美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

江戸の生きもの図鑑 ―みつめる科学の眼―

最近「博物画」を見る機会に恵まれている、と思う。
2013年には「大野麦風 大日本魚類画集と博物画にみる魚たち」展を見た。
あれは待ち望んでいただけに二度も見た。
あの展覧会を見たからこそ、博物画への愛が生まれたと言っても過言ではない。
当時の感想はこちら。大概長いな。

薔薇を特に愛したルドゥーテの絵もそう。
それからキャプテン・クックの航海に同行したバンクスが諸国の植物などを記した、キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展も見たな。
最近では静嘉堂の「挿絵本の楽しみ」展もそう。当時の感想はこちら

徳川美術館で「江戸の生きもの図鑑 ―みつめる科学の眼―」展をみた。
展覧会の紹介文をサイトから引用する。
「博物学は、動植物など自然物を観察し、その種類や性質・産地などを分類して記録する学問です。日本では、東洋医学における薬学である「本草学(ほんぞうがく)」として古くから研究され、江戸時代には中国や西洋の新たな手法による研究の影響を受けながら大きく発展しました。「図譜(ずふ)」はその研究成果の一つで、今でいうところの図鑑であり、対象が正確に、わかりやすく記録されています。ただ、写真のように対象をあるがまま写し取るというわけではなく、科学の眼で取捨選択された情報によって構成されているのが特徴です。
 知的好奇心と、探求への情熱に満ちた博物図譜の諸相をご覧いただくとともに、伊藤圭介らの活動を中核とする尾張地域の博物学についてご紹介します。」

とても関心が湧いて、いそいそと出向いた。
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展示は蓬左文庫で行われている。
徳川美術館の武具・能・茶の湯・嫁入り道具などをみてから文庫へ入る。

1.美しき図譜

本草図説 195冊のうち 高木春山筆 岩瀬文庫  これがまた途轍もなく凄い。様々な「生きもの」が描かれている。
ここにあるのは鮎、オコゼといった魚類、芍薬、烏頭の漢方薬になる植物、そして見開き+継ぎ足し紙に描かれたセグロサギ。
フルカラーでこれらが非常に丁寧に描かれている。
この感想を書くにあたって徳美のサイトを訪ねると、紹介があった。
「植物だけでなく、昆虫・動物・鉱物など、あらゆる自然物を採り上げた手描きの図譜です。作者の高木春山は、全ての項目に詳細な図が備えられた図譜を製作するため、遠くまで実物の調査に赴き、財産をなげうって「本草図説」を製作したと伝えられています。」

こうした情熱があるからこそ、後世に残る名作も生み出されるのだなあ…
先日初めて岩瀬文庫を訪ねたが、あの膨大な知の集積施設が無料だというのも驚いたな。

この本は東博にもあるそうで、画像検索可能。
ちなみに岩瀬文庫のサイトには動画まである。
そして国立国会図書館デジタルコレクションはこちら

更に荒俣宏さんの本まであるようだ。

本草図譜 岩崎灌園著 1830 蓬左文庫、岩瀬文庫  日本初のフルカラー本だそう。「山草」「喬木」の項目をみる。
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この本は国立国会図書館のデジタルコレクションでも見れる。こちら

国立公文書館も一部公開している。

やっぱり博物画を大事に思う人が多いということなのだ。

草木花実写真図譜 川原慶賀著 江戸―明治 蓬左文庫  先般展覧会があったが、行き損ねたが、こうして一部でも見ることが出来て嬉しい。
凌霄花、栴檀、辛夷の絵が出ていた。色々詳しいことがわかりやすく書かれていた。
国立国会図書館デジタルコレクションはこちら
この本は他に早稲田、長崎大、外国にも収蔵されている。

飯沼慾斎というヒトに描かれた魚図鑑がある。いずれも名古屋市東山植物園蔵。
魚譜  ウスバハギの大きいのがページいっぱい。  
魚介譜  白描によるオコゼなど。
禽虫魚譜  …リアルやな。
幕末から明治のヒトは工芸だけでなく絵画も「超絶技巧」な人が多いのだろうか。

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伊藤圭介筆・編の著作がずらり。名大附属図書館蔵 江戸―明治の刊行
錦窠植物図説 きんか・しょくぶつ・ずせつ。
この「きんか」シリーズがたくさんある。錦窠は伊藤の号。
シーボルトの弟子で、日本初の理学博士。随分長生きし、「花粉」「おしべ」「めしべ」という言葉を拵えた人だそう。
・・・花粉症のことを知ったらどうされていたろう。

