美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ウォルター・クレイン展に溺れる その2

ウォルター・クレインは絵本製作だけでなく挿絵本でもよい仕事をしている。

・初期の児童文学の挿絵
『ギャッブ王のお話袋』 ヘラクライタス・グレイ 1869年 木口木版  話術でのし上がる・成り上がる王様のお話。くっきりした線の頃。
『フィオリモンド姫』 メアリー・ド・モーガン 1880年 木口木版  求婚者たちを首飾りの珠にする怖いお姫様。
『城の子どもたち』 モルズワース夫人 1890年 木口木版  ちょっとばかりおどろな雰囲気。
『四方の風農場』 モルズワース夫人 1886年 木口木版  ラファエル前派の影響が大変強い絵。
これは国会図書館デジタルコレクションで見ることが可能。

なお国際子ども図書館の「ヴィクトリア朝の子どもの本」というサイトは素晴らしく充実しており、今回調べものをしていてしばしばそこにたどり着き、大いに助けられた。
まことにありがたいことです。
サイトはこちら

・ 「幼子」3部作と『パンの笛』 エヴァンズとともに
『幼子のオペラ』 歌曲編纂:ルーシー・クレイン 1877年 木口木版、多色刷 現在も復刻されて販売が続いている人気本だそう。
シンプルで可愛らしい。
チェロを弾く黒猫、鳥を噛む猫などもいる。
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『幼子の花束』 歌曲編纂:ルーシー・クレイン 1878年 木口木版、多色刷  蝶が一匹舞う。天使から花束を貰う女がいる。そしてその家のタイルは猫柄。可愛い。

『幼子のイソップ』 1887年(制作1886年) 木口木版、多色刷   坊やがゲジ柄猫を抱っこ。「お話お聞きよ!」のところかな。

『ウォルター・クレインのぬり絵本』 1889年 木口木版、多色刷  イメージ (356)
坊やはゲジ柄猫を抱えているが、その周囲にはたくさんのどうぶつたちが。

・子どもの本のデザイン
富裕層向けの本があった。
そして1880年代以降は画風もかなり変わり、背景に余白を入れるようになった。
そのシンプルさも悪くはない。

『三つのRの物語』 ウォルター・クレイン 1886年 リトグラフ、多色刷  大きなキジネコと一緒にいる少年、大ぼらを吹く。
けっこう楽しい展開。

アメリカに行ったクレインはフロリダの明るさに影響されたそう。

・白と黒の世界 挿絵本の傑作
『ヘラスのこだま-ホメロスによるトロイとアイスキュロスのオレステス物語』英訳・序文・ソネット:ジョージ・C・ウォー作曲:マルカム・ローソン、ウォルター・パラット他 1887年 1887年 リトグラフ、2色刷(赤・黒)  大人向けのオデュッセイア。劇にはレイトン、ワッツらも加わっていたそうな。

シェイクスピアの戯曲の挿絵も。
『テンペスト』(8点組) ウィリアム・シェイクスピア 1893年 ダラスタイプ・プレスNo.5
『ヴェローナの二紳士』(8点組) ウィリアム・シェイクスピア 1894年 1894年 ダラスタイプ・プレスNo.5
『ウィンザーの陽気な女房たち』 ウィリアム・シェイクスピア 1894年 1894年 ダラスタイプ・プレスNo.5
少し異なる印刷。とてもややこしい方法だという。
ふち飾り付き。モノクロの細かい挿絵。

以前にモリサワさんで見た物凄いのがあった。
『妖精女王』全6巻  エドマンド・スペンサー編集:トーマス・J・ワイズ1897年(制作および分冊による刊行:1894-96年)木口木版
とんでもなく綺麗な本。とにかくすごかった。
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『羊飼いの暦』 エドマンド・スペンサー 1898年 木口木版 モノクロでここまでやられるともう…

