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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

展覧会に見る奈良のほとけたち

最近多忙と色々あって、なかなかブログを更新できなくなった。
今日は久しぶりに更新するつもりなのだが、リハビリがてら自分の救いも求めて、今年みた・見たい奈良のほとけの展覧会の紹介をまとめる。

・法徳寺の仏像 ―近代を旅した仏たち
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現在奈良国立博物館で開催中。
元々この融通念仏集のお寺に伝わる仏像ではなく、明治の廃仏毀釈やなんだかんだで奈良の寺外に流出した仏像などを、とあるコレクターが数十体まとめて、このお寺に寄贈したそうな。
「近代を旅した」とはそういうこと。
そう、これも仏難。しかしこの旅はよい帰結を見た。
南都の仏像群がこうして奈良に帰れたのはめでたい。

五髷の少年文殊の厳しくも凛々しいお顔。髪の括り方とそれがどこからの流れかもわかる構造なのもいい。
興福寺の千体仏のうち20体ばかりもこのコレクションに含まれていて、ずらりと並ぶ様は壮観。
コレクターの人はどう並べていたのだろう・・・

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四天王像も力強く、お地蔵さんも穏やかでよかった。

9/8まで。

なお現在奈良博の新館ではマニ教の宇宙図、聖者伝、天界図などが展示中。
展示終了したが、海龍王寺の毘沙門天、西大寺の吉野曼荼羅、可愛らしい雨寶童子像、追いかけっこする獅子を描いた戒体箱などもよかった。
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中央に蔵王権現


・奈良大和四寺のみほとけ
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東博本館で開催中。安倍文殊院、岡寺、室生寺、長谷寺から東博へお出まし。

長谷寺からは十一面観音像が。そう、長谷寺と言えばこちら。
縁起絵巻に由来が描かれているが、一本の樹から削りだされたというのが御本尊。

岡寺の義淵僧正坐像もある。古いもので8世紀だから実際の姿を伝えて作られたのではなかろうか。

奈良ではなく東京の、ただし東博と言う場、ここでは違和感もなかった。
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・奈良を観る なら観光記
奈良市美術館で開催された中に、国鉄が主催した「DISCOVER JAPAN」の宣伝に入江泰吉先生らが「奈良大和路」の仏像たちを写しだしたポスターがあった。それがほぼ全点展示されていた。
同じ仏でも写す角度・意図により、様々な表情をみせる。
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聖林寺 十一面観音像

中宮寺の弥勒菩薩半跏像も時代により名称が変わったりしている。
右から撮るか・左から撮るかにより表情も微妙に異なる。
興福寺の阿修羅像もそう。真正面、やや斜め、バストアップ、全身、接写…
全て表情が異なるのをみた。
このポスター群が一堂に会するのを見たのは初めてだったが、いつかもう一度見ることができるのだろうか…


・入江泰吉「ほとけさま」
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奈良市写真美術館9/7~10/30
まだ開催前である。もしかするとこの展示にも前掲のほとけ写真などがあるかもしれない。
秋の始まり頃に奈良を行くのもいいので、この展覧会にも行きたい。
最終日頃は丁度正倉院展も始まっているだろう。


・鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興
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今年の春先に奈良博で開催された。お水取り展と同時期。
どうしても何も書けなかった。
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この背景、きれいだな…
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今度は奈良のお寺へ行こう。

出光美術館「唐三彩 シルクロードの至宝」展をみる

出光美術館では「唐三彩 シルクロードの至宝」展が開催されている。
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最初に知った「シルクロード」は何か。
これはわたしの世代では間違いなくTVドラマ「西遊記」からだという人が多いのではないか。
ドラマの中で原作同様に三蔵法師御一行はシルクロードを旅する。
このドラマのOP曲はゴダイゴ「MonkeyMagic」で悟空の歌と言っていい。
ED曲は「ガンダーラ」である。
後年「ガンダーラ仏」を知るようになるまで、この未知の言葉の音感に不思議な魅力を感じていた。
歌詞がまた夢を見せてくれた。
「そこに行けばどんな夢も叶うというよ 誰も皆行きたがるがあまりに遠い」
「愛の国」「夢の国」「どこかにあるユートピア」としてのガンダーラに思いをはせ、三蔵法師御一行の面々が向かう先が天竺だということを忘れ、どこか遠い夢の国たるガンダーラへ向かって旅をしているような錯覚を懐いた。

