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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

名画の理由・後期

大阪の出光ビルの13階に大阪市立近代美術館(仮)がある。
元の出光美術館の跡地に間借りしているが、はっきり言うとここで永住してくれるほうがいい。
『名画の理由・後期』を見に行く。
mir309.jpg

前期はこちら
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-936.html
後期は前田藤四郎の版画、吉原治良の洋画などである。
わたしはどうも抽象的概念を具象化したものが苦手で、理解から遠い地にいる。
それでもやっぱり見ておこうと思った。
前田の版画は以前に回顧展で感銘を受けている。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-403.html
『標本採集』 蝶の標本(腸の標本と変換されたが、それでは高橋葉介だ)がある。
巨大な手が空を覆いながら虫を箱に刺し貫く。構図の奇抜さと手の不気味さにハッとなる。

『屋上運動』 これも以前に見ている。バレーか何かで楽しむ人々。船場ビルディングの屋上。ここは今では英国式庭園になっている。

吉原『犬と花』 白犬が可愛い。わたしは吉原のこうした作品は好きなのだが、円を描いたものなどは全く関心がない。
だから随分以前だが、芦屋市美術博物館で吉原の描いた子供のための作品群や、ロシア絵本に影響を受けて吉原が作った絵本『水族館』などには愛着がわく。
これは別に子供のために描かれたものではないのだろうが、犬と背景の事物との位置関係がいい感じだ。
吉原治良の前衛性についての研究や展覧会は多かったろうが、一度こちら方面の作品を味わうのも大切だと思う。
吉原の思想は後期の前衛作品に向いていたろうが、彼の描いた童画は多くの子供たちを喜ばせ、今の我々が見ても幸せな気分を感じるのだ。
一度くらいそんな展覧会があっても良いだろう。

靉光『アネモネ』 青い葉と薄汚れたような背景と。戦時中の暗い世相の中で描かれている。わたしは靉光も苦手なので他の作品と言えば藝大の自画像くらいしか見ていないが、やっぱり苦手は苦手なままである。アネモネの花を描きながら、本当は彼は何を描こうとしていたのだろうか。
アネモネの名を見ると村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』を思い出す。あの小説はわたしにとって’80年代初期最大の衝撃作の一つだった。

『鳥』 これまたどうにもならないほど暗い作品である。悪いがサヨナラと言う気持ちで通り過ぎたいが、そうもいかない。
鳥に仮託した心情や思想を読み取らねばならないのだから、正直厄介だ。そうか、わたしが抽象とか前衛作品が苦手なのは、書き手の感情を忖度するのが煩わしいからか。読み取っても、あらわにされた感情を押し寄せられては、わたしにはどうしようもない。

河原温『肉屋の女房』 これは太い線にギザギザの棘が走り続けていて、それで構成されている。線にそんな有刺鉄線を選ぶくらいだから、描く内容も普通のものではない。肉屋の女房が作業所に突っ立っている。顔半分とエプロンに血がついている。床や棚には生首や腕など、人体のパーツがコロコロ。
はっはっはっ、笑うのは憚られるが笑いたくなる。それは多分、この屠殺人も生首たちも、みんなマネキンのように描かれているからだろう。
これに感情が混じれば、絵金や芳年になるが、ここにはそんなものはない。
情念のなさ、それがとてもモダンでもある。
そして作者はこの絵を’52年、19歳で描いている。

やはりわたしとしては前期が楽しめる内容だった。


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コメント
こんばんは。
昨日、国立近美にいって、こちらの名画の理由に入る人たちのいる常設を見てきました。
なにせまだまだ近代、現代に無知なもので
ただひたすら見ているのですが、
靉光は今年個展で、力量を見せ付けられましたし、
岸田劉生は圧倒的な描き込みの向こうに何かがありそう、なんてことが身近になってきました。
河原温のコロコロもありましたよ。
出光ビルの13階に仮大阪市立近代美術館があるのを夏、パンフレットで見て、仮の後はどこなのだろうと思っていたところでした。
2007/11/15(木) 22:47 | URL | あべまつ #-[ 編集]
私は、後期だけでしたが、前期を見たかったですね。
吉原治良は,昨年、東近美でまとめて見ました。
ギャラリートークに参加しなかったら、興味を持たなかったかもしれません。
◯は◯で、大変なようですよ(笑)。
2007/11/15(木) 23:56 | URL | 鼎 #-[ 編集]
仮家は火宅か。
☆あべまつさん こんばんは
河原温、私は好みです。なんかああしたあっけらかんとした惨劇みたいなのもいいです。
名前が同じで無関係な渡辺温も好き。彼は大正時代『新青年』の編集者で作家だった。
わたしはこの展覧会に現れた人々よりもう一世代前のを偏愛しています。


☆鼎さん こんばんは
なにしろわたしは古くて固いアタマなんですよ、むしろへんなジマンのタネにさえなるくらい。センガイ和尚の○△□みても関東煮(チビ太のおでん)みたいやなーですもん。
関西の奥様方の多くは抽象概念に無関心で、この展に行ったと言うと、珍しがられました。
2007/11/16(金) 18:50 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
大阪市立近代美術館(仮称)
2年前にこの展示室に行きました↓。何故まだ「仮称」のままなのでしょうか。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/Children05.htm#050529
2007/11/16(金) 22:28 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
民の力vs官の力
とらさん こんばんは
読ませていただき「わははー」です。
そうなんです、大阪は大昔から(多分豊臣家滅亡以来)上に重たいもんがないので、民の力でやっていったがために、官に頼らないのですよ、それで官は阿呆化して、わけのわからん第3セクターに不要な金を流し込む。
それでいつまでも(仮)なんです。
仮からここへ安住したらええやん、と思うのは民なんですね、官は買った土地の上に建てたいらしいです。談合させながら。
2007/11/16(金) 23:34 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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