと派手になるが、紅嫌いもいくつか見受けられた。
相変わらず雀たちが丸々と可愛らしい。
おっとこんなのもあった。mir379.jpg

個人的嗜好だが、風景画は北斎より広重が好きだ。
広重にはケレン味は薄いが、戯作的な明るさ即ち滑稽味がある。
北斎の風景にはそれは薄いように思う。
広重は人の歩く道を描き、北斎は自然の中の人を描く。
視線の違いは構図の違いになり、北斎の目は鷹になったり、天上の龍になりもする。
なんとも味わいのある構成をそこに見る。

しかし北斎の武者絵には感心しない。やはり武者絵は国芳がいい。
それで思い出した。松田修『刺青・性・死』の中で書かれた考察である。
北斎の孫がグレて家を飛び出しぐわゑん(火消し)仲間に入る。この時代その職業に入る男は100%刺青を負う。炎の中で己が背を見せびらかし、勇を鼓して火に立ち向かうのだ。
孫は間違いなく肌に墨を入れたろう。多くの若者が自分の描いた絵に憧れ墨を入れたことを流しつつ、北斎は苦く思う。しかもその孫の選んだデザインが国芳のものなら北斎の苦渋は倍増しているだろう・・・

北斎漫画がある。mir378.jpg

これはいつ見ても楽しい。
当時も人気だったようで、個人の家に伝わるものもみている。

展覧会は京都高島屋で29日まで開催しているから、永徳の後に行かれるのもよいかもしれない。
夕方六時からは半額。巡回は、来年早々難波の高島屋に来るが、その後は津和野に帰る。

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コメント
遊行七恵さん、こんばんは。
人物画、風景画、歴史画、漫画、春画、妖怪画、百人一首などいろんなジャンルに3万点以上の作品を残したと云われる北斎、また本人も認めた画狂人、興味の尽きることのない人物ですよね。
七恵さんの記事を読むと更に興味がわいてきます。
最後の作品なんて云う作品でしょうか。
面白いですね。
2007/10/24(水) 23:28 | URL | sekisindho #7JPwz3bk[ 編集]
sekisindhoさん こんばんは
>最後の作品なんて云う作品でしょうか
これは『百物語』シリーズのお岩さんです。
お芝居で、提灯抜けというケレンが四谷怪談にはあるのですが、それは観客周知の事実だったので、北斎はそれにひっかけてこうした構図を思いついたようです。

今渋谷の松涛美術館で浮世絵展が開催中ですが、そこでもこの百物語のシリーズがあります。
あの浮世絵展は行くべきですよ~~
歌舞伎と浮世絵の密接な関係が大好きなわたしです♪
2007/10/24(水) 23:55 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
京都
遊行七恵さん、こんにちは。
明日、日帰りの予定です。京博の後、市美、細見かなと思っていましたが・・・迷います。
2007/10/25(木) 07:54 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
江戸博にも北斎が 
こんばんは。
津和野からの北斎は、江戸には来てくれないのでしょうかねぇ。
両国橋の江戸博に漱石の後に来るそうです。
なにをやっても絵になるってのが、
悔しいですね。

>広重にはケレン味は薄いが、戯作的な明る さ即ち滑稽味がある。
そう、私もそう思います!
人のいい面白みっていう感じですよね。
北斎の方が人が悪いやぁ。

今日、芳年の風俗32相を見てきました。
猫の毛がエンボスになっていたり、
うんまぁ~@@でしたよ。
2007/10/25(木) 22:21 | URL | あべまつ #-[ 編集]
☆とらさん こんばんは
京博―市美―細見の後にぜひぜひ♪
これは永田生慈さんのコレクションですので珍しい作品が多いのです。
最終の新幹線でお帰り遊ばせ~~
大充実のラインナップですね♪
でも雨らしいのでお気をつけください。


☆あべまつさん こんばんは
江戸東博のはまた系統の違うコレクションですよね。そちらに行かれたらまた感想など教えてください。
>北斎の方が
子供の頃『富嶽三十六景殺し旅』シリーズを見てましたら、小沢栄太郎が北斎役で、大変ヤなジーちゃんでしたヨ(笑)。
芳年見たいです~~
2007/10/25(木) 22:43 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
京都へ行ってきました。
 こんばんは。意外と能率よく回れました。北斎はとても良かったです。TB代わりに↓
http://cardiac.exblog.jp/7627889/
2007/10/26(金) 22:20 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
とらさん こんばんは
お疲れ様です。
おーうまく廻れてよかったです。
今から早速・・・
2007/10/26(金) 22:38 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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