晩年は濃厚な緻密さはなくなり、背景も余白を愉しむようになった。
これはもうファンとしては好みの問題。
『フローラの饗宴』 ウォルター・クレイン 1889年/1895年(第2版)1889年 リトグラフ、多色刷
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可愛らしい花の妖精たちがずらーり

晩年までクレインはとてもよい仕事を残し続けた。
絵の教育書もあり、また家庭内の手製絵本もある優しい人だった。
そしてモリスらとであったことで社会主義の普及活動にもいそしんだのだった。

『美しい家』口絵「奥方の部屋」:ウォルター・クレイン クラレンス・クック 1881年(第2版)
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これは以前に二度ばかり展覧会で見ている。

最後に彼が愛した本が参考として出ていた。
『伝神開手 北斎漫画』初編〜十四編(14冊)
『楳嶺百鳥画譜』天・地・人(3冊)
『省亭花鳥画譜』(3冊)
なんとなく納得も行く。

最後まで本当に素晴らしい世界だった。

5/28まで。

海北友松展 後期にみたもの

今日で終了の海北友松展の後期展示を昨夜見てきた。
前期の感想は最近あげたばかりで追記にしようかと思ったが、例によって案外長くなるので別項で挙げる。
この凄い展覧会ももう終わりである。この日も多くの観客がいた。
忘れ難い展覧会になるだろう。

通期展示だが、やはり最初に現れる菊慈童には心惹かれ、なにかしら書きたくなる。
赤地に金の瑞雲模様の上衣を着て岩に足を軽く組んで座る少年。眉根を寄せ、黙って物思いに耽る淋しい顔。
「いつまでここに一人でいないといけないのだろう」「なぜあのとき帝の枕をまたいでしまったのだろう」
悔いは無限に続き、この地で少年は永遠に少年のままでいることを強いられる。

上杉景勝の歴代年譜に、聚楽第近くの上杉家に太閤を招いたら、おみやげに友松の「濃彩松鳥図」をいただいたとのこと。このとき友松62歳。友松、天下人にチェックされてたのですね。

彼が学びにいった狩野派の総帥・永徳の襖絵がある。
花鳥図襖 聚光院 前期の琴棋書画図襖の裏表かな。
右下に五位鷺かちょっと黒いような鷺がいる。鴨ップルが仲良く泳ぐ。松に向かって鶴の一声。白椿も可愛く咲いている。

・建仁寺の塔頭に描く
琴棋書画図屏風 いい天候の頃か、松の木の下に出した猫足の卓に片肘ついて居眠る侍童、琴を弾かずにぼーっとする高士もいる。
左では石橋をわたした先に亭があり、特になにもしていない高士らがいる。書画を今からみるのか雑談しているのか。

次は掛け軸の観瀑図だが、これも先の続きというか、高士らこっちにスライドしたのではという状況。松のあるお休み処に高士と少年、右幅は大人しい滝。
なんとなく茶店のような雰囲気がある。
「高野聖」のあの場所のような。

松竹梅図襖 松に叭叭鳥 梅図の裏。薄墨で松と二羽の鳥が描かれている。
鳥たちは揃って→向き。
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・建仁寺大方丈障壁画
竹林七賢図 にんまり親父と立ち話の二人がいる。「でさー」「ふーん」こんな感じ。

・変わりゆく画風
飲中八仙図屏風 これは前期でもお酌する少年にときめいたのだが、今回も変わらず。
可愛いなあ。
冒頭の菊慈童と双璧。

楼閣山水図屏風 楼閣というと塔があったり棟が多かったりとかが多いのだが、ごくシンプルな平屋が雪に覆われているのがいくつか。絵の剥落が降る雪にもみえる。停めた小舟が何艘かあるが、それも白い。
静かな情景。