ところで展示説明によると、
「圭介の図譜のうち伝存する手稿本(しゅこうぼん)の多くは、自作に限らず蒐集した図や印葉図(いんようず)(植物の拓本)も貼り込まれています。」 
とのこと。 
出ていたのは桐の写生、クルミなどの拓本、椿もある。

全く知らないことばかりなので、とても興味深く見、そして後日こうして調べるのが楽しい。

虫譜、魚譜、獣譜のシリーズもいい。グジが出ていた。アマダイ。
そして伊藤の使った顕微鏡もある。ヨーロッパ製。島津製作所はまだ。

安喜多富貴印葉図 宮越精之進作・伊藤圭介識 1882  拓本を取ることで葉脈の細かい所まで余さず写せる。
以前に聞いたが、写真よりも正確なのだそう。
巨大なフキの葉っぱの印葉。コロボックルが雨宿りに使えそう。

萬花帖 巻9 24冊のうち 山本章夫筆 江戸―明治 岩瀬文庫  ユリの絵が選ばれていた。山本は大阪の森徹山に学んだ。
他に果物で葡萄、禽品で鶉が出ていた。
そして獣類写生 ミダヌキ(アナグマだろうか)、ベロを出す豹の子、虎子、毛並みのいいロバなどなど…

このコーナーだけでも随分楽しめた。

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2.日本の本草学略史

・江戸時代前期
本草綱目が出ている。1ページに4コマずつ展開する。
何度か見ているが、本当に興味深い。
貝原益軒も本草関係の本を出している。

・江戸中-後期
平賀源内らの登場。時代がいよいよ博物学を更新・昂進させる。
阿蘭陀のを元にした本草ものもある。菩提樹の成分もかいてある。
リアルな絵が多い。
しかしどこか優しい。

3.園芸の流行と植物図
江戸が世界的にも植物大好き時代だということはよく知られている。
品種改良もうまいこといった。
江戸の染井、上方では平井山本が植木屋さんの総本山。
接木太夫の碑が山本駅のそばにある。
尤も接木太夫は江戸時代より百年前のヒトだが。

菊、朝顔、万年青などの本がずらーっ椿の比較図もある。可愛いなあ。
万年青と言えば明治のうさぎブームのとき、万年青もブームになっていたのだったな。
投機目的なので熱が下がれば早く人気が無くなる。

4.尾張の本草学
大名に博物学ブームが来たというのは知られていること。
去年、和歌山まで殿様の所蔵する博物学関係の品々をみてきたところ。
当時の感想はこちら
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それにしても本当に奥が深い。
植物、禽獣、さまざまなものを描き・調べ・発表する。
ここでは伊藤圭介の本がたくさん出ていた。
標本も素晴らしい。

5.尾張の殿様と本草学

百鳥図 1886 立派な図鑑だ…中国の花鳥画写しと言うことだが、東アジアの花鳥画の系譜を想うと、本当にこの本は素晴らしいと思う。
西は西。東は東なのだが、植物画というか、花鳥画というものがある界隈に活きていることが嬉しくなるのは、こんな時だ。

ところで天保4年(1833年)にアザラシだかオットセイだかアシカだかか来たらしい。見世物でなく、勝手に泳ぎ着いて。
銅版画もある。置物まである。どうやらゴマフアザラシだったようだが、大騒ぎになっていたようだ。
全然関係ないが、再開したNHKのコント番組「LIFE」でオットセイに扮した連中の話があり、ハーレムを作れなかったオスの悲しみをやってて、ラストのオチがまさに落ちで、笑えたなあ。

大名自身の仕事もある。
砂糖鳥というインコの仲間の鳥の絵を描いた人もいる。
尾張家14代目さんは自ら収集するだけでなく執筆もしている。
時代だなあ。泰平だからやっばり学問しなくちゃな。
中でも群蟲真景図はコウモリやトンボもいる。よく出来ていて面白い。
構成もいい。

標本もとても丁寧に拵えて飾りも綺麗にしている。縁は墨流しにしてみたり。
植物標本は「腊葉」サクヨウというそうな。

この展覧会でいろんなことを教わった。
チラシの魅力に引っぱられて本当に良かった。
図録はないが、今の時代はありがたいことにある程度はデジタルデータを見ることも可能だ。
とはいえこの集まりを再現するのは不可能。
やっぱり実際に行くのがいちばん。
7/9まで。