そして引き続いてNHKが壮大なドキュメント「シルクロード」を放映し、喜多郎の楽曲を世に贈った。

展覧会を見る間、ずっとこの曲が無限に脳内再生され続けていた。


出光美術館はシルクロードの遺物を集めた展覧会を何度か開催している。
特にシルクロードと位置づけずともイスラーム美術、コバルトブルーの世界、そしてシルクロードの宝物…
これらがきわめて魅力的な展覧会だったことは、何年経とうと忘れられない。

もう少し長い前書きが続く。

個人的にシルクロードへの愛着はそれだけにとどまらず、中学の教科書にあった大谷探検隊、初代龍村平蔵の獅子狩文錦復元の苦労話で頂点に達した。
更にそこへ神坂智子「シルクロード・シリーズ」の連載が始まり、丁度楼蘭から発掘された美女の話も加わって、中学生のわたしの中でシルクロードへの憧れが完全に形成された。
これは2020年になろうかと言う今日も変わることなく続いている。

こうした下地があるわたしがこの「唐三彩 シルクロードの至宝」展を見て、感激せずにいられようか。
展示を見る間ずっと、シルクロードに関するこれまで見てきたもの・読んできたもの・聞いていたものが脳内再生され続けていて、目に入るもの+過去映像+音楽が三位一体となって、大いに盛り上げてくれた。
洛陽の流行ものを象ったらしき明器であっても、それは活きてわたしに向かっている。

プロローグ 三彩への道
ここでは後漢時代から隋末唐初の緑釉のかかったものと、北斉から隋の白磁が並んでいる。

馬と御者 まだ汗血馬は来ず、地の馬がモデリングされているが、どうも馬と言うより河馬、つまりカバぽい体型である。
どっしりした体躯に太短い脚の馬は東アジア原産の馬だったはずだ。

後漢のわんこは可愛いのばかりだが、これまた愛らしいわんこだなあ。お座りしながらベロ出して「わんっ」。
可愛い喃…
前漢だと犬は闘犬または食事になったようだが、後漢だと可愛いわんこになるのだなあ。

籾倉 どこかで見たような形だと思ったら、これは水木しげる「悪魔くん」に現れた家獣ではないか。松下一郎の方の悪魔くん。
壁面には猿などが貼り付けてある。

隋の牛車と御者 大車輪である。実に大きな車輪。それが二輪。

この頃のラクダ像はどうも怖い顔つきである。

貼花文壺も唐初期には手間がかかるという理由で廃れてきたらしい。
そう、それをせずとも「唐三彩」が出てくるのだから。

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1. 唐三彩 シルクロードの至宝
一口に唐といっても初唐と盛唐とでは美の価値観も異なる。
女性もほっそりからふっくらが人気になった。
なのでフィギュアも造形が変わる。

チラシの女性は唐初のフィギュアらしい。頬は豊かだが、後のブームのふっくらさんではない。
何かを持つのだが、てっきり箜篌のようなハープ系かと思いきや、蓮だった。
蓮がぐんにゃりと女性の肩に張り付いている。