禅宗祖師図がいくつかあるが、やっぱりケッタイな人々ですわな。
しかもあれだ、南泉なんかこっちが斬ってやりたいわ。
しかしどう見ても猫ではない絵ですな。

野馬図屏風 おおお、肥えすぎやがな。
白馬は袋人物と同じく豊かな外線、黒馬は没骨。ほんまに奔馬なポーズもあり。

この絵と対だったと言われるのがこれ。
牧牛図屏風 毛むくじゃらな黒牛たち。えーと毛長牛?
川から上がろうとするのもいたり、それを見てるのもいる。
角はたいてい跳ね上がる半月形なのだが、一頭だけツインテールがいた。ウルトラの母のあれのようだ。

四季山水図屏風 所々に建物が。左には杉林のシルエットも。ちょっと等伯ぽい。

・大和絵金碧屏風を描く
浜松図屏風 改めて眺めると、観念的な浜やな。
色鍋島の絵柄にもあるがはらはらと降る桜が籠に収まるのとかと同じような不思議さがある。

網干図屏風 細かい網、胡粉をかけたのもある。浜の奥の海では数隻の帆掛け船がみえた。
西洋のフレスコ画にも通じる静謐さがある。
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・妙心寺の金碧屏風
今回改めて寒山拾得図や三酸図を見て、2009年の妙心寺展にこれらが出ていたことを思い出す。前期で見たときは思い出さなかった。
これだけ特徴ある表情なのになあ。

花卉図屏風 牡丹の花びらの縮れ具合、左の白梅、白椿、たんぽぽの愛らしさ。いいなあ。

龍の間はやはりおどろおどろしくて、龍の生臭さを感じられてよかった。

・最晩年期の押絵制作
呂洞賓図 雪村のとは全く違う。白髭の老人姿で巨大な傘を背に刀を踏んで空を飛ぶ。
気概がある。雪村のが壮年期だとすれはこちらはその後なんだが、絶対に丸くならないぞという想いが聞こえてきそう。

芦雁図 二羽の雁が大人しくその場にいるが、宗達の雁とは違い、こっちの雁の方が映画「雁の寺」の襖絵に近そう。

最後に月下渓流図屏風をみて、穏やかで和やかな心持ちになって、会場をでる。

豊かな夜だった。
海北友松展は本日を以て終了。

今治市の丹下健三の建造物

煌びやかな装飾の建物が続いたので、今度はその対極にあるモダニズム、モダンムーヴメントへ。
丹下健三はお父さんが今治市出身で、自身も小学校・旧制中学をここで過ごしたそう。
そして今治市は丹下の設計した市役所・公会堂・市民会館が一堂に会している、丹下ファンには嬉しい場所なのだ。

まずは公会堂をみる。1958年竣工
なんだかよくありそうで、しかしやっぱり個性的な建造物である。
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視点を変えて眺める。
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・・・かっこいいな。

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見学と撮影をさせていただく。
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確かに「モダン」ではある。装飾を排したことである種のカッコよさも生まれる。
とはいえ、劇場空間は無表情ではない。

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舞台の袖にも。
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音楽も演劇も落語も演説もなんでもゆけそうだ。
歌舞伎と能はちょっと似合わないが、狂言と文楽は案外よさそうである。
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丹下の紹介もある。
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こちらは市民会館 1965年竣工
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間違いなく夏は暑く冬は寒い…

ここから見る公会堂
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市役所 1958年竣工
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他に愛媛信用金庫今治支店も丹下作品。

丹下けんぞーぶつ。
うむ、叱られるぞ。

暑い日だったので、今治特産の今治タオルを使いながら歩くのもよさそうだった。

愛媛県庁 その3

前日に引き続きます。
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見上げると七宝繋。

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よく見ると手裏剣つなぎ??

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周辺の装飾を追う。

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フランス式の壮麗さが満ち満ちる正庁
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鷲がところどころにいる。
獅子と鷲とだと鷲の方が新しいのだったかな…

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素晴らしい…!

愛媛県庁 その4

いよいよ大詰め。
再び階段。
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ドーム遠望
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配線も素敵だ。
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戻ってきました。
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電話室、可愛いな。
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ではまたサラバ。
よい建物、これからもずっとあってほしい。
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