2017.6月の東京ハイカイ録

土日と都内にいた。
一泊二日なのでキャスターをやめたのが失敗の元。いや、カバンをロッカーに預けなかったのが失敗の元と言うべきか。
わたしは近年肩こりに悩まされているので、重い荷物を持てない・持ち続けられない。
にもかかわらずうっかり持ち歩くことにして、それで一挙に肩がアウトになってしまった。

丸ノ内線の東京駅でEXIC利用者特典(静岡より向うのヒト限定だったかな)で、メトロ&都営48時間1200円と72時間1500円チケット購入。
今回は48時間チケットで動きます。遠出したら差異を払えばよいのだよ。
さて新宿へ。

損保ビルの敷地内、掘り始めているな…
ランス美術館展をみる。
広島、静岡、新宿、名古屋と巡回するが関西には来ないようで、今回見ないと名古屋ツアーを組まなければならなくなる。
珍しく関西飛ばしされたな。

なかなかいい作品が来ていた。それと向こうでレオナールになった藤田が大事にされてたのがよくわかる。

紀伊国屋の地下でランチ。けっこう水山が好きなのよ。ここの他にもあちこちあるけど。
もしかすると紀伊国屋の地下で、ということが好ましいのかもしれない。

明治神宮に出て太田へ。国芳・国貞の比較による馬琴の八犬伝と弓張月。
数年前の千葉市美を髣髴とさせるね。馬琴好きなわたしとしては楽しい。
やっぱり人生の初めに「新八犬伝」に出会えたのは本当に素晴らしいことだと思う。

手ぬぐい屋さんを見る。木版の染物は可愛い喃。
丸善の一階にも和手ぬぐいがある。
わたしは日本手ぬぐいが好きなので色々みるが、今回はパス。

渋谷へ行くには時間が足りないので、そのまま横浜へ。
かなり気持ちよく寝てて、みなとみらいであやうく飛び起きる。
この沿線が出来て本当に良かった。

ハマ美で明治の東西交流ファッション。いいなーいいものをたくさん見たわ。
特にアクセサリーが素晴らしい。
しかし濱焼にしろ芝山にしろ明治のものであり過ぎた。

常設の洋画・版画取り混ぜた風景画とピクトリアリズムの写真が素晴らしい。
正直、これらだけでも物凄い価値がある。いいものを見た。


国立新美へ。
ジャコメッティをみる。
彫刻より素描などの方が随分と好ましい。
矢内原伊作との関係性にときめく。
チェースマンハッタン銀行前に設置されてる三点の像のみ撮影可能。
全然関係ないが、わたしがこの銀行を知ったのは、小池一雄x平野仁「サハラ」で、アメリカ政府の依頼を受けた女外人部隊出身の5人組がこの銀行へ強盗に行くことから。
あの作品は1975年頃だから、既にこの彫像三態はその場にあったのだ。

この日はなんとこの4つだけで終わり。
てんぷらとうどんが食べたくなり、てんやへ。
まぁまぁ欲望も満たされたのはいいが、肩の重荷は強く、定宿でぐったりと早寝した。

翌朝、紫陽花探しの散歩に出た顛末はこちら。

芦花公園へ。
・・・ウテナの隣の下駄ばきマンション(不動産用語で1,2階が住宅でなく店舗や事務所などのマンション)、店舗が替わってた。
わたしが最初にここらに来るようになった頃はサンマルクのベーカリーレストランで、つぶれた後はどこかの女子大の施設になり、そして今は成城石井になっている。
芦花公園の商業の状況というのはよくわからない。
以前伊勢丹クィーンズだったところは今ではスポーツジムになった。
この界隈はご飯を食べたりお茶したりするところが圧倒的に少ないなあ、とは常に思う。

世田谷文学館、開館前から並ぶ。ムットーニ展。
1998年の今は亡きキリンプラザでの展覧会からずっとファンなのだが、20年後の今もやっぱり好きなまま。
本当に面白いし興味深い。一人で拵える総合芸術。音楽も人形も物語も電動もなにもかも。
たまに「押絵と旅する男」を思い出すこともある。
まだ60.あと30年は現役でいてもらいたい。そしてさいごは自身の「お話の玉手箱」の登場人物の一人として、永遠に活きてほしい。

喫茶どんぐりでランチにする。ミートスパゲティ。これはこれでいいよ。
混んできたので早めに出る。
一休みしてから次は常設。

村山槐多の「二少年図」が旧所蔵者の乱歩のオマージュと共に壁掛けされている。
そして松野一夫「黑死館殺人事件」、竹中英太郎「鬼火」の挿絵が数点ずつある。
非常にゾクゾクする。嬉しい。
他にも須田国太郎、石井鶴三らの雑誌表紙絵もみて、いいリニューアルだと思うなど。