楽人像 座って笛を吹く美人さんは頭上に扇状のまとめ髪、頭頂にお団子二つの美人もいる。

女子像 少女の像は両サイドに丸くまとめたもので、これは初登場のレイア姫のと同じ髪型。
ショールは紺色。ショールなのかベストなのかは知らないが、よく似合っている。

いよいよふっくらさんが登場。
小鳥を指に止らせたご婦人。髪も豊か。

コートを着た鷹匠も。
そして男装する唐美人たち。
幞頭(ぼくとう)というかぶりものにコート、それに乗馬ズボン。
中には頭巾姿もいて、颯爽と男装する。
それら騎馬人物たちがずらりと並ぶ姿は壮観だった。
数段の階段を上り下りする特別な空間に、その一団の姿がある。
そしてそのそばには、沙漠をゆくラクダたちのシルエットを、異国的な地模様を背景にしたスクリーンが垂れる。
いい演出だ。

パネルでフィギュアたちの発掘現場写真が紹介されていた。
騎馬だけでなく単独で牛や馬のフィギュアもいっぱいあった。

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ふくよかで愛らしい万年壺、三足盤などが「三彩」に彩られている。
それだけではなく、龍耳瓶も碗も可愛らしい枕もある。
小さな枕の用途は筆写時の肘枕だという説もある。
唐から奈良に来て、大安寺から掘り出された枕達。


・シルクロードの宝物 様々な明器と装身具
可愛らしい仕草を見せる獅子像、銀製鍍金の鴛鴦文簪、非常に細密の小さな杯など、綺麗でかわいいものが並んでいた。
こうした丁寧なつくりのもとを見てつくづくこの時代の豊かさを想った。

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2.伝統と革新の融合 唐三彩の諸相

紀元前ころから大体紀元後の数百年の間に作られ、土の中で長く眠ったことで色と組織が変性したガラス。
東地中海で生まれたそれらがここにある。

唐三彩を離れ、褐色・緑・藍色に染まったやきものもある。
白地の多い三彩もあり、変化に富んでいる。

トルコのリュトン、イラクの水瓶、エキゾチックなものたち。
中国の南北朝時代のサハリもある。ここでは「響銅」と表記されていて、その語感・音感にときめく。
しかも「王子形」ともついている。この王子は中央アジアの王子ではなく、我が国の聖徳太子のことだった。
そう、厩戸王子。法隆寺伝来品なのでそう呼ばれるそうだ。

・ミニチュア明器の世界
死後の世界でもまた楽しい暮らしを続けてほしい。
その願いを受けて愛らしいミニチュアが作られた。

小さくて愛らしいものばかりで構成されている。
その中で猿笛といって猿の顔面の笛があるのには笑った。

3.遼三彩とペルシア三彩
唐が廃れ遼が台頭し、遼は唐文化の継承者だという。

以前、遼の遺宝を集めた展覧会をいくつか見たが、唐文化へのリスペクトと共に自民族の嗜好・志向・思考が打ち出された表現だと思えた。
当時の感想。
宋と遼・金・西夏のやきもの
中国王朝の至宝
契丹 草原の王朝 美しき三人のプリンセス
ペルシアはこちら
ペルシャのきらめき

ここで面白かったのはまさかの人魚形水中ならぬ人魚形水注。
海から遠く離れた草原の民が何故人魚!?
口を開けた双髷の人魚。あーちょっとびっくりした。

ペルシア三彩は当然ながら今のイラン、9-10世紀の遺物。
ペルシアと言うだけでエキゾティックな想像と憧れに満ち満ちた夢の国。
ここの吉祥文様を描いたものが正倉院の宝物として伝わるのも素敵だ。

多彩釉線刻花文様  4つばかり並ぶがみんなヒマワリのようなはっきりした花が二重に咲いている風だった。
人物文はなかった。

・エピローグ 三彩スタイルの系譜

金時代の三彩は色彩がやや薄く、その色合いが好みのものが多い。
うすめの緑とオレンジという取り合わせも明るくていい。
蓮が黄色で表現されたものもある。
牡丹文枕は欲しい。

久しぶりに法花牡丹文梅瓶が出ていた。肩のあたりの瓔珞文がネックレスのような瓶。裾にはラマ式蓮弁。胴には蝶々もいる。
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もしかしたらこの展覧会以来の再会かも。
当時の感想
出光美術館の「花鳥の美」