芦花公園から明大前で乗り換えて神泉へ。
神泉から松濤美術館への道のりがわからんがな。
なんで途中で標識なくなるかな。

なんとかたどりつく。松濤美術館「クェイ兄弟」展。
これがもう・・・なんというか、なんでこの双子がアメリカ人なのかがわからない。
昔からアメリカ人だと思ってなかったが、アメリカ人なのだということでひっくり返りそうよ。チェコの影響強いよなあ。
悪夢に溺れて出口がない…

いつもの自分に戻ろうと近所の戸栗美術館へ。
もう雨ですな、足元が揺らぐ。
初期伊万里をみる。しかしクェイ兄弟の影響下にあるからか、染付山水文をみても不穏な影を見出したり…
まぁなんとか戻ったのはやっぱり鍋島くらいから。
いいのを5点ばかりみて、キモチいい。

汐留ミュージアムで今月の東京ハイカイは終わり。
「日本、家の列島」展…久しぶりにアタマが真っ白になった。
展覧会としては大変優れた内容だとは思う。
しかし自分のアタマがついていかない。
ブログ、わたしには挙げられない。
わたしのブログは大半が感想だからだ。
建築に関わる人は現役も学生もみんな見る方がいい。
様々なことがここから学べると思う。施主と建築家との関係性などなど。

わたしは近代建築を愛するだけ。ただそれだけ。

疲れ切っていたので、日本橋についてから東京駅までの道のり、なんだかんだとお菓子を買い歩いてしまった。F店がよくなくてM店はいい、とか色んな情報を入れながら歩く。
そしたらあっという間に出発時間が近いじゃありませんか。
わたくし、崎陽軒弁当が欲しかったのになくて、野菜たっぷり400kcal弁当を買いましたがな。(白和えがやたらとおいしかった)
まあまあエエ具合に大阪へ。

一泊なのでタクシーで帰らず電車で帰る。
自転車の延長金を払い、にこやかに挨拶して帰宅。
猫は誰も歓迎1つしない。可愛がってる猫は遊びに出かけたまま。

お風呂を追い炊きしたらまさかのお湯が半分くらいの水位に下がってて半ば空焚き。
空焚き防止機能がないんか?!
お湯を全部落として、次は自動お湯はりと追い炊きとをしてみるつもり。それで問題ありなら、数か月前の給湯器交換工事、どうなってんだということになるな。
遊びに出て帰宅しても安寧はなかなかないもんよ…
ということで来月は三日間都内に潜伏し、ハイカイする。

紫陽花をみる

定宿の前の道路はこの時期は紫陽花であふれているので、いつからか遠出して紫陽花を見る、というのをやめてしまうようになった。
それで昨日・今日と都内にいて、今朝紫陽花見ようと表に出たが、その紫陽花がない。
少し北へ上がってもなかなかない。ようやくみつけたのはちょっとしぼみつつあるガクアジサイ。
丸玉の方のはない。おかしいなとまたまた歩いて歩いてようやくみつけたが、だいぶ萎れていた。
残念やな、ちょっと時季が遅れたみたい。
そやけど、そこから横に入るとまだまだ咲いていたのでよしとしよう。

で、昨日は横浜美術館に行き、日本画室をのぞくと見えたのがこちら。
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安田靫彦 窓
これ、なんで「窓」いうタイトルなのか長らくわかってなかったが、よくよく見れば、一種の錯視、トリックアートなわけで、花は外に咲いていて、窓際に空の花瓶があるのが、そこに紫陽花を生けたあるように見えるように描いてはるのです。
そう、靫彦にやられましたな。
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ガクアジサイが窓から顔を見せてる。
一枚板のええところに赤絵の水滴、青磁の透かしの筆立、文鎮はよう見たら犬みたいなもの。
ええ絵ですな。

それでちょっとした公園に行くと紫陽花はこんな感じにあったりする。
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紫峰 青梅の頃
山吹の葉と青紅葉がいっしょ。

子どもの頃はこっちの丸いのが好きだった。
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しかし大人になるほどガクアジサイの良さに惹かれるようになった。
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まあそうは言うてもこんな風に丸々してたら、やっぱり可愛いてしかたないと思いますな。
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紫陽花は絵もいいが工芸品になってもよろしい。
螺鈿でキラキラするのを見ると嬉しくなる。
琳派の紫陽花は絵でも螺鈿のようにキラキラ。
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抱一と雪佳
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俳画にも紫陽花のええのがあります。
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白い紫陽花も好き。明月院に行った時、雨上がりで無人で、という奇跡みたいな時間をもらいまして、堪能したなあ。
そのとき白い紫陽花がワイシャツみたいな白さで綺麗なと思ったなあ。
あれからなかなかそこまで白い紫陽花にはお目にかかってへん。
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溺れてしまいそうな紫陽花もある。
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蕩けてゆく…

まだ盛りのところがあるなら行きたいと思う。

京都文化博物館の常設展は楽しいゾ

テーマを決めての展示だから、「常設」というのもちょっと違うのかもしれないが、京都文化博物館の2階の展示室はいつも面白い。
今回は、先週終了した「いつだって猫」展に協賛?対抗?して「京都だって猫」展、「大津絵」展、それから祇園祭コーナーでは放下鉾の展示があった。

「京都だって猫」とかいて「ウチだって猫」と読む。そう、ここにはようさんニャンコいてますのよ。
なにしろ猫好きの帝もいてはったし、猫寺もあるし、養蚕関係で洛中ではないけど狛犬ならぬ狛猫さんもいてはるのだ。
尤も京都には他に狛猪もいやるけどね。

猫が活躍と言うか罪作りをしたのが源氏物語の若菜上。
猫が飛び出したおかげで罪深い恋が育まれ、多くの人が苦しむ原因を拵えた。
しかし猫に罪はないし、このシーンはドラマチックなので、みんな描く。
ここには西川祐信の絵があった。
更にその二次創作もある。昔は「見立て」と言うたのですね。
女のヒトの着物の裾にいる猫の絵

色んな猫絵がある。
西村五雲の猫スケッチのリアルさ。いいなあ。
92年にここで「動物に魅せられた京の画家」展があった。五雲の師匠・弟子と三人の展覧会。

子猫同士のこんな様子を見たら、今ならすぐにSNSに挙げるね。
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リアルな様子。耳を後ろにしてる猫の表情がいいなあ。




三輪晁勢の日光眠り猫の絵が可愛い。こういうのを見ると日光に行きたくなるな。
高山泰造の陶芸猫もいい。リアルな表情と様子が可愛い。

朏コレクションの猫の郷土玩具もたんまり。
このみかづきコレクションは90年にみたのが最初かな。
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住吉っさんの「初辰さん」もいてやる。小さいのからだんだん巨大化してゆく猫やん。

次に祇園祭コーナーへ。放下鉾特集。
何というても胴懸の朝鮮毛綴が素晴らしい。この虎ちゃんが可愛い。
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他にも獅子のシリーズがあるが、それがもう丸い目玉の可愛い怪獣みたいな奴らで…
珠取り親子獅子なんかは絵本作家・瀬川康男の原画かと思うくらいのファンキーさがあった。
こういうのを見ただけで嬉しくなる。
追記:京都文化博物館のツイートにいてた。


来月の祇園祭が楽しみ。

最後に大津絵。
昔ながらの素朴なものではなく、大津絵にインスパイアされたり、自分らも新しいのを拵えよう、とした画家たちの仕事が集まっている。
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京都画壇の寄合大津絵屏風から。元からかけ離れないのが多くて、それだけに面白味が増す。
面白くないのはその遊び心を無視したというか主旨をスルーした麦僊くらいで、あとはみんななかなか。

リアルな絵で鬼の念仏や浮世又平を描いたのは鈴木松年。リアルにすると怖いがなw
浅井忠のデザイン感覚と遊び心が横溢した大津絵もある。

一方、小川千甕のように「西洋風俗大津絵」もある。
西洋ハイカイの頃に見かけた人々の様子を大津絵に倣って描いたもの。
それだけに楽しいものが多いし、また「これはあれかな?」と思うものも色々。
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上段は元の大津絵に似せようとした、純・大津絵風な楠瀬日年の絵、下は多分それらをモチーフにしたのだろうな、という並び。
洒脱で楽しい。

こういう展覧会はいくらでも見ていたい。
6/18まで。

時を映す女性像

岩屋のBBプラザ美術館で日本の洋画家による女性を描いた絵をみた。
日本画と違い洋画で「美人画」と言えるものは案外少ない。
なので今回のコレクション展も日本画における「美人画」と言えるものはあまりない。
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ルノワール 薔薇をつけた少女 バックには薄い群青を拡げ、少女はオレンジ系の暖色で統一している。肌の匂いまでしてきそうな絵。