法花花卉文象耳瓶 一対の瓶、本当にゾウさんがついている。みんなで四頭。耳がわりにびろんびろん。
こちらはやや薄めの紫に青の線。白花が綺麗。

明末期の緑釉香合が可愛い。鴨と鸚哥と。どちらもうずくまり。

さて懐古的な造形もよくした清朝。
三彩蓮葉形水滴  中に小さい蟹が貼りついているのがアクセント。

三彩扇形皿 これも可愛いなあ。

日本でも三彩を拵えている。
源内焼と九州の長与焼のが出ていた。
長与焼の碗と壺が可愛い。いいサイズなのだよなあ。


今回、画像が大きいのはやはりその嬉しさの表れ。
ぜひとも本物を見に行ってほしい。
8/25まで。

福徳円満を求めて 中国 元・明時代の華やかな工芸

例によってやることが遅いので、終了したばかりの大和文華館「福徳円満を求めて 中国 元・明時代の華やかな工芸」展の感想を挙げる。
あくまでも自分の記憶と記録の為だから遅くとも挙げることに意義があるんだ、と言い訳する。
ほんまに会期中に挙げてたら、もしかするとちょっとでも集客のお手伝いになったかもしれんのだが、それが出来ない。
いい展覧会だけに申し訳ない。

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今回は大阪市立美術館、白鶴美術館からも名品が来ていた。
数年前、関西で中国文物・書画を有する名だたる美術館の連合的な展覧会があったが、こうして相互に融通しあうのはまことによいなあ。
今、しょーむない政権のせいで近隣国と政治的に上手いこといってないが、東アジアの美術の素晴らしさを今こそ再認識しないといけないと思う。

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チラシの中央の爽やか系お兄さんは白鶴の五彩武人図有蓋壺のひと。
これに関しては以前に詳しく絵の内容についてかいた。
転用する。
五彩武人図有蓋壺 出ました、好きな壺。
明代のこれを見ると、それより時代の古い北宋が舞台の水滸伝を想ったりする。
今回丁寧に眺めましたわ。
チラシにある位置を正面として、身分のある人の前で武人二人が演武を見せる。周囲には文武官。彼らをじっくりと観察した。
正面から向かって右へ逆時計回りにみてゆく。
・椅子に座る武官の獅子噛みバックル、その獅子にも睫毛があり、この獅子は左側で行われている演武を見ようと横目になっている。
・そこからずーっと行くと、城壁らしきものが見えてくる。三段くらいの段差のあるやぐら状のものが整然と並ぶのが遠目にわかる。
・正面の真後ろ。白馬を御す人はターバンを巻いて目が鋭い。胡人かもしれない。彼らを先導する若者は旗を持ち、なにやら嬉しそう。その若者の被り物には山鳥の羽が一本ささる。蛮夷の将兵のようでもある。
イタリアのベルサリエーリはワサワサとつけていたな。
・どんどん兵が増えてゆく。やがて正面の向って左辺りに来ると、衛兵らしきものがいるが、その手にしている棒先の斧の背には龍が噛みついている。
龍もまた演武が気になるような顔をしている。
・壺の下段の青獅子たちは時計回りに走りながら後ろを見ている。みんな睫毛が長くて、のんきそうな顔つき。

そう、このお兄さんは「彼らを先導する若者は旗を持ち、なにやら嬉しそう。その若者の被り物には山鳥の羽が一本ささる。」の人。この山鳥の羽のことをなんというか知った。
「鶡冠」 鶡=山鳥(カツ)や雉の羽根つける冠。
そうなのか、ほほー。

景徳鎮の釉裏紅の艶やかな瓶や鉢が並ぶ。
雲鶴に鳳凰の図様の下にラマ式蓮弁の連続文があったり、色が変わって黄色と薄きみどりになったものや、魅力的な玉壺春もここに並んでいたりする。
やきものの美は一様ではないのだ。