ローランサンがバレエ・リュスのために描いた「牝鹿」のシリーズが出ていた。いずれもとても愛らしい。
この「牝鹿」はストーリーのないバレエで、「綺麗でおしゃれなバレエ」だったそう。
繊細な線描の可愛らしさが目に残る。とても愛らしい。

ここからは日本の洋画家
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藤島武二 裸婦 まだ少女なのか貧弱なからだつきで、膚の色は土色だから、まるで牛蒡のようにもみえる。
武二のモデルと言えば例の「お葉」こと佐々木カネヨやイタリア美人が思い浮かぶが、こうした明治の普通の女性はモデル慣れしていない人の方が多かった。

梅原龍三郎 中国服の女 1975 150部限定リトグラフの1.クレパスで彩色したのだろうか、いい色合い。
青地がきれい。顔つきにもメリハリがある。

安井曾太郎 黒き髪の女 1924 まだ安井スタイルが完成する以前の黒っぽい背景の中にいる裸婦。
こうして見れば後年の安井らしさもあるわけだが、日本に帰ってきて色々と模索している時期だった、というのもわかる気がする。
彼の描いたこの時期以前の裸婦で好きなものがあるが、それはどこか耽美的だった。
まだ未完成の安井作品というのも魅力がある。当人の苦難をあえて見ずにいう。

鈴木誠 婦人像 水彩 赤い帽子のモガ。グレーに朱線の素敵な服がいい。

東郷青児 モンパルナスの女 これはもう東郷青児スタイルの成立後の絵で、サーモンピンクのネッカチーフを巻いてグレーの服を着た女がどこかを見ているのだが、安定した良さがある。

木下義謙、内田巌、中西利雄らの女性たちがいる。
内田は小磯記念館で見たが、藤田嗣治をレオナルド・フジタにした原因の一人だわな。

今回、初めてある画家を<認識>した。
以前に見ていたのに今回はっきりと覚えた。
網谷義郎
去年の「神戸で奏でる色と形のドラマ」展でも出ていたようだが、思い出せない。
しかし今日は違う。
まず裸婦が出た。
顔ははっきりしないが、体の線はよくわかる。わりと肉付きがいい。
他の裸婦の絵も顔は曖昧である。しかしどこか可愛い。

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白衣の女 1971 赤い背景に白衣の女がいる。顔は曖昧。だが、輪郭線などが可愛い。
立原あゆみ描く女のキュートさを髣髴とさせる。

こちらの女も可愛い。
イメージ (484)
手を組んで立つ青い上衣の女 1973 やはり顔は曖昧だが、それでも目鼻はある。
安彦さんのフラウ・ボウがモデルになったような感じもある。

他の絵でも顔は曖昧だが、それでも愛らしさが目立つ。
網谷は個性を持った女を描かず、あえて少女を描いていたそうだ。
どこか遠くを見るような、何を考えているかもわからない少女たち。
同時代のマンガに出てきそうな雰囲気がある。

このヒトの絵を今後は探したいと思った。1982年に没しているが、今生きていたら、と夢想する。

中山忠彦 紅衣小憩 綺麗なカーテンがある。雨蛙色。そして濃い紅色のドレスを身に着けた優雅な婦人。
レース、パール、といった小道具も上品。

横尾、池田満寿夫らの絵があるのもいい。
それに森村泰昌のマリリン・モンローになった姿もある。1995 ちょっと目元が違いすぎるが。

石井一男「女神」三点が並んでいる。一見ルオー風でもある。
2005 赤黒い顔、眼を閉じている。少女マリアとでもいえそうな。
2009 ゆっくりと眼を開ける。
2011 黒い顔がはっきりと眼を開けてこちらをみつめる。
…なんだか凄いような「三部作」だった。この絵も前掲の展覧会で見たが、今回の方が記憶に残る。
イメージ (483) イメージ (485)

特集展示として「松本宏―エロスの世界」をみる。
チラシの赤いカトレアである。花だと思えば女である絵。
ちょっとドキドキしながら狭い空間に入って行った。

寝そべる女の絵が多いのだが、どうもこちらに官能性が低いのか反応しにくい。
なんだろう、わたしではわからないなあ。 
違う絵を見て反応するのに、これはどうしたことか。
結局わからないままになった。

他にも多くの画家の作品があり、日本洋画の良さを堪能できる。
こうした展覧会はとても貴重だと思うのだ。
6/18まで。
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