法花菖蒲文鉢がある。これは初見。この大和文華館の所蔵品と言うことだが、見た記憶がない。
案外大きい。青地に白花、葉紫。削ぎにはオモダカも咲く。わたしは法花が好きなので嬉しい。

五彩の龍文はここにある分は皆「大明萬歴年製」の銘が入る。
めでたい柄だけに中には更に宝珠、巻物が加わるものもある。
龍の爪は五本。皇帝の龍である。
ウサギと鶴の取り合わせもある。可愛い。

赤絵で面白いのは角鉢で、外側のざくろの絵だがヘルメスの杖状になっていた。
これは意図したものではなく偶然なのだろうが、上部に羽を付けたら完全にそれなので、ちょっと面白かった。
尤もヘルメスの杖は蛇が絡んであの形なのだったか。

古染付、祥瑞の良いのが並ぶのを見ると、この暑い日に気持ちよくなる。白に青のとりあわせはやっぱり涼やかだ。
富士山型の鉢の見込みに山岳風景、栗鼠と山査子、網目に魚、桔梗型香合。この香合は安政二年の型物香合番付で前頭を務めていた。
古染付の次世代が祥瑞だが、その後はもうそろそろメイド・イン・ジャパンの染付が世に広まるころか。

宇佐八幡宮境内から出土したと伝わる元の青白磁の壺が見事だった。これは首なしだが青銅器の尊と同じ型のもので、復古的と言うか懐古的なやきもの。
それが首なしになるとまた感じが変わって面白い。

白磁黒釉印花雲竜文鉢 ガワは別にいいのだが、内側ではえらく修羅場な図様である。

大阪市立美術館から豆彩四果文鉢がきていた。桃がとてもかわいい。
白鶴からは青花花鳥獣文六角大壺  これは吉祥文で「爵禄封侯」と中国語で同音の「雀鹿蜂猴」の登場する絵柄。

さて久しぶりに清水裂。めでたい動物がいっぱい。
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細部を見よう
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めでたいですな。梅の花というのはまことによいものです。

ところでなんで「清水裂」というのかというと解説によると「茶の湯で紺地に梅に鳥の取り合わせを言う」とあるが、以前別な説明も見たように思うので、いつか調べなくては。

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赤絵ケイチョウ形銚子 この字は出なかった。ケイチョウの意味は鴛鴦に似た鳥の名前らしい。派手な色合いである。
こんな字。イメージ (2181)

堆朱、堆黒、存星、螺鈿、灑金といった工芸の名品を見る。
螺鈿山水人物文座屏
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丁寧なつくりだなあ。

白鶴の盒子には傀儡を見る母子も刻まれていた。
猿回しと猿たちの図の螺鈿は大阪市立美術館。チラシの下の。
猿たちの顔が…
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搾取されてるよなあ。

灑金はサイキンと読む。日本の蒔絵の梨地と大体同じらしい。そそぐ・きんと言うほどの意味があるようだ、字を調べたところ。

次回はどうにか早めに挙げたいと思う。

奈良を観る なら観光記展

奈良の昔の風景写真、神戸の昔の祭りの様子、丁度いまそれぞれの地でその展示がある。

奈良市美術館とはどこか。
旧奈良そごう美術館がその場にあたる。
2008年にポップアップ絵本展を見て以来の再訪となる。
かつて奈良そごう美術館だった頃はよく出向いた。
そのことは先日ここに挙げている。

明治初期から昭和までの奈良観光の関連資料が一堂に会しているのはとてもよかった。
「奈良を観る なら観光記」展は東博の古写真、奈良市史料保存会、出版社、奈良市写真美術館、個人コレクション、鉄道会社の資料で構成されていた。
あいにくなことに図録はない。あれば買いたかった。
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・近代奈良観光の始まり
横山松三郎の明治五年の東大寺、興福寺の写真が並ぶ。
まだそんなころなのでちょんまげの町人が映っている。
大仏殿,南大門、鐘楼、夏の二月堂…
興福寺の金堂、三重塔、春日大社、薬師寺東塔…
廃仏毀釈の脅威が…

同時代の明治初期の猿沢池ばかり集めたものが面白かった。
手彩色がなかなかきれい。
色々な角度からの猿沢池風景。
右手に南円堂、中に三重塔、更に電柱と金波楼もみえる。
ガス灯も出てきた。きぬかけ柳、采女社、そして「五十二段」の様子が二態。
全部ある版と半分くらいで踊り場が来て、それから続くというもの。
明治28年頃のはそんな感じらしい。
人力車もたくさん停まっている。
今も奈良には人力車がよく働いている。

その段とはこれ。わたしが〇をつけているもの。
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空海手植えの松を「花の松」といい、それと三重塔のショットもある。
これは大正のもの。
今もこの松あったかなあ。ああ元のは1937年に枯れ、後継も2008年に枯れたのか…
この展示に出ているのとは違うが、こちらのサイトに古写真が年代ごとにたくさん集められている。


芸術的な写真は既に明治中期にある。
春日大社参道に一頭の鹿がいて、どこかを見ている。
こうした構図はやはり芸術写真でしょう。
もうこの時代にこうした意識を持つ写真家が生まれている。
意識的か・無意識かは別としても。

明治後期の大仏殿の屋根をメインにした写真にはシビがなく「鳥衾式」のものがついていた。
こういうのも面白い。

明治35年 奈良名勝独案内図 フルカラー。明治の浮世絵と同じく赤が強く発色している。右は白毫寺まで。既に博物館の近くの陳列館も描かれている。
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明治41年 奈良名勝全図  こちらは更に色彩も洗練されてきた。建物名は赤い名札に記されている。16師団53聯隊兵営、女子師範(今の奈良女子大)も。

奈良ホテル開業の絵ハガキもいい。
池から見える奈良ホテルの姿。
今もいい眺めだが、当時は更に素晴らしかったろう。
久しぶりにメインダイニングに行きたい。
大正期の奈良ホテルの様子を写した絵ハガキもある。もうこの時代は楽しめる時代になっている。
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今は鷺池と呼ばれる蓬莱池、そこには浮御堂。大正9年の風景。
同年の猿沢湖畔の絵ハガキもいい。鹿に俥に…

観光マップ、いいなあ。
実景図、真景図などが色々。
明治26年 月ヶ瀬梅溪16勝地真景図  躑躅川も描かれている。梅だけではなく躑躅もか。川の名前だけであっても雅なものよ。

奈良名所早見図は大仏殿が中心。日露戦争前くらいはもう観光地として東大寺も興福寺もなんとか生き返りつつあるのだな。
明治33年 奈良実測図は珍しく石版の地図で、周囲にコマ絵のように各地の名所が描かれているが、ちょっとばかり當麻曼荼羅ぽくも見えなくもない。

名所絵ハガキも色々と工夫が凝らされている。浮世絵風美人と名所の写真、カラフルな装飾と名所、色々と楽しい。
博物館、二月堂、猿沢池、奈良公園…

明治42年に東京から汽車で一日かけて志賀直哉・木下利玄・里見弴が奈良へ来た。
最年長の志賀でさえまだ20代半ば、最年少の里見弴も随分若かった。
かれらは楽しく奈良ツアーをしている。
遥か後年の昭和16年、里見弴は当時を振り返り、その時購入した絵ハガキやスタンプなども含めて「若き日の旅」を上梓した。
それからさらに40年余り後に里見弴は没した。
わたしはこの本を1993年頃に入手して、今も折々大事に読み返している。
かれらが購入したと同じような絵ハガキ、地図、ガイドブックなどがここにある。

大正期の絵ハガキの袋絵が鹿をモチーフにしたものが多い。各種あるが、偶然か、みんな鹿だった。
こういうのも面白い。

勧業博覧会ポスター
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昭和になり、吉田初三郎の鳥観図の隆盛が奈良観光にも来た。
県庁の近くにメソジスト教会もあり、刑務所は今の形だし、寺もすっかり回復している。
まだ大軌鉄道の頃。

旅行ガイドブックも新書版のが出ている。
江戸時代からこうした本はよく出ていたが、活字印刷が主流となったおかげで読みやすい。
そうそう、大正7年では今の近鉄奈良駅から大阪(鶴橋、上本町、難波のどれとは書いてないが)まで55分らしい。
案外今と変わらないな…

博文館が刊行した「鉄道省 鉄道旅行案内」は挿絵を吉田初三郎が担当しているので、とても魅力的。
この頃の博文館はいい本をよく出していた。
これは横長版。

大軌電車沿線案内図絵 附吉野電車 大正末 いいなあ、これも。吉田初三郎。吉野山だけでなく高野山も描かれ、信貴山、生駒、更には遠く富士山、釜山、上海、樺太までも。
嗚呼、大日本帝国よ。奈良県内ではもう天理が大きく描かれていた。
そういえば大本教やひとのみち教団は大弾圧を食らったが、天理はなんとかしのいでいたな。
…どうでもいいことだが、この三つの本拠地にわたし行ってるな。金光教にはまだ行ったこともないが。

奈良電車沿線案内 昭和3年 この奈良電気鉄道というのがやはり今は統合されてるわけだが、後の昭和6年版もどちらも吉田初三郎の絵。
カラフルで綺麗。橿原、天理、笠置、柳生、伏見桃山まで。
あー、なんか行きたくなってきたよ。
伏見桃山は近鉄・京阪・JRがすごく近い所に集合してて、梅田もびっくりなんだが、誰もこれに言及しないな。
けっこう桃山辺り好きなんよ、わたし。

畝傍線開通時の西大寺駅 大正9年  立派な駅の写真。
国鉄奈良駅の写真は昭和9年。今移動したあれだ。いい建物…

参宮急行名所図会 昭和6年  吉田初三郎 伊勢から松阪、津、名張、上六へ展開してゆく。
来月お伊勢さんに行くことになったのだが、今も上本町がお伊勢さん向かうベースやもんなあ。

信貴生駒電車沿線案内 大正11年  生駒ケーブル、索道な。ほんわかしてる。
生駒のケーブルは可愛いよ。信貴山はわたしの生まれる前に一家でお参りしたそうな。
それ以来わたしは行ってないので、いつか行こうとは思っている。

吉野鉄道名勝案内 大正2年 吉野山の名所と「有名人」と。如意輪寺、いがみの権太などなど。
更に表紙に武士が戸板に歌を記す姿を転用してこの本のタイトルを記させている。
「歌書よりも軍書に悲し吉野山」芭蕉の弟子・支考の句。

写真が色々出てきた。
レトロなボンネットバスの春日奥山周遊バス、大軌奈良駅構内などなど。

そして昭和15年つまり紀元2600年のプレイボール…やなくて、その年だけにやたらと橿原神宮の栞や案内が並ぶ。
やべー時代だわ。
21世紀の今に来年は紀元2680年とかそんなこと言うような議員がいよんねんから、もぉあかんわな。

エログロナンセンスの時代の楽しい風物画もある。
奈良名所風物画 物産・木辻遊郭 昭和10年  鹿の角、一刀彫、赤膚焼などの工芸品の横に遊女の絵がある。
木辻遊郭といえば小出楢重がそのあたりに下宿したことがあり、キョーフ体験を面白おかしく記していた。
笑って苦しかったわ。

昭和初期の奈良シールが可愛い。
四種とも。
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宿屋の栞や引札がある。宣伝文句が面白い。
「梅川忠兵衛、水戸黄門、荒木又右エ門も宿泊」…まあな。
旅館いんばんや、いろは館、小刀屋、月乃家、玉屋本店、吉田屋、佳よ志本店、大仏館、好生館、奈良ホテル…

奈良市観光課のポスターでいいのがあった。昭和20年代
鹿たちが一斉に走る姿を横からとらえたもの。躍動感があった。

昭和40年代にはディスカバリージャパン。
特急あすか号、王寺駅を出るD51、奈良大和路仏像ポスター。

イラストマップ奈良見て歩き いかにもその時代らしい可愛い絵柄のもの。ドリームランドもあった。

・奈良への誘い 文士と奈良
入江泰吉先生のお写真で紹介されている。
学生の頃、少しばかり入江先生に教わったので、今も入江泰吉「先生」。
薬師寺東塔遠望 亀井勝一郎「大和古寺風物詩」  やはりよい。

興福寺阿修羅像 堀辰雄「十月」  朱色の顔、金茶に薄緑がかった髪や肌。塑の美とでもいうのか。

東大寺広目天像 會津八一「南京新唱」 びるばくしゃ まゆねよせたるまなざしを まなこにみつつ あきののをゆく
この眉根を寄せる広目天については折口信夫「死者の書」にもある。

中宮寺菩薩半跏像 和辻哲郎「古寺巡礼」 和辻の呼び掛ける「わが聖女」こそ、この像。

唐招提寺金堂列柱 會津八一「南京新唱」 おほてらのまろきはしらのつきかげを つちにふみつつ ものをこそおもへ.  やはり秋艸道人の短歌の美しさにしびれる。そして木の文様をも写し取る入江泰吉先生の写真の美…

奈良大和路仏像ポスターについてはまたいつか。




三国志展は燃えるぞ その3

いよいよ第三回目、たいていここでフィナーレ、前中後編、序破急、三代目は唐様というやつさ。
全然関係ないな…

終わりの始まりはやはりこの方
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諸葛亮孔明

川本喜八郎の人形のこの気品…
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細部をみる。
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白羽扇、素敵だ。
白皙の美貌の方でしたなぁ。


こちら打って変わって赤銅色の孟獲。
この冠の羽根のことなんていうのか知らなかったが、つい先日大和文華館の展示で知った。
「鶡冠」 鶡=山鳥(カツ)や雉の羽根つける冠。
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こちらは亀の乗っかる金印
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マキビシも。
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甘寧の持つ弓が弩です。
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ところで1993年の正月に大阪の光明ホールと言うところで川本喜八郎の三国志人形展が開催されたことがある。
わたし三度ばかり行ったが、思えばこれだけの三国志人形を見るのはあれ以来ではないかな。


さて三国それぞれ。
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横山さんのマンガの中で孔明が蜀へ行くと表明するシーン、すごく好きだ。
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なんだか雄大な心持になるのだよ。
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いろいろグッズ
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マスチフ犬のような感じの犬
「銀牙」でいえばベン。
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レリーフ、いいね。
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銅鼓。
これはもう完全に「孔子暗黒伝」。
作品を読んでから数年後に初めて東博に来たとき、改装前の東洋館でこれを見た時「あっ孔子暗黒伝だ」と思ったものな。
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ハノイの歴史博物館にもとてもたくさん銅鼓があった。
東南アジアの産物。


ついに巨星墜ちる。
曹操の最期。
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近年になりその墓陵が発見されたそうな。
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再現されていた。
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案外質素なのは曹操の合理的精神の現れのようで好ましい。


そして曹植。
父や兄と違う温和なヒトだが詩人の血は父からの遺伝。兄嫁への慕情が憐れ…
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時折このひとに鎌倉三代将軍実朝を想うときがある。


遺物あれこれ
笑う犬
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出師の表
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秋風五丈原
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道半ばにして…
横山さんの素晴らしい原画


最後に生き残ったものが笑う。
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いい展覧会だった。
燃えたなー!
また行くけれど、ほんと、自分が三国志ファンでよかったと思うばかり。
ドキドキするよ。
いいものをみせてもらって本当に良かった